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「課題(問題)は会議室ではなく、現場で起きている。お客様の現場で何が本当に起こっているかは、AIがどれだけ発達しても絶対に出てこない、貴重な一次情報なんです」——そう語るのは、今年130周年を迎えた株式会社 YRK and(ワイアールケイ アンド)の竹内真也さんです。漆看板業・印刷業から始まり、デザイン、SP、マーケティング、デジタルマーケティング、リブランディングへと、時代とともに支援領域を広げ続けてきた同社。自らを「コンサルティング会社」ではなく「事業成長 伴走支援会社」と呼ぶ理由や、130年続く誠実の文化、AI時代に必要とされる力について、竹内真也さんに伺いました。

竹内 真也さん
株式会社 YRK and所属。大手クライアントを含む幅広い事業支援に携わったのち、現在は人事(HR)としてメンバーの育成や組織づくりを牽引している。
ーまず、YRK andがどんな会社か教えてください。
実はどんな会社かというのが、私も毎回すごく説明しづらいんです(笑)。一応コンサルティング業界には所属していると思うのですが、自分たちのことをコンサルティング会社だとはあまり思っていません。
社内ではいつも「事業成長 伴走支援会社」と言っています。
コンサルティングも、私たちが提供する手段の一つでしかありません。戦略や提言を納品して終わるのではなく、その戦略が現場で動き、成果につながるところまでクライアントと一緒に担う。そこが一般的なコンサルティング会社との大きな違いだと思っています。
課題によっては、ブランドやマーケティングだけでなく、業務プロセス、テクノロジー、営業、組織にも踏み込みます。私たちの判断基準は、「自分たちは何を専門とする会社なのか」ではありません。「クライアントの事業を、もっと強く、持続可能にするためには何が必要か」です。

現在は、売上の最大化、最適化・効率化、成長投資、組織強化という4つの領域を横断しながら、戦略立案から実行、定着まで伴走しています。
そもそも創業時より、「人がやらないこと、人がやれないことを、やってやろう」という想いでずっと事業を続けてきましたし、必要な役割であれば、自分たちの領域を限定せずに引き受けていくという姿勢は130年の歴史の中で培われてきた我々の価値観だと思います。
ー今年で130周年ということですが、その歴史について教えてください。
ありがたいことに、今年1月で創業130年を迎えることができました。最初は漆看板業から始まり、そこから印刷、デザイン、企画、SP、マーケティング、デジタルマーケティング、リブランディング、そして現在のリビジネスへと、時代ごとの環境に応じて支援領域を広げてきました。

その時代ごとに、クライアントの事業を強くするための手段は変わっていきます。「今、自分たちが提供している範囲だけでは、クライアントの事業を強くするために足りないのではないか」という壁に何度もぶつかり、そのたびに新しい領域へ踏み込んできました。
向き合うべきは、自分たちの業種や専門領域ではなく、お客様と市場です。自分たちがまだ提供できないことでも、クライアントの事業に必要なのであれば、新しいビジネスとして立ち上げればいい、我々が出来るようになればいい。そういう考え方で、ここまで歩んできました。
ーヤラカスという言葉にはマイナスなイメージもあるかと思いますが、いかがでしょうか?
122年目までは「ヤラカス舘」という社名でやっていました。私自身もヤラカス舘時代の入社です。創業の地である大阪・船場の言葉で、「人のやらないことをやろう」「何でもやってやろう!」というニュアンスからきています。
関東圏では「やらかしてしまった」というネガティブな意味合いで捉えられることもありましたが、それも含めて話のネタになっていましたし、私は旧社名が結構好きでしたね。


