『リュウジのバズレシピ』のような人気アプリでも赤字になるのはなぜ?レシピポータルを黒字化するには

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2023年ごろ、料理研究家リュウジさんのレシピアプリが「登録ユーザーが増えたのに赤字」「サーバー代(AWSの請求)が月100万円規模」とX上で話題になり、IT界隈も巻き込んで「高すぎる/妥当では?」「設計が悪いのでは?」「委託先が…?」など、いろいろな声が飛び交いました。

この手の話題が広がると、どうしても“人気=儲かっているはず”という前提で語られがちです。
でも、開発会社・運用側の目線で見ると、人気アプリが赤字になるのは、わりと「あるある」 だったりします。

本記事では、特定のアプリの良し悪しを断定するのではなく、「なぜ人気レシピポータルでも赤字になり得るのか」 を、技術・運用・マネタイズの両面から分解していきます。
あわせて、レシピポータルを黒字化するための設計(価値設計+コスト設計)を、できるだけ実務的にまとめます。

目次

レシピアプリは“軽そうに見えて重い”

レシピコンテンツは画像とテキスト中心だし、動画はYouTube埋め込みならサーバー代は大してかからないのでは?

と思われがちです。
実際、外から見える画面だけなら「静的コンテンツ」に見えることも多いです。

ただ、レシピポータルは“体験”を成立させるための裏側が意外と多いです。

  • 画像(完成写真/工程写真)の最適化・配信
  • 検索(材料、タグ、曖昧検索、サジェスト)
  • ランキング(人気、急上昇、期間補正、不正対策)
  • ログ、分析、A/Bテスト、通知、障害監視
  • Bot・スクレイピング対策、WAF、レート制限
  • アプリ審査対応、問い合わせ対応、炎上時の負荷対策

このあたりは、ユーザーが増えて“回る”ほど、雪だるま式にコストも手間も増えます

なぜ「人気ポータル・人気アプリ」でも赤字になるのか

人気=儲かる、と思われがちですが、レシピポータルは“人が増えるほど支出も増える”構造を抱えています。
アクセス増でコストが先に膨らむ一方、広告単価や課金率は伸びにくく、収益化が追いつかないことが起こります。

人気=アクセス増=コスト増

クラウドの多くは従量課金です。ざっくり言うと、人が来れば来るほど課金されやすい構造です。

典型が「配信」と「データ転送」です。
CDN(CloudFront等)は、配信したデータ転送量とリクエスト数に応じて料金が増えるタイプのサービス設計です。
S3のようなオブジェクトストレージも、保存量だけでなくリクエスト(GET/LIST等)でも課金されることが明記されています。

つまり、ユーザーが増えると

  • レシピ詳細ページを開く回数が増える
  • 完成写真・工程写真の配信が増える
  • 検索が増える
  • ランキング集計やキャッシュ更新が増える
  • Botも増える(残念ながら…)

結果、「アクセスが伸びた=コストが伸びた」 が起きます。

収益化が追いつかない典型

一方で、収益はアクセスに比例して伸びるとは限りません

  • 広告は季節要因や広告主の出稿状況で単価が上下する
  • レシピ領域は無料代替が強い
  • 「毎日使う人」は一定いるが、ライト層は離脱も早い
  • サブスクは“習慣化”と“摩擦の削減”が揃わないと伸びにくい

さらにアプリ課金の場合、プラットフォーム手数料の影響も無視できません。
Appleは条件により手数料が15%になるプログラムを提示しています(条件次第で標準手数料に戻ることもあります)。
Google Playも、状況により手数料体系が変わり得ること、そして多くの開発者が15%以下の枠に該当する旨を説明しています。

要するに、コストはアクセスに沿って増えやすいが、売上はアクセスに沿って増えにくい
このギャップが“人気なのに赤字”を生みます。

無料ユーザーが増えただけでは、黒字にならない

レシピポータルに限らず、無料ユーザーは“未来の売上”の候補ではあるものの、無料ユーザーが増えた事実そのものは、PL上の黒字を保証しません
むしろ、無料ユーザーの増加は「将来の期待」でもあり「当月の負担増」でもあります。

