デザインと聞くと「おしゃれさ」「見映えの良さ」を向上するものであり、ポータルサイトのように情報を探すことを目的としたサイトには一見無関係に思えるかもしれません。
しかし、Webサイトにおけるデザインは「使いやすさ」「視認性」「インパクト」「記憶に残る体験」のすべてに大きく影響するものであり、ポータルサイトにおいても重要性は決して低くありません。
本記事では、デザインの目的や効果にフォーカスしつつ、具体的な事例とともに解説します。

デザイン事例|ジャンル別に見る優れたデザインのポータルサイト

ポータルサイトと一口に言っても、その役割やターゲットはさまざまです。求人や地域情報、社内ポータル、さらには教育・医療・BtoBと、目的に応じて求められるデザインの方向性は大きく異なります。
しかし、ジャンルが違っても共通しているのは「ユーザーが迷わず目的の情報にたどり着けるかどうか」です。ここでは、実際のポータルサイトをジャンル別に取り上げ、使いやすさ・視認性・記憶に残る工夫といった観点から優れたデザイン事例を紹介します。
求人・キャリア系ポータル
求人ポータルは、数あるポータルサイトの中でも特に情報量と機能性のバランスが求められる分野です。
ユーザーが知りたいのは「どんな仕事があるか」「どんな条件で働けるか」であり、デザインの目的はその情報をできるだけ早く・わかりやすく・比較しやすく伝えることにあります。
また、職種や勤務地、勤務形態など多様な検索条件を扱うため、整理されたレイアウトと明確な導線設計が不可欠です。求職者が安心して応募できるよう、信頼感を与えるデザインも重要なポイントです。
ここでは、女性向け・専門職向け・IT業界向けなど、異なるターゲットに合わせた求人ポータルのデザイン事例を紹介します。

ワクプレfit

ワクプレfitは在宅勤務や副業可など、ライフスタイルに沿った条件検索がスムーズ。
柔らかい配色と写真で親しみやすさを演出しつつ、シンプルな検索導線でユーザーを迷わせません。
My Shift NURSE

My Shift NURSEは看護師専門の求人ポータル。
条件絞り込みの精度が高く、医療従事者が安心して利用できるよう清潔感のあるデザインを採用しています。
Green(IT・Web業界求人)

Greenは求人票と企業紹介が同一ページで整理され、応募導線が明快。
無駄のないUIが「効率的に探せる」印象を与えています。
地域創生・観光ポータル
地域創生・観光系のポータルサイトは、単に情報を掲載するだけでなく、地域そのもののブランドをデザインで伝えるメディアとしての役割を担っています。
地元の風景や人々の暮らし、文化的な魅力をどのように視覚的に表現するかによって、閲覧者の印象は大きく変わります。
観光客や移住希望者など初めて訪れる人にとっては、「雰囲気の良さ」「安心感」「親しみやすさ」が最初の判断材料になります。そのため、写真や色使い、余白の取り方、フォントのトーンといった“感情に訴えるデザイン”が重要になります。
同時に、イベント情報や移住支援、観光施設の紹介などを分かりやすく整理し、誰もが目的の情報にたどり着ける構成が求められます。
ここでは、地方自治体・地域団体・観光協会などが運営する、優れたデザインのポータルサイト事例を紹介します。

MINATO(気仙沼市移住支援)

MINATO(気仙沼市移住支援)は移住者の体験談をテーマ別に分け、閲覧者が自分の関心に近い情報を素早く見つけられる構造になっています。
つつうらうら(北海道浦幌町)

つつうらうら(北海道浦幌町)は地元住民の声や写真をふんだんに掲載し、温かみと安心感を与えるデザイン。
文字よりも「人」を前に出しているのが特徴です。
いいもの山形

いいもの山形は特産品や生産者をストーリーで紹介。
視覚的にも印象に残る写真が多用されており、県全体のブランディングにつながっています。
Tokyo Day Out

