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出世したくない若手に「最近の若者は…」と言いたくなったら読んでほしい話

こんにちは。セルバ採用担当のゆうきです。

「最近の若者は出世に興味がない」「定時で帰って趣味に没頭」
そんな声を耳にすることは珍しくなく、SNSや大手メディアでもよく言われている言説です。
私自身は30代の採用担当であり管理職でもありますが、若手と日々接する中で、この説には違和感を覚えています。

もちろん「できるだけ残業はしたくない」とか、「ワークライフバランスを崩したくない」という意識が強い人はいますが、別に若手に限った話ではありません。
それを「若手は仕事に対してやる気がない」と決めつけるのは、少し短絡的かなと感じています。

“やる気がない”と見られがちな若手のキャリア観は、本当にそうなのか?
今回は、それぞれの世代の「出世欲」についての話と、採用現場から見た若手のキャリア観についてお話します。

目次

若手の方が出世欲が高いというデータ

2025年にセルバが実施したアンケート調査によると、「出世したい」と答えた割合は20代が最も高く40%で、30代30%、40代24%と年代が上がるごとに減少傾向にあることがわかりました。

※上記はセルバが運営するメディア『キャリアクラフト』で公開した調査レポートです。

つまり、「若者が出世したがらない」のではなく、全世代で出世意欲が下がっている中で、むしろ若手のほうがまだ意欲的なのです。

また、「出世したくない」と答えた人でも、その理由は

  • 管理職の負担が大きすぎる
  • 出世しても実質的に待遇が下がる
  • 家庭との両立が難しい

など、構造的な課題が多数挙げられており、「給与はそこそこでいいから出世したくない」「趣味に充てられる時間が減る」を挙げる人は年代問わず少数派でした。

有効回答数は300とそこまで大きくはないものの、採用現場での実感と通じる部分が多く、傾向としては妥当なものだと感じています。

「最近の若手は出世に興味がない」という誤解

採用現場から見ても、最近の若手が昔と比べて出世欲を失ったわけではありません。
むしろ、「どうすれば自分の市場価値を高められるか」「どんなスキルをつければ次につながるか」を考えている若手は多いです。

自分のキャリアにとって価値があるかを冷静に判断している

昔は「“頑張ればいつか報われる”と信じて、思考停止で目の前の仕事に取り組む」ことが美徳とされていました。(私が若い頃も、まだその風潮は根強く残っていました)
しかし、SNSや口コミであらゆる職業の“裏側”が見えるようになった今、思考停止で潰れるまで頑張る時代は終わりました
そのため、今の若手は「その努力が本当に意味のあるものか」を冷静に判断しようとしているのです。

思考停止で目の前のことに取り組むのではなく、頑張るべき場所を見極める。
その取捨選択こそ、彼らなりの責任ある選択だと感じています。

SNS時代はキャリアも自己表現の一部

SNSで自己表現をすることが当たり前の今の若者にとって、キャリアは単なる収入を得る手段ではなく、自己表現の手段でもあります。
コンサル志望やホワイトカラー志向が強いのも、その表れと言っても過言ではないでしょう。

ただ、SNSやネットを通じて仕事の裏側まで見えるようになった今、「かっこよく見える仕事」=「待遇が良くやりがいのある仕事」とは限らないこともバレています。
かつて憧れと言われていた美容業界やアパレル業界なども、待遇や労働環境が可視化される中で、「割に合わない」と冷静に判断されるようになり、人手不足が深刻化しました。

とはいえ、「キャリアが自己表現の手段である」のは、実は今に始まった話ではありません。SNSのない時代にも、“自分をどう見せるか”を意識してキャリア選択をしていた人は確かにいました。
特に、終身雇用と大企業信仰が強かった時代だと、“会社のブランド=自分の価値”として捉えられることも多く、有名企業の名刺を持つことで信用されたり、一目置かれたりする場面は、今以上にあったのではないかと思います。
人生のすべてを仕事に捧げてきた中高年層の方を見ていると、自分のキャリアや存在意義を企業と一体化させていた人も少なくない印象があります。