株式会社 YRK andの主な事業領域
漆看板業・印刷業から始まり、デザイン・企画・SP・マーケティング・デジタルマーケティング・リブランディング・リビジネスへと、時代に応じて支援領域を拡張。特定の商品・サービスに限定せず、クライアントの事業を強くするために必要なことであれば、戦略の立案から実行・現場への伴走までを一気通貫で担う「事業成長 伴走支援会社」です。今年1月に創業130周年を迎えました。
ー130年という歴史のなかで、他社にはないアピールポイントはありますか?
1番は、お客様の事業を強くするためであれば、自分たちの役割や領域を決めずに、本当にどんなことでもチャレンジをするという点です。そしてもう1つ、「誠実」であること。嘘・偽り・ごまかしは絶対にするな、というのは今の会長からもずっと言われてきました。
昔のエピソードとして、第二次世界大戦が終わった直後、当時印刷業をやっていたのですが、印刷せずに紙をそのまま横流しした方が高く売れる状況がありました。それでも私たちは横流しをせず、お客様の事業を強くする仕事(当時は印刷業)を通じて価値を貢献するという姿勢を貫きました。
短期的にすごく儲かればいい、という意識はまったくないからこそ、中長期的に40年、50年と続いているお客様も少なくありません。
スポットや単発でお取引が終わるような関係性ではなく、本当に中長期で関係性が続くために誠実であること、何をすればいいのかを常に考える。これが私たちに根付いている文化だと思います。

ー入社理由として多いのはどんなことですか?
実は、歴史の長さを理由に入社する方はあまりいません。入社後に弊社の歴史や背景とそれに付随する様々なことを知って、重みや品格をプラスに感じてもらえる、という感じですね。
1番多い入社理由は、特定の商品・サービスではなく、本当にお客様の課題解決に従事したいのに、今の会社ではそれができない、というものです。
例えば、大手人材系企業出身の方がうちには結構多いんですが、営業のなかでいろんな企業様と仲良くなって事業課題を聞いても、社内的には最終的に自社の教育教材に着地させなければいけない。「それって本当にお客さんのためになっているんだっけ」という葛藤があったそうです。私たちは商材を限定せず、お客様の事業を強くするための提案であれば、領域を限定することはありません。
ー竹内さんの入社理由はいかがですか?
一番の入社理由は「人」ですね。卒業した社員も含めて、みんなが「YRK andは人がいい」と言うんです。その良さを分解するといい意味での「お節介」が多い。お客様の事業に必要なことであれば、自分の役割を超えて越境して提案していく。そういうスタンスを持つ人はお節介な人が多いんですよね。
あとは熱量の高い社員が多いこと。お客様の事業を強くするという同じ志を持ちながら、いろんな価値観の人がいるので、議論が激論になることもあります。ただそこは全員、目指す方向は一緒なんです。
ー他にも特徴的な点はありますか?
弊社の大きな特徴の1つに「一気通貫」があります。これは戦略を考えるだけでなく、実行して寄り添いながら成果が出るまで寄り添うという意味で、机上の空論で終わらせるのが1番嫌いです。
だからこそ「コンサルティング会社」と言われることに違和感があります。
4年前、大手総合商社さんのふるさと納税の新規事業立ち上げを支援したことがあります。旅館に宿泊した際、QRコードを読み込んでふるさと納税を決済すると、翌日の宿泊費に充当できるデジタルクーポンが返ってくる、というモデルでした。チェックインからチェックアウトまでの限られた時間で数万〜数十万円の納税をしてもらうのは、態度変容のハードルがとても高い。なので北海道の旅館でテストマーケティングを重ね、支配人や受付スタッフに何度もヒアリングしながら、最初はまったく結果が出ず、2ヶ月で4〜5回通って仮説検証を繰り返しました。
ようやく勝ち筋が見え、全国展開しようとなったとき、「フィールドセールス」が必要になりましたが、クライアントにその余力がなかったので、私たちが営業代行も請け負いました。普通のコンサルティング会社なら、そこまではやらないと思いますが、私たちのビジョンが「クライアントの事業を強くする」ことである以上、必要なことは自分たちがやるべきだ、という考え方なんです。
最初は私自身が全国を1ヶ月ほど飛び回って、現場でどう営業すれば導入してもらえるか、導入後にどんな課題が出てくるかを見て回り、マニュアルに落とし込んで派遣スタッフでも運用できる仕組みをつくりました。お客様の事業を強くするということであれば、そこまで踏み込むのが私たちの哲学であり文化です。お客様の事業推進になくてはならない機能の一部になることを、今、目指しています。