Tokyo Day Outは都内観光ポータル。
目的別に「食べる・買う・体験する」が整理され、外国人観光客でも直感的に操作できるUIが特徴です。
社内・教育系ポータルサイト
社内ポータルサイトや、大学や教育施設などの学生向けポータルサイトは、従業員や学生が日々の業務に必要な情報へアクセスするハブとして機能します。
人事・経理・総務などの社内手続きや、履修登録などの学内手続き、ニュースやナレッジ共有まで、あらゆる情報がここに集約されるため、デザインの良し悪しが効率そのものに直結します。
見た目の華やかさよりも、誰が見ても迷わず操作できるシンプルで整理されたUIが重要です。トップページのレイアウトやアイコン設計、検索機能の精度といった細部の使いやすさが、社員の生産性を大きく左右します。
また、デザインの工夫によって「見やすい」「探しやすい」だけでなく、社内コミュニケーションやモチベーションの向上にもつながります。
ここでは、実際に成果を上げている事例を紹介します。


kintone(サイボウズ)

kintone(サイボウズ)は業務データの検索性を高めた社内プラットフォーム。
余計な装飾を排し、情報整理とアクセススピードを重視。
スタディサプリ

スタディサプリは 学習動画・テキスト・進捗管理を一元化。
学習者が迷わず必要な教材にアクセスできるよう、色やアイコンが統一されています。
MyWaseda

早稲田大学の学生用ポータルサイトMyWasedaは、授業情報・履修登録・図書館予約などをまとめ、学生生活に必要な機能を一画面から操作可能。
学生向けポータルの成功例といえます。
医療・福祉ポータル
医療・福祉分野のポータルサイトでは、他のジャンル以上に信頼性と正確性を感じさせるデザインが求められます。
ユーザーは健康や生活に関わる重要な情報を得るためにアクセスするため、誤解を招く表現や過度な装飾は避け、安心して閲覧できる構成とトーンが不可欠です。
また、専門用語が多くなる傾向があるため、一般ユーザーでも理解しやすいように情報階層の整理・視認性の高い文字組み・適切な配色を意識したデザインが効果的です。
検索や絞り込み機能の使いやすさも重要です。病院・介護施設・医療記事など、目的が異なる情報を1つのサイト内で扱うため、カテゴリ設計とナビゲーションの分かりやすさが利用満足度を大きく左右します。
ここでは、医療機関・公的機関・福祉サービスが運営する、安心感と信頼性を両立したデザイン事例を紹介します。

お医者さんガイド

お医者さんガイドは病院・診療所を地域ごとに検索できるシンプルなUI。
診療科目別の整理により、初めて利用する人でも迷わない設計です。
国立がん研究センターがん情報サービス

国立がん研究センターがん情報サービスは難しい医療情報を一般ユーザー向けにかみ砕き、病気別に体系的に整理。
信頼性とわかりやすさを両立したデザインです。
BtoB向けポータル
BtoB向けポータルサイトは、一般消費者向けのサイトとは異なり、専門的な情報を正確かつ効率的に伝えることが第一の目的です。
閲覧者の多くは、企業の担当者や意思決定者であり、製品やサービスを比較・検討するために訪れます。そのため、装飾的なデザインよりも、整理された情報構造と信頼感のあるビジュアル設計が重要になります。
特に、商品・サービス・導入事例などの情報をどう見せるかが鍵です。
表やグラフ、レビューなどを活用して「比較しやすい」「理解しやすい」「判断しやすい」構成を整えることで、ユーザーの意思決定を後押しできます。
白やグレーを基調とした落ち着いた配色、読みやすいタイポグラフィ、要点を絞ったビジュアル表現などは、信頼性と知的な印象を与えるBtoBデザインの基本要素です。
法人向けSaaS比較サイトや製造業向けポータルなど、ビジネスの現場で実際に成果を上げている事例を紹介します。

ITreview

ITreviewは法人向けソフトウェアを口コミとあわせて検索できるポータル。
比較表やレビュー要素が整理され、意思決定を後押しする構造になっています。
MONOist(製造業ポータル)

MONOistは業界ニュースや技術解説を集約。落ち着いた配色で専門性を表現し、ビジネスユーザーに「信頼性」を伝えるデザインです。
今回ご紹介した以外にも、多数のポータルサイト事例が公開されています。
SANKOU! ポータルサイトデザイン事例
ポータルサイトにおけるデザインの重要性

