なぜ、事務職の給料は安いままなのか?仕事の価値が見えづらい構造

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「事務職って、誰でもできるでしょ」「だから給料が安いのは当然だよね」。
そんな言葉を耳にしたことがある人もいるかもしれません。けれど、本当にそうでしょうか?

事務職には、会社の業務を支えるための膨大な処理能力と、細やかな配慮、調整力、そして信頼が求められます。
それでもなお、「報われない」「成長できない」「給料が安すぎる」と感じてしまうのはなぜなのか。

本記事では、事務職が抱える6つの“報われにくさ”の要因にフォーカスし、その背景にある構造的な問題を見つめ直していきます。

目次

なぜ「事務職の給料は安い」と言われるのか?

事務職の給料は、他の職種と比べて低いと言われることが多いようです。
その背景には何があるのか、整理してみます。

成果が「見えない」ことが評価の壁になる

事務職は、売上を直接生み出すわけではありません。
たとえば営業職なら、「売上○万円」「契約○件」というように、成果が数字で表れます。

しかし事務職では、「ミスなく処理した」「締切どおりに提出した」といった、“トラブルが起きなかった”こと自体が成果になります。

けれど、何も起きなければ、それは「仕事をした証拠」が表に出ないということ。
つまり、「当たり前にこなす=成果が見えない」状態に陥り、評価対象になりにくいのです。

さらに、トラブル対応がうまくいっても、その努力は“裏方”と見なされがちです。
多くの企業で使われている評価制度は、可視化された成果に報酬を与える仕組みが中心のため、事務の貢献はスコアに反映されにくいままです。

「誰でもできる仕事」のレッテルと現場のギャップ

「事務職=誰でもできる簡単な仕事」という先入観は根強くあります。
実際、求人を見ても「未経験歓迎」「PCの基本操作ができればOK」といった条件が並んでおり、専門職に比べて入りやすい印象を受けるのは事実です。

でも、実際の現場ではどうでしょうか?

  • 一度のミスで社内外に影響が出る請求書処理
  • 複数部署と同時に進めるスケジューリング業務
  • 顧客への正確で丁寧な対応(電話・メール)
  • 絶対に期限を守らなければならない経費精算や書類提出

これらを、正確かつスピーディに、そして感情を押し殺しながら進めるスキルは、誰にでもできるものではありません。

しかし、こうした“見えない能力”は評価されにくく、結果として給料に反映されづらくなっています。

定型業務に閉じ込められた職種設計

事務職の多くは、「効率よく業務をこなす人」として設計されています。
業務フローが整備され、マニュアル化が進んでいる環境では、個人の創造性や判断の余地は入りにくくなります。

そうなると、「仕事の質」で差がつきにくくなり、「誰がやっても同じ」に見えてしまう。

結果として、賃金に差が出にくく、「上がらないのが当たり前」になってしまうのです。
これは個人の能力の問題というより、職種設計そのものが原因であると言えます。

なぜ事務職はやりがいを感じにくいのか?

事務職は、やりがいを感じにくい仕事だと言われることがあります。
実際にそう感じている方も少なくないようです。
その理由について、いくつかの視点から整理してみます。

目的が見えづらい仕事の構造

事務職の仕事をしていると、「これって何の役に立っているんだろう?」と感じる瞬間があると思います。

業務の多くは、上から振られた作業を淡々と処理するものです。
しかも顧客と接点があるわけでもなく、成果物が社外に出ることも少ない。
つまり、自分の仕事の“出口”が見えにくい構造になっているのです。

たとえば:

  • 書類作成
  • データ入力
  • 郵送物の準備
  • 社内連絡の伝達作業

これらは「やって当たり前」とされる一方で、「誰が助かったのか」「何が良くなったのか」が分かりづらく、達成感を感じにくいのが現実です。

感謝されにくい仕事=やりがいの不在

事務職は、いかにミスなく業務を遂行しても、「ありがとう」「助かった」と言われることが少ない仕事です。

むしろ、何も起きない状態が“普通”として扱われ、何か問題が起きて初めて注目される構造になっています。

日々こなしている多くの小さな対応や気配りは、誰にも見えず、誰からも気づかれず。
それが積み重なると、「自分は何のために働いてるんだろう?」という虚無感に繋がってしまいます。

“正解が評価されず、失敗だけが目立つ”
そんな世界では、やりがいは育ちにくいのです。

自分の判断や提案が不要とされる空気

近年は業務効率化が進み、事務の仕事もマニュアルやツールで管理されることが多くなっています。
改善提案や新しい工夫をしようとしても、「それは他の人が考えることだから」と遠ざけられるケースも珍しくありません。

つまり、「自分の判断で動く」「考えて改善する」といったチャンスが最初からない職場も多いのです。

やりがいは、「自分の関与で何かが良くなる」と実感できたときに生まれます。
その余地すらない環境では、やる気を維持すること自体が難しくなるでしょう。

総務が「つまらない」と言われるのはなぜか?