ー入社することで、社員はどんなキャリアやスキルを手にできますか?
専門力が身につくかと言われると、そこではないんだろうなと思っています。特にこれからのAI時代、AIがAGIやASIになっていくなかで、その専門力が本当に未来の世の中に必要とされるかはわかりません。15年ほど前にSEOがすごく持てはやされましたが、今はChatGPTが広告機能を持つようになり、SEOの重要性が薄れてきていることは明らかです。
私たちが向き合っているのは経営者や事業の責任者の方々です。歴史あるクライアント様も多く、そこには様々な組織力学があります。「このプランを通すためには別部署や別キーマンも味方にしておかないと決裁されない」といった調整すらも、私たちが担うことがあります。結局そこを調整しないと、クライアントの事業は強くならないからです。
今風に言えば、どこに行っても通用する「事業を動かす力」がOSとして手に入るんじゃないかと思います。いわゆる正解を提示してほしい人や、決まったサービスを専門力を持って売りたい人には、弊社は合わないかもしれません。
ー「YRK and」という社名にも意味が込められているそうですね。
普通、andの先には名詞がつきますよね。でも私たちは、あえてこのandで社名を終えている。andの先を「お客様と一緒にそして私たち自身も作り続けていく、常に未完成な会社なんです」という意味合いを社名に込めています。そこに合わない人は本当に合わないと思いますが、変化し続けることこそがやりがいであり面白さだと思っています。

ー福利厚生で特徴的なものはありますか?
私たちは常に未完成な会社なので、福利厚生も人材育成も全部完成されているとは思っていません。ただ必要だと思うことがあれば現場から声を上げれば、ちゃんと聞いてくれる経営なので、どんどんアップデートされています。その代表的なものが「キズナ制度」です。チームやビジョンの浸透、コミュニケーションの活性化を目的に、レクリエーション費用として1人月3,000円、年間36,000円分を支給しています。
使い方はチームによって様々で、飲み会やランチ、誕生日プレゼント、書籍プレゼントなど、ルールで決めることはあえてしていません。目的があれば運用は現場の考え方次第、というスタンスです。
ー人材育成の取り組みについても教えてください。
私たちは明確にパッケージングされたサービスを持たず、お客様との関係性のなかで仕事をつくっていくので、人こそが商品だと思っています。なので人の成長投資として、私が立案して「人材育成支援会議」という取り組みを始めました。リクルートさんの「人材開発委員会」を参考に、半期に1回、東阪それぞれ3日間ずつ、コアリーダー層が集まってメンバー1人1人の育成・成長支援を複眼議論する場を設ける取り組みです。
やり方はまず「メンバーカルテ」を作成します。経歴や入社動機、価値観、強み弱み、3年後の目標や将来のビジョンをメンバー自身に書いてもらい、上長がとことん深掘りしたうえで、コアリーダー全体で情報共有。次に「成長カルテ」で3年後の目指すべき状態と、そのための半年後のゴール、育成ステップ、必要な機会や組織支援をまとめた上で発表し、コアリーダー陣で複眼的に喧々諤々議論をします。
1年半続けてきて、効果は絶大でした。メンバーの育成についてコアリーダー層で議論することで、一人ひとりの課題や目指すべき姿が浮き彫りになり、結果としてメンバーの成長をより加速させることに繋がっています。また、コアリーダー全員が同じ言語・方向性で向き合えるようになり、上長自身も思考を深めざるを得ない仕組みになっています。
また、事業本部長が自らクライアントの事業をどう強くするかの考え方をまとめた「事業基礎力向上トレーニングプログラム」や、私たちのような中小企業・市場環境の変化が激しい会社ならではの「マネジメントトレーニングプログラム」も、去年開発し、定期開催しています。
130年以上の歴史を持つ会社ではありますが、決して型にハマったガチガチの組織ではありません。むしろ自分たちの手でいくらでも理想の会社へアップデートしていける『余地』が溢れているからこそ、こうした取り組みも生まれています。
手づくりの「人材育成会議」がもたらした変化
「メンバーカルテ」と「成長カルテ」を軸に、コアリーダー層が半期に1度、複眼的にメンバー1人1人の成長に向き合う仕組みを開始から1年半で、組織全体で共通言語をもって育成に取り組めるようになりました。上長自身がメンバーの成長支援を深く考えることを促す設計になっている点が特徴です。
ーどんな人材を求めていますか?
いくつか軸はありますが、やはりお客さんに直接会いに行ける人ですね。「事件は会議室ではなく現場で起きている」とよく言いますが、まさにそれで、現場で本当に何が起こっているかという一次情報は、AIがどれだけ発達しても絶対に出てきません。
その一次情報をどれだけ正確に解像度高く持てるかが、そのまま提案の精度に返ってきます。そのためには、お客様から「こいつなら信頼できるかも」と思ってもらえる関係構築がとても大事です。私たちは、そういう「リアル」にこだわっています。
ーそういう竹内さんの今のような考え方・価値観が身についたきっかけはありますか?
結構シンプルで、文化・風土の伝承だと思います。先輩から教えられた、それだけですね。特定の言葉やエピソードというより、本当に現場で教えられるものだと思っています。誠実であること、お客様の事業を強くするためにここまで深く入り込まなきゃいけないんだ、ということは、先輩方が教えてくれました。

