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「自動化や省人化がすごく言われる中で、当社はそれと反するところで物を作っているんです。割と、人が物を作るみたいな」——そう語るのは、長野県でプレス部品の試作品を専門に手がけるクロダ精機株式会社の社長・佐々木俊一さんです。1970年4月の設立。現在は量産品ではなく、お客様の図面やデータを「物」にする試作を専門に手がける同社。「コンビニ」をコンセプトに年間350日工場を動かす体制で、自動車関係を中心とした急な依頼にも応えています。佐々木さんに、試作専門メーカーならではの仕事の面白さ、「人が物を作る」会社から見たAI時代の変化、そして地方の未来について伺いました。

佐々木俊一
クロダ精機株式会社 社長。長野県の本社で、プレス部品の試作品を専門に製造する39名の組織を率いる。「欲しいものがいつでも手に入る」コンビニをコンセプトに、土日も当番制で工場を動かす年間350日稼働の体制を運営。「日本一の試作」を目指すとともに、地元の子どもたちに地域の会社の面白さを伝える職場体験にも取り組んでいる。

ーまず、御社がどんな会社なのか教えてください。
ざっくり言うと製造業なのですが、当社はプレス部品の試作品を専門に作っている会社です。毎月何個作るといった決まった仕事はなく、すべて都度の受注生産になります。お客様から図面やデータをいただいて、それを物にするのが基本的な仕事で、試作だけでやっています。
1970年4月に設立されました。設立した当時の方はもう亡くなっていますが、その頃のこの地方はあまり仕事がなく、独立したいという人が多かったそうです。時計など精密なものを扱う地元の企業から仕事をもらい、組み立てのようなことをするところからスタートしたと聞いています。
クロダ精機株式会社の主な事業領域
超精密板金部品・薄板プレス部品の試作を専門に手がけ、指先サイズの極小部品からA4サイズ程度までの精密プレス部品を1個から受注。電機、自動車、OA機器、光学などの精密部品で試作実績があり、モーターコアやバスバー、曲げと削りを組み合わせたハイブリッド加工にも対応しています。年間350日稼働の体制で、短納期にも柔軟に応えています。
ーホームページでは「年間350日稼働のコンビニコンセプト」を掲げていますね。御社ならではの特徴を教えてください。
「コンビニ」というのは、言い出してからもう30年くらいになると思います。欲しいものがいつでも手に入る、というのがコンセプトです。試作品は基本的に納期に余裕がなく、「この日までに欲しい」という依頼が多いので、それを実現できるようにしています。
そのための仕組みが年間350日稼働です。長期休みは休みますが、土日も基本的に当番制で工場が動いています。土日も工場が動いているというところが、割と特徴かなと思います。
最近はあまりありませんが、以前は金曜日の夕方に図面を出して、月曜日に欲しいといった依頼もありました。もちろんすべてに対応できるわけではありませんが、それでもそういうものも土日の当番の中で回せたらいい、という考え方でやっています。
ー量産に入る前の試作品とのことですが、具体的にはどのような部品が多いのでしょうか。
今、当社で多いのはやはり自動車関係の部品です。例えばEVやハイブリッド車の、まだ発表される前のようなものですね。1年後、3年後、5年後にこの仕組みを使ってみたいから、とりあえず試作品を作らないと、という依頼が多いと思います。素材についても、金属の板から作るものであれば、この金属はダメといった制限は特にありません。
ー現在、社員の皆さんは長野県の本社で働かれているそうですね。コミュニケーションの観点で工夫していることはありますか。
はい、社員39名が長野県の本社で働いています。福利厚生に近いかもしれませんが、月に1回は会社でお弁当を取って、みんなで食べるようにしているんです。日頃で言えば、毎週月曜日のお昼に一応全員が集まる場があり、そこは数字や情報を共有する場です。
試作品の案件はたくさんあるので、「あなたの担当はこれ」となると、自分の仕事に入り込むことはもちろんあります。ただ、必ず前後の工程とのやり取りが出てくるので、コミュニケーションを取る機会もあるのかなという気がします。決められたことを決められた通りにやる仕事とは違いますから。チームで取り組むこともあれば個人で担当することもあり、作るものによって毎回変わります。
ー入社後、社員の方はどのようにキャリアを積んでいくのでしょうか。
最初は先輩にくっついて、先輩のやることを一緒にやるという形が多いですね。そこからだんだんできる幅が広がっていき、機械であれば他の機械も使えるようになることもあります。本当に仕事を実践しながら成長していく、という感じです。
その先には、現場の管理者や現場責任者といったキャリアアップの道もあります。やはり、どんどん自分の仕事の幅が広がっていった方がいいと思っています。
新年会・忘年会に歓迎会 ── 顔の見える距離感の職場
社内では新年会や忘年会、新しい人が入ったときの歓迎会などの交流の場が年に何度か設けられています。社員は男性が多く、39名のうち男性は33名ほどだそうです。