そのため、黒字化の鍵は結局ここに戻ります。

“話題化した時に落ちない・回る・収益化できる設計”
つまり、技術設計と価値設計を最初からセットで作ること。

レシピポータル特有の地雷

ここからは、レシピポータル/レシピアプリで“跳ねがち”なコストを、開発会社目線で具体化します。

画像・動画:配信・変換・キャッシュ・データ転送

レシピ体験は写真が命です。
しかし写真は、「保存」「変換」「配信」「キャッシュ」「転送」の全部でコストが出ます。

  • スマホ向けに画像を複数サイズで用意(サムネ/一覧/詳細)
  • WebP/AVIFなどの変換(CPU・ジョブコスト)
  • キャッシュ無効化(更新が多いと地味に効く)
  • CDN経由のデータ転送量が増える

CDNの料金がデータ転送とリクエストに基づくこと自体が、まさに「人気=課金増」を引き起こす構造です。
そして画像を置くS3なども、リクエスト課金があります。

画像は“閲覧されるほど儲かる”というより、“閲覧されるほど課金される”側面が強いので、収益化が弱いフェーズでは先に赤字が来ます

検索:材料/タグ/曖昧検索・サジェスト・インデックス

ポータルサイトにおいて、検索はユーザー体験の中心ですが、細かく精度の高い検索ができるようにしようとすると、いきなり要求が増えます

  • 「鶏むね」「胸肉」「とりむね」などの揺れ
  • 誤字(“ブロッコリー”問題)
  • 材料タグの多対多
  • サジェスト(入力中に出す)
  • 人気順や新着順でのソート
  • フィルタ(調理時間、カロリー、アレルゲン)

この辺をDBだけで頑張ると、DBが苦しくなります。
かといって検索基盤(例:OpenSearch等)を使うと、今度は“常時稼働のクラスター費用+ストレージ+バックアップ+運用”が乗ってきます。
OpenSearchが従量で使える一方、検索・分析用途のマネージドサービスであること、利用に応じて費用が発生することはAWS側も説明しています。

検索は“便利”の代わりに、地味に固定費化しやすいのが痛いポイントです。

ランキング:集計頻度、急上昇、期間補正、Bot対策

ランキングは一見ただの「並べ替え」ですが、実態は集計システムです。

  • 日次集計でいいのか、分単位で更新するのか
  • 直近バズを拾う「急上昇」を入れるのか
  • 新規レシピにチャンスを与える“期間補正”を入れるのか
  • 不正(Bot、クリックファーム、組織票)をどう防ぐのか

ランキングの“納得感”が崩れると、サービス自体の信頼が落ちるので、守りが必要です。
そして守ろうとすると、Bot対策・監視・集計基盤でコストが出ます。

たとえばWAFは「Web ACL」「ルール」「処理したリクエスト数」などの単位で課金される形が明記されています。
つまり、話題化してアクセスが増える局面は、同時に攻撃・Bot・スクレイピングが増える局面でもあり、セキュリティコストも連動しがちです。

ログ/監視/保守:障害対応、問い合わせ、アプリ審査対応

表に出にくい部分ですが、運用の現場ではここが効きます

  • ログが増える(アクセス増=ログ増)
  • 監視アラートが増える(本当の障害も、誤検知も)
  • 問い合わせが増える(UI変更、課金、アカウント、返金)
  • OSアップデート/ストア審査の対応が継続的に発生する

このあたりはサーバー代ではなく人件費です。
今回話題になった件では、“AWS明細ベースで100万円かかっていた”趣旨の言及が報じられていますが、一般論としては“インフラ費+運用費” で月次が膨らむのは珍しくありません。

「開発会社がぼったくっている」「バックエンド設計が悪い」への開発会社目線の答え

結論から言うと、どちらも“可能性はゼロではないが、断定はできない”です。

設計が荒いと、クラウドは簡単に高くなります(特にデータ転送、ログ、検索)
逆に、設計が良くても、ピーク負荷・成長・セキュリティ要求によって高くなることもあるため、「どこにいくらかかっているか」は請求明細を見ないと判断できません

