「ぐるなびはもう使われていない」「食べログに完全に負けた」
そんな声をネットで見かける機会が増えました。
しかしこの問いは、単なる一企業の浮き沈みではありません。
“ポータルサイトは、どこで成長が止まり、どこで明暗が分かれるのか”
その構造を理解するうえで、ぐるなびは極めて示唆に富んだ存在です。
実際、ぐるなびは日本に「ネットで店を探す文化」を定着させ、飲食業界のBtoBポータルとして圧倒的な地位を築き、一時は“業界インフラ”とまで呼ばれました。
それにもかかわらず、ユーザー主導型ポータルの台頭と環境変化に適応しきれなかった部分があります。
本記事では、
- ぐるなびと食べログの分岐点
- ポータルサイトに内在するビジネスモデルのリスク
- そして「再生の道筋」がどこにあるのか
を、ポータルサイト構築・運営の視点から読み解いていきます。
ネットで「店を探す」文化を作った先駆者

ぐるなびが創業したのは1996年。
まだスマホどころか、ネットで店を探すという発想すら一般的ではなかった時代です。
飲み会の幹事がPCで検索し、FAXで予約確認を送っていた…そんな原始的とも言える時代に「飲食店情報を一箇所に集約する」というポータル発想を持ち込んだ功績は非常に大きいものでした。
初期ぐるなびは“完成されたBtoBポータル”だった
2000年代前半、ぐるなびは
- 店舗情報
- メニュー
- 宴会対応可否
- 予約導線
を整理し、「幹事の業務を代替する存在」になりました。
これは偶然ではありません。「誰の課題を解決するポータルか」が明確だったからです。
- ユーザー:幹事(法人・団体)
- クライアント:飲食店
- 価値:送客と予約の効率化
BtoBポータルとしては、極めて完成度の高いモデルでした。
食べログとの違い:信頼を“誰に”置いたか

転機は2005年、食べログの登場です。
食べログが持ち込んだのは、「店が語る情報」ではなく「客が語る評価」。
これはUIの違いではなく、ポータルの“信頼構造”そのものの転換でした。
ポータルサイトは「誰を主役にするか」で運命が決まる
| サービス | 信頼の起点 | 主役 |
|---|---|---|
| ぐるなび | 店舗情報 | 飲食店 |
| 食べログ | 口コミ | ユーザー |
- 正確
- 公式
- だが「広告色が見える」
- 主観的
- ノイズも多い
- だが「リアルに感じる」
スマホ普及とSNS時代において、「正しさ」より「共感」が選ばれたのが転機と言えるでしょう。
これは、あらゆるポータルサイトが直面する分岐点です。
コロナで顕在化した構造的リスク

2020年、コロナ禍によって飲食業界は壊滅的な打撃を受けました。
ぐるなびの収益源は「店舗課金」。つまり、顧客=飲食店そのものです。
BtoBポータル最大の弱点は「顧客が同時に沈む」こと
- 景気悪化
- 業界全体の売上減
- 店舗数の減少
この3点が同時に起きると、BtoBポータルは一気に収益基盤を失います。
「ぐるなびが潰れる」というサジェストが増えた背景は、単なる噂もありますが、ビジネスモデル上の必然でもありました。
中間期ベースの黒字着地や通期予想の上方修正など、業績が改善基調にあることは確認できます。
しかし、コロナ以前の収益水準やビジネスモデルの構造的な強さを取り戻したとは言い切れません。
評判が悪い? “成功体験”が裏目に出た構造

ぐるなびはサービス品質が悪いのではありませんが、「評判が悪い」とサジェストに出ることもある理由としては、広告ポータル特有の歪みにあります。
ポータルにおける「課金=露出」の限界
- お金を払えば上位表示
- 安いプランは効果が薄い
- 更新されない情報が残る
これは、広告モデルが一定規模を超えたポータルで必ず起こる現象です。
昨今のユーザーは、「広告メディア」を警戒する傾向にあります。
ぐるなびは今でも「便利な検索サイト」ですが、成功したポータルほど、この罠から抜けるのが難しい傾向があります。
「ぐるなびリストラ」は終わりの合図ではない
一部で話題になったリストラ報道も、実態は「縮小」ではなく「再設計」です。
ポータル運営は「人力営業」から「データ駆動」へ
- 営業が足で稼ぐ時代
- 店舗を訪問して契約を取る時代
から
- データ連携
- 利用データ分析
- 自動化された価値提供
へ移行しなければ、ポータルはスケールしません。
これは、ぐるなびだけでなくすべてのポータルサイト運営者に共通する課題です。
楽天との連携で見えた突破口
ぐるなびの楽天との連携は、単なる資本提携ではありません。
「単体ポータル」から「エコシステム内ポータル」へ
- 楽天ID
- ポイント
- 購買データ
これらと接続することで、ぐるなびは“検索されるのを待つポータル”から“生活動線に組み込まれるポータル”へ進化しようとしています。
これは今後のポータル構築において、極めて重要なヒントです。
まとめ
ぐるなびは「終わった」のではありません。古い成功モデルが限界を迎えただけです。
- 誰を主役にするのか
- 何を信頼の源泉にするのか
- 課金構造とユーザー体験は一致しているか
成功した巨大ポータルでも、時代に合わせてこれらを再設計する必要があります。
逆に言えば、この構造を理解して設計すれば、次世代のポータルはまだまだ勝てる余地があるということです。
ぐるなびの再生は、ポータルサイトの「次の形」を示す試金石になるでしょう。