ー今後の展望を教えてください。
もっとお客さんに人間的に寄り添っていきたいと思っています。AIはさらに進化するでしょうし、データを入れれば適切な戦略が提示される世界観はすでにあり、解像度もこれからもっと上がっていくと思います。ただ、それを実行できるかどうかという実行力の部分に困る企業は、人材不足や人材の流動性が高まることで、今後どんどん増えていくと思っています。先ほどの営業代行のような形も含め、実働のラストワンマイルの部分を私たちが担っていきたいですね。
あとは「アナログクラウド的な世界観」が今後来るんじゃないかと思っています。本来、クライアント組織の中でノウハウは伝承されるべきですが、人材不足や流動性の高まりによって、社内でのノウハウ伝承がしにくくなっています。それを外部委託してもらい、私たちがそのノウハウをアナログクラウド的に保有しておく。そうすればお客様は自社でやらなくてよくなりますし、ノウハウが失われることもありません。
あともう一点。クライアントのメンバーの方々も当然サラリーマンで、熱量の高い・薄いは当然あります。私たちはその熱量の薄いところに入り込んで熱量を高くしていく、そういう伴走の仕方が多いんです。経営者や事業責任者、そこに携わるメンバーの熱量そのものを芽吹かせるところに、まだまだ攻めていける余地があると思っています。
私たちが対外的にメッセージしている言葉に「日本企業の謙遜を自信に変える」というものがあります。これは特に新卒の方に共感していただいて、私たちの会社を選んでいただく理由の1つになっています。

1956年から70年続く「すき焼き文化」
冬の賞与日は「感謝の日」と呼ばれ、賞与とともに社員に生肉(すき焼きセット)が配られる文化が1956年から70年続いています。普段支えてくれている家族へ、その日は食卓を囲んで直接感謝を伝えてほしい、という思いから始まったそうです。
ー最後に、AI時代のキャリアに悩む読者へメッセージをお願いします。
AIがどれだけ発達しても、ビジネスは結局人と人。その人に背中を預けられるかどうかというところは変わらないと思いますし、むしろAIが発達すればするほど重要性は高まっていくと思います。人間力を高め続けることが、これから私たちの強みが生かされる部分だと思っています。
もう1つは、AIに使われる側になってはいけないということ。AIが出してきた答えが本質的に正しいのか、そもそもAIに何を聞くのかという、問う力と見極める力がすごく重要になってきます。専門力よりも、そういうジェネラルな力や本質を見極める力の方が、これから大事になってくると思いますね。
そして、私たちの仕事はほとんどチームで動きます。自分がやれることだけで完結させようとすると、クライアントへの価値発揮が小さくなってしまう。いかに多くの人を巻き込めるかが大事で、それは技術やスキルだけでは実現できません。「この船に乗っかりたい」と思ってもらえるくらいの熱量が、これからますます必要になると思います。スキルと同じくらい、情熱を忘れないでいたいです。
正解がわからない世の中になっていくからこそ、決めたことを正解にする力、いわゆる「ラストマンシップ」がすごく大事だと思います。
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