そして、ここが誤解されがちですが、クラウドは、“安く作る”ことはできても、“安く回し続ける”には継続的な設計判断と運用が必要です。

「初期に安く作って、後で伸びたら考えよう」は、かなりの確率で火を噴きます。
なぜなら伸びた瞬間、落とせない/止められない/急に直せないからです。

「人気なのに赤字」は“マーケ施策説”という見方もある

SNSでは時々、次のような推測も出ます。

赤字告白→応援課金(サブスク加入)」の流れを狙ったのでは?

有料プランの布石っぽい。

ただし、ここは強く言っておきたいのですが、このシナリオは再現性が高い戦略ではありません。成立条件がかなり厳しいからです。

  • 強いファン基盤がある
  • 発信者に信頼があり、“応援したい”が自然に生まれる
  • 炎上耐性がある(叩かれても折れない)
  • 課金導線が整っている(落ちない・迷わせない)

これらが揃ってはじめて、「話題化→応援課金」が“戦略”になります。
一般的な企業が安易に行っても、「赤字アピールが痛い」「運営が不安」という不信だけが残るリスクもあります。

なので本質は、マーケの巧拙よりもこちらです。
話題化した時に “落ちない・回る・収益化できる” 設計になっているか

有料会員が増える“価値設計”

レシピのサブスクを成功させるコツは、ざっくり言うと 「無料で習慣化」→「有料で摩擦を消す」 です。

無料が担う役割:習慣化の入口

  • 探す(検索・発見)
  • 作る(手順が見やすい)
  • 迷わない(材料が揃う)

有料が担う役割:摩擦を減らす・成果を増やす

  • 広告非表示(集中できる)
  • 保存上限の拡張(“自分のレシピ帳”になる)
  • ランキングの深掘り(人気の理由がわかる)
  • 新規コンテンツの先行公開(ファン心理に刺さる)
  • 献立提案・買い物リスト自動生成(時短の成果が出る)
  • 栄養情報・アレルゲンフィルタ(家族用途で強い)
  • オフライン閲覧(キッチンで安定する)

ポイントは、有料=コンテンツ追加だけにしないことです。
“便利さ”や“失敗しにくさ”のような、日々の摩擦が消える機能のほうが、継続課金に効きます

レシピポータルを黒字化するための「技術×事業」セット設計

ここからは、黒字化の設計図をもう少し実務寄りにします。
重要なのは、事業KPIと技術KPIを同じ表で管理することです。

黒字化の式を先に置く

最低限、この形にしてから着手すると失敗率が下がります

  • 売上(広告+課金+その他)
  • 変動費(データ転送、検索、決済手数料、CS工数)
  • 固定費(最低限の基盤費、保守契約、監視ツール)

そして、機能追加が必要かはこう判断します。

その機能は、売上を増やすか/変動費を下げるか/解約を減らすか

“便利そうだから”で積むと、コストだけが跳ねます。

最初にやるべき優先順位

レシピポータルで効きやすい順に並べると、だいたいこうです。

  1. 画像配信の最適化(最優先)
  2. 検索の設計(体験とコストのトレードオフを明確に)
  3. ランキングの設計(“信用”を守る)

1. 画像配信の最適化(最優先)

  • 変換(WebP/AVIF)+適正サイズ配信
  • CDNキャッシュ前提のURL設計
  • 「更新頻度が高い画像」を分離して無効化コストを抑える
  • 画像の“元データ”の持ち方(無駄な再生成を防ぐ)

CDNやストレージは、配信とリクエストの積み上げで効きます。

2. 検索の設計(体験とコストのトレードオフを明確に)

  • 曖昧検索をどこまでやるか(無限に膨らむ)
  • サジェストの更新頻度(リアルタイムに寄せすぎない)
  • インデックス更新をイベント駆動にしてムダを減らす
  • 検索結果のキャッシュ(人気検索ほど効く)