今の若手は“会社の看板に乗る”のではなく、“その看板をどう使うか”を自分で選ぼうとしている。
そこに、世代間での見え方のズレが生まれているのかもしれません。

趣味や遊びを優先する若者が“刹那的に生きている”とは限らない

上の世代から見れば、今の若手は「仕事より趣味を優先して刹那的に生きている」と感じられるかもしれませんが、そうとも限りません。
若い人の3年は、中高年の10年にも匹敵するほどの変化と成長の密度があり、若いうちの「遊びに熱中する」「趣味に没頭する」「友達との時間を大切にする」といった経験こそが、人生の土台になる部分もあるからです。

学生時代に勉強ばかりしてきた人よりも、友達と遊び、対話し、自分の好きなことに夢中になった人のほうが、就活でのコミュニケーションや自己分析がスムーズだったという例も多く見てきました。

また今は、SNSやメディアで「仕事に全振りして生きてきた人が、仕事に打ち込めなくなったときにどうなったか」という実例も可視化されています。
だからこそ、仕事だけに全振りしない若者が増えるのは、必ずしも無気力や逃げが理由ではないと感じています。

出世欲がないことは悪なのか

「出世欲がない」ことを悪かのように言う風潮もありますが、それ自体は何も悪くありません。

ワークライフバランス重視はミドル層が多い

実際に採用活動をしていて感じるのは、出世よりもワークライフバランスを重視するのは、若手よりもむしろミドル層のほうが多いということです。
その理由は価値観というより、健康上の問題や育児・介護などの生活事情により「そういう働き方をせざるをえない」ことがほとんどですが、ミドル層に差しかかると、キャリアの天井が見えるというのも一因としてあるでしょう。

対して、今の若手は「何を優先してキャリアを設計するか」を比較的自由に選べる立場にあり、キャリアの伸びしろもあります。
社会的にも制度的にも「仕事に全振りするかワークライフバランス重視か、選びながら働く」ことが許容されるようになり、スタンダードになりつつあある。
これが「自分の意思で楽な方を選んでいる」ように見え、「最近の若手は楽をしたがる」という見方につながっている部分はあるかもしれません。

ミドル層の中には「自分たちは選べなかった」「そういう働き方がしたくてもできなかった」という思いを抱えている人も多いです。
「そうしないと生き残れなかった」時代を通ってきたからこそ、今の若手の自由さを“ズルい”と感じてしまうのも、無理はないように思います。

「出世欲があるか、ワークライフバランス重視か」は採用に影響しない

「出世欲があるか、ないか」
「ワークライフバランスを大切にするか、しないか」
採用現場からすると、こうした軸が採用に影響することはほとんどありません。

確かに、自分の非効率や怠慢で仕事が遅れているのに「定時なので」と業務を放棄するような社員は当然困ります。
一方で、「長時間労働が美徳」「会社の言うことに疑問を持つな」などの昭和的価値観を他の社員に押しつけるようなスタンスもまた、組織にとってはリスクです。

セルバはここ数年、平均残業時間が月10時間を下回っており、ワークライフバランスは良い方かと思いますが、出世を目指してハードに働きたい人も、ワークライフバランスを大切にしたい人も、どちらも歓迎しています。

単に「残業する/しないのが良い」というわけではなく、決められた時間内で生産性を高め、責任ある仕事の進め方ができるかどうかを重視しています。
その前提さえ共有できていれば、働き方の志向は柔軟でいいと考えています。

40代・50代で「今の職場で出世できない」とわかったら

今の職場で「自分はもうこれ以上出世できない」と感じたとき。
私は30代でまだその立場にはいませんが、採用担当という立場で40代・50代の方とお話しする中で、「出世は頭打ち。でも、このままでいいのか」と悩んでいる方が想像以上に多いことを実感しています。

セルバは20代・30代の若手が多いですが、その反面ベテラン層の不足が課題でもあり、40代・50代の方を歓迎しています。
2025年は新たに50代のエンジニアを採用しました。

就職氷河期を経験した世代の方とお話ししていると、「自分は社会から歓迎されていない気がする」といった言葉を耳にすることがあります。
長く報われにくい環境に身を置いてきた方ほど、「今さら…」「もう手遅れかも」という思いが先に立ってしまうのは、無理もないことだと思います。

でも実際には、そうした世代の方々の経験や視点を必要としている現場はあります。
今後のキャリアの選択肢として、セルバも加えていただけたら嬉しいです