事務職の中でも、特に総務は「つまらない」と言われることがあるようです。
なぜそのように見られやすいのか、背景を整理してみます。

総務=何でも屋のイメージが損をしている

総務って何してるの?

雑用係みたいなものでしょ?

こんなふうに思われがちな総務ですが、実際の業務は多岐にわたります。

  • 備品の管理
  • オフィス環境の整備
  • 防災や安全衛生の管理
  • 社内イベントや行事の準備
  • 社内規定の整備、法務の補助
  • 電話・来客対応

こうした仕事は、会社がスムーズに機能するための土台を支えるものです。
にもかかわらず、成果が見えにくく、感謝されにくいために「何やってるか分からない」と見なされてしまいます。

成果が「快適さ」だと評価が曖昧になる

営業職の成果は売上、開発職ならプロダクト。
では、総務の成果は何かと聞かれたら「社内が円滑に動くこと」です。

ただし、この“快適さ”という成果は、数値化も可視化もしづらい。

  • トラブルが起きなかった → 評価されない
  • 誰も困らなかった →「当たり前」とされる

つまり、「最高の仕事をしても、何もしてないように見える」という状況に陥りやすいのです。
これは総務に特有の“報われなさ”の一つです。

幅広すぎる業務で自分の専門性が見えなくなる

総務は社内のあらゆる部署と関わる一方、自分の仕事が「〇〇の専門」と呼べるほどには特化しづらい特徴もあります。

  • 雑多な仕事を日々切り替えてこなす
  • 次から次へと業務が流れてくる
  • ルーチンと突発対応が混在する

このように動き回っているうちに、

自分の得意なことが分からない

何をキャリアにすればいいか見えない

と感じる人も多いのではないでしょうか。

事務職はなぜ正社員より派遣が多いのか?

事務職の求人では、正社員よりも派遣社員の募集が多く見られます。
その背景について、いくつかの視点から整理してみます。

“派遣で十分”とされる業務設計の現実

事務職の求人を探していると、派遣社員の募集が目立つと感じたことはありませんか?
それには明確な理由があります。

企業にとって派遣社員はとても扱いやすい存在です。

  • 必要な時期にだけ人を増やせる
  • 社会保険・賞与・退職金などのコストがかからない
  • 契約期間が終われば自然に人員を整理できる

こうした「柔軟性」「低コスト」「リスク回避」といった観点から、事務職は“派遣で十分”とされやすいポジションになっています。

成長が見えづらい業務構造

派遣社員に任される業務は、短期間で覚えられ、すぐに即戦力になれるように設計されています。
そのため、仕事の内容もマニュアル化・定型化されたものが多くなります。

  • 判断を必要としない作業
  • 創意工夫や提案の余地が少ない
  • 業務の幅が狭く、ルーチンになりやすい

この結果、作業能力は磨かれても、企画力や分析力といったスキルは身につきづらいという構造になります。

正社員登用があっても現実は厳しい

「紹介予定派遣」や「正社員登用あり」といった求人も存在しますが、
実際に正社員になれる人はごく一部です。

なぜなら、企業側にとっては「派遣で十分に回っている仕事」をわざわざ正社員に切り替える理由がないからです。

  • 長年続けているのに、雇用形態は変わらない
  • 感謝されても、登用の話は出ない

こうした状況は、「必要とされているけど、信頼されているわけではない」という不安感につながっていきます。

「事務職はラクそう」で応募してくる人が多い

事務職の求人を出すと、「とりあえず事務が良かった」という人の応募も一定数見られます。
応募の理由としては、残業が少なそう、体力的に楽そう、責任が重くなさそうといったものが挙げられることがあります。

実際の事務職は“楽な仕事”ではない

事務職は、ただ座って書類をさばいていればいいわけではありません。

  • 処理スピードと正確性が常に求められる
  • 社内外との連絡や調整が頻繁に発生する
  • 他人のミスもカバーしながら自分の業務を進めなければならない
  • 納期・締切のプレッシャーに日々追われる

しかも、その働きが“評価されにくい”という問題もあります。
「間違えないことが当たり前」で、目立たない仕事ほど責任は重いのが、事務の仕事の特徴です。

軽い気持ちの応募が現場を疲弊させる

もちろん、「残業ができない」「体力に不安がある」「家庭との両立をしたい」など、現実的な事情から事務職を選ぶ方も多くいます。
そのこと自体には何の問題もありません。

問題は、「誰でもできそうだから」「適当に働きたいから」という理由だけで事務職を選ぶこと。
こうした姿勢は、現場で真剣に働いている人たちのやる気を削いでしまいます。