ポータルサイトは情報を集約する「玄関口」としての役割を持っています。
どれだけ情報量が豊富でも、ユーザーが迷ったり探しにくさを感じたりすれば、その価値は半減してしまいます。そこで重要になるのがデザインです。
デザインは単なる見た目の装飾ではなく、情報を整理し、必要なものへスムーズに導くための仕組みそのものです。
視認性の高いレイアウトや直感的な操作性は、ユーザー体験を大きく左右し、サイト全体の信頼性や再訪率にも直結します。
情報を見つけやすくすることが最優先
ポータルサイトは膨大な情報を一元化する場であるため、「どこに何があるか」が瞬時にわかることが欠かせません。カテゴリ分けや検索機能が不十分だと、ユーザーは欲しい情報にたどり着けず離脱してしまいます。
例えば求人ポータルで「勤務地別」「職種別」「特徴(在宅・副業可など)」の切り口が整理されていないと、ユーザーはストレスを感じます。
逆に、導線がシンプルで整理されていれば「必要な情報に迷わず到達できる=良いデザイン」と評価されます。
ユーザーの目的達成を最短でサポート
ユーザーは「サイトを楽しむため」に来ているわけではなく、何かを探す・比較する・申し込むといった具体的な目的を持って訪問します。
デザインは、その目的を邪魔することなくサポートする必要があります。
例えば観光ポータルでは「施設予約」「地図表示」「モデルコース検索」がわかりやすく配置されていれば、観光客は余計な操作をせずに行動に移せます。
逆に、ビジュアルに凝りすぎて予約ボタンが目立たないデザインでは、コンバージョンが下がってしまいます。
デザインは単なる見た目ではなく、ユーザー行動の最短距離を設計する仕組みなのです。
更新性と回遊性を意識する
ポータルサイトは「一度見て終わり」ではなく、何度も使われることが理想です。そのためには、定期的に情報が更新され、ユーザーが自然にサイト内を回遊できる仕組みが必要です。
例えば社内ポータルであれば、「最新ニュース」「部署別のお知らせ」をトップに配置することで、社員が毎日アクセスしたくなる導線が生まれます。
地域ポータルなら「今月の特集」「季節イベント情報」を打ち出すことで再訪率が高まります。
関連記事やおすすめ記事を適切に表示すれば、ユーザーは別のページへ自然に誘導され、滞在時間や信頼性も向上します。
「デザインが良い」=「おしゃれ」ではない

デザインを語るとき、多くの人が「見た目がきれい」「おしゃれで洗練されている」ことをイメージします。
しかし、実際に重要なのはそこではありません。
本当に良いデザインとは、ユーザーが迷わず目的を達成できることにあります。
おしゃれさは「副次的な要素」に過ぎない
洗練されたビジュアルや華やかな装飾は、第一印象を良くする効果があります。
しかし「見た目がきれい」なだけで、情報が探しにくければユーザーは離脱してしまいます。
たとえば、文字が小さすぎる、色使いが派手すぎて可読性が下がるといった「おしゃれ重視の失敗例」も少なくありません。
真に良いデザインの条件
- 情報が直感的に探せる導線設計
- アイコンやボタンがわかりやすく、誰でも操作できる
- 余白の使い方、文字サイズ、配色バランスで「どこを見ればいいか」が自然に伝わる
- 強調すべき箇所が一目でわかる
- 求人ポータルなら応募、観光ポータルなら施設予約など、ユーザーがしたい行動に最短で辿り着ける設計
- 目的がスムーズに達成できることで、結果的に「良いサイト」と評価される
- 過剰なアニメーションや凝りすぎたデザインは、読み込み速度を遅くし、離脱率を高めるリスクがある
- ポータルサイトのように情報量が多い場では「シンプルで軽快に動作すること」が優先される
成功事例に見る「おしゃれに頼らないデザイン」
- 社内ポータルサイト:社風を表すおしゃれさよりも「業務効率」が重視され、無駄を省いた設計が成功の鍵
- 地域ポータルサイト:凝ったグラフィックよりも「写真やストーリー性」で人に伝える方が効果的
- 求人ポータル:余計な装飾を減らして検索・応募導線を目立たせた方が、利用者にストレスを与えない
「デザインが良い」という評価は、おしゃれさではなく「使いやすさ」「視認性」「目的達成のしやすさ」に基づいて決まります。
むしろシンプルで直感的な方が、ユーザーにとって快適で記憶に残る体験を生み出します。
まとめ
ポータルサイトのデザインは、「見た目のおしゃれさ」だけで評価されるものではありません。
むしろ大切なのは、ユーザーが目的の情報に素早くたどり着けるかどうか、使いやすく整理されているかどうかです。
ジャンルごとに目的や利用者は異なりますが、どの事例を見ても共通しているのは「情報の探しやすさ」と「迷わない導線設計」が優れたデザインの条件であるということです。
過剰な装飾や凝りすぎたデザインは、かえってユーザーの混乱や読み込み速度の低下を招くことがあります。シンプルで直感的なUIこそが、結果的に長く利用されるサイトをつくり、記憶に残る体験へとつながります。
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