3. ランキングの設計(“信用”を守る)

  • 集計をリアルタイムにしすぎない
  • 「急上昇」など重い指標は段階導入
  • Bot対策は最初から(後付けは地獄)
  • WAF/レート制限のコストも想定に入れる

「FinOps」で“伸びるほど黒字”に寄せる

クラウドの運用で黒字化を支える考え方として、FinOpsはかなり有効です。
FinOps Foundationは、FinOpsを「クラウドの価値最大化」「データに基づく意思決定」「エンジニア・財務・事業の協業による説明責任」といった枠組みとして説明しています。

レシピポータルに当てはめると、こうです。

  • 事業側:どの機能が売上と継続率を作ったか
  • 開発側:どの機能がコストを押し上げたか
  • 両者:その差分は、次スプリントでどう直すか

これを毎月やるだけで、クラウド費が“よくわからないけど増加している”事態にはなりにくいです。

黒字化のための収益モデル案

広告とサブスクだけに依存すると、どちらも伸び悩んだ時に詰みやすいです。
レシピポータルは、組み合わせができます。

  • 広告:無料ユーザーの収益化(ただし単価変動がある)
  • サブスク:摩擦削減で継続課金(ストア手数料も織り込む)
  • アフィリエイト:調味料・キッチン用品・食材宅配
  • タイアップ/スポンサー:ブランドレシピ、特集枠
  • EC:レシピ→買い物リスト→ワンクリック購入
  • B2B:管理栄養士監修、給食・施設向け、法人プラン
  • ライセンス:レシピデータやUIの提供(条件は要整理)

重要なのは、「どの収益モデルを採用するか」ではなく、その収益モデルが成立する“導線”が、プロダクトに組み込まれているかです。
導線がないと、収益は“いつかやる”のまま止まります。

よくある失敗パターン

よくある失敗パターンを軸に、現場でよく見る形に整理します。

マネタイズ方法の後付け

機能は増えたのに、課金理由が薄い。
結果、ユーザーは無料で満足し、コストだけが伸びます。

ランキングが荒れて信頼失墜(不正・忖度疑惑)

レシピ領域は“生活”に近いので、信頼を失うと戻りにくいです。
中でもランキングへの不信感は、回遊の死に直結します。

検索の利便性が低い

検索が弱い(利便性が低い、精度が低い)と、ユーザーはSNSで見た1レシピだけ作って終わってしまいます。
“ポータルサイト”にならないので、広告も課金も伸びません

費用見積りが開発費だけで運用費を想定していない

ポータルサイトやアプリは開発して終わりではありません。保守、監視、問い合わせ、クラウド従量、セキュリティなど、リリース後も決して安くない運用費がかかります。
運用費を見ずに作ると、人気化したときほど苦しくなります。

まとめ

「リュウジのバズレシピ」のような人気アプリでも赤字になるのは、“人気=コスト増”と“収益化の遅れ”が同時に起きるからです。
そして黒字化するには、価値設計(課金理由)とコスト設計(伸びても耐える)を、最初からセットで作ることです。

  • 画像・検索・ランキングは、レシピポータルの“体験価値”の中心であり、同時に“コスト増幅器”でもある
  • サブスクは「コンテンツ追加」より「摩擦を減らす」機能が効きやすい
  • クラウド運用はFinOps的に“事業×開発×財務”で見える化すると、伸びるほど黒字に寄せやすい

レシピポータルの立ち上げ・リニューアルを検討している場合は、要件定義の段階で「黒字化の式」と「ピーク時に落ちない設計」を先に置くのが、いちばん堅い進め方です。

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2003年創業。大阪・東京を拠点にWEBシステム開発、WEB集客支援、人材事業、補助金コンサル等を行っています。
ただシステムを作るだけではなく『売れる仕組み』を創ることを意識して、クライアントの利益向上を追求します。
開発会社の選定代行やレベニューシェアでの開発も積極的に行っているので、まずはお気軽にお問い合わせください。