ー入社される方は、御社のどんなところに魅力を感じているのでしょうか。
入ってくれた人に聞くと、「ものづくりが好き」という人が多いですね。子どもの頃に自分で何か作っていた、という人もいます。製造業ではありますが、お決まりの仕事ではなく自分で考えて物を作っていくので、そういうことが好きな人が集まっているのだと思います。逆に、飽きずにずっと同じことをやり続けるのは嫌だという、どちらかというと飽きっぽい人の方が多いかもしれません。
工場というと同じ作業の繰り返しをイメージされるかもしれませんが、そうではありません。使う機械はある程度限られてきますが、やっていることは毎回まったく違います。似たものを作ることはあっても、まったく同じものはほとんどなく、基本的に1回作ったら終わり。リピートがある時もありますが、定期的に作るものはありません。
やりがいで言えば、図面は大体お客様から出てくるのですが、自分が担当したものがその通りにできた時の喜びがあるんじゃないかなと思います。一般的な工場の仕事とは、イメージがまったく違うはずです。
ー入社にあたって、必要な資格やスキルはありますか。
スキルはほとんど入ってから身につけるものです。会社に入る時は「図面って何?」という人ばかり入ってきますし、工業系の高校出身というわけでもありません。仕事をやりながら覚えていく、というのが当社のスタイルです。その代わり、同じことを黙々とやるのが得意な人は向かないかもしれないということは、面接の前に伝えるようにしています。入ってから「話が違うじゃないか」となっても嫌ですからね。
社内には製造のほかに営業や管理、社内の書類を整える人もいますが、新卒の場合はまず製造という形で募集しています。中途で事務的なポジションを募集したこともありますが、それは必要な時だけです。ある程度、現場を覚えないことには始まらないと思っています。
ー佐々木さんは、どんな人と一緒に働きたいと考えていますか。
私がよく言うのは、「自発性のある人」です。自分から動ける人、と言えばいいでしょうか。入社前のキャリアはあまり関係なく、何か1つのことに熱中してきたという人の方が向いていると思います。「言われないと動けません」だと、ちょっと寂しいなという気がします。試作品を作る中で問題が起きそうな時には、担当者がお客様と直接打ち合わせをすることもあります。
ーAIが急速に広がっていますが、御社の仕事への影響はどう見ていますか。
ものづくりそのものについては、あまり影響はないと考えています。今は自動化や省人化がすごく言われていますが、当社はそれと反するところで物を作っているんです。割と、人が物を作る会社なんですね。
ただ、AIは本当に脅威だなと思うところもあります。これまでは試作品を作りながら、だんだん良くしていくのが普通でした。設計にAIが使われるようになると、おそらくもう使われ始めていると思いますが、例えば、これまで3回試作をしてだんだん良くなっていたものが、1発でできてしまうと思うんです。試作そのものはなくならなくても、試作する機会は減るのではないかというのが、ちょっとした脅威ですね。
AIは最近急激に発達してきたので、そういう流れになるだろうと感じています。もちろん試作の質は上げていく必要があります。一方で、この業界で同じような仕事をずっとキープしていくのは、もしかしたら難しいのかもしれません。
クロダ精機株式会社が大切にしている3つのこと
① 欲しいものが、いつでも手に入る「試作コンビニ」
土日も当番制で工場を動かす年間350日稼働で、「この日までに欲しい」という依頼に応える
② 決まっていない仕事を、自分で考えて動く
指示を待たず一人ひとりが自発的に動き、前後の工程と連携しながら形にする
③ 人が物をつくる
自動化・省人化の流れとは逆に、図面を人の手と頭で「物」にし、その通りにできた喜びを大切にする
ー今後の展望やビジョンを教えてください。
そういうわけで、試作一辺倒では厳しい時代が来るのかもしれません。会社をめちゃくちゃ大きくしようとは考えていませんが、試作業では「日本一の試作」を目指しています。それはナンバーワンではなく、オンリーワンの会社になるということです。
もう1つは、他業種の可能性も捨てきれないと考えています。これはリスク管理の面でもあって、過去にはリーマンショックのような業界全体が落ち込む時代もありました。製造業の中だけで幅を広げても、結局は一緒だと思うんです。まだ具体的なものは何もありませんが、柱とまではいかなくても、みんなの役に立つ別のことにも挑戦してみるのはありかなと思い、模索しているところです。
ー最後に、変化の速い時代に仕事を選ぶ読者の方へメッセージをお願いします。
難しいですね。ただ、悲観していてもしょうがないと思います。もう現実があるので。
この辺りは地方の田舎なのですが、今ちょうどリニアの工事をしていて、駅がおそらく車で10分ほどのところにできます。だいぶ先にはなると思いますが、そうするとこの田舎も少し景色が変わるはずです。何もしなければいろいろなものが流出して終わりだと思いますが、地方であっても魅力的な将来はまだまだたくさんあると思っています。
この地域には短大が1つあるだけで、基本的に大学や専門学校がないので、高校を出るとみんな外に出ていってしまうんです。出ていくのは仕