「とりあえず事務」と言われたとき、現場の空気が冷えるのは当然のことかもしれません。

「経理が向いてなかった」と感じたときに考えてほしいこと

経理の仕事を経験した中で、「自分には向いていないかもしれない」と感じることがあります。
そう思う背景には、いくつかの要因があるようです。

「数字が苦手」で済まされない世界

経理という仕事には、「数字を扱う責任」がついて回ります。
たとえば、振込額を1円でも間違えれば信用問題になり、申告内容に不備があれば税務署からの指摘を受けます。

そのため、経理は“間違いの許されない仕事”として、常に緊張感が伴います。

  • 月末月初は非常に忙しく、遅くまで残業が続く
  • 締切が厳格で、業務に融通が効きにくい
  • 地道な照合や細かなチェックが日常的に求められる

このような環境の中で、「自分には向いていない」と感じてしまうのは、ごく自然なことです。

“完璧主義”が求められる仕事のしんどさ

経理の世界では、99件を完璧に処理しても、たった1件のミスで信頼を失うことがあります。
「ちゃんとやった」は通用せず、常に“完全”が求められるのが現実です。

このストレスに耐えきれず、「自分には向いていなかった」と思ってしまう人も少なくありません。

向いてない=終わりではない

ただし、「向いてなかった」と感じることが、キャリアの終わりを意味するわけではありません。
むしろ、それが新しい可能性の入り口になるケースもあります。

たとえば

  • 数字への興味を活かして、マーケティングや分析職に進む人
  • 会計の知識を武器に、コンサルティング職へ転身する人
  • 経理経験をもとに、業務改善やシステム導入に関わる人

「向いていない」と感じた背景をよく見てみると、本当は向いている仕事へのヒントが眠っていることもあるのです。

総務の仕事、雑用で片づけられていない?

事務職の中でも、総務は「雑用が多い」「評価されにくい」といった印象を持たれやすい仕事の一つです。
実際に働く人がどう見なされているのか、その背景を整理してみます。

「雑用」という言葉に、自分で価値を奪われていないか

総務の仕事をしていて、こう思ったことはありませんか?

  • また備品の発注か……
  • コピー機のトナー交換、これって私の仕事?
  • 会議室の予約管理、もう何件目だろう?

こうした仕事を、「雑用」と呼ばれることに、どこかモヤモヤした気持ちを抱いている人も多いはずです。

でも考えてみてください。
それらがなければ、会社の日常業務は本当に回るのでしょうか?

“雑用”に見える仕事の本当の価値

たとえば

  • 備品発注は、生産性に直結する“業務インフラ”
  • 会議室の整備や受付は、“会社の印象”を左右するブランディング
  • こまかな手配や調整は、他部署の業務スピードに直結する支援行為

つまり、「誰でもできる」と思われがちな仕事の中に、組織の動きを支える要素が隠れているのです。

業務改善こそが、総務の“キャリア資産”になる

総務の仕事を、ただの“処理”で終わらせるか、“設計”として捉えるか。
その違いが、キャリアの伸びしろに大きく関わってきます。

たとえば:

  • 業務フローを整理し、自動化の提案をする
  • ムダな作業を削減し、時間効率を高める
  • 社内ルールや運用を見直し、トラブルを減らす

こうした「業務改善の視点」があるだけで、総務は“雑用係”から“仕組みのデザイナー”へと変わっていきます。

まとめ

  • 事務職は「成果が見えにくく、評価されづらい」構造の中で働いている
  • 「やりがいがない」「雑用ばかり」と感じる背景には、職場環境や業務設計の問題がある
  • 「向いてない」と感じたときこそ、仕事の意味や自分の強みを見直すきっかけになる

事務職や総務、経理などのいわゆる裏方の仕事には、派手さはなくても、組織を支える確かな重みがあります。
その価値が見えにくいからこそ、自分の中で言葉にし、考え続けることが、仕事との向き合い方を変えていくはずです。

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自分ではありふれた経歴だと思っていても、過去のあなたと同じ境遇にある方のキャリアの道しるべになるかもしれません。
異業種に転職された方、フリーターから正社員になられた方、ブランクから復帰された方、未経験からフルリモートの仕事に就かれた方など、様々なキャリアの方をお待ちしています!

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この記事を書いた人

キャリアクラフトは大阪・東京を拠点に20年、人材事業やシステム開発を行ってきたセルバが運営する「新しい働き方を創るメディア」です。
従来の新卒や転職だけでなく、フリーランスやパラレルキャリアなどの新しい働き方や、リモートワークや時短勤務などの新しく浸透しつつある制度について発信しています。
自身のキャリアに迷っている人のお役に立てればと考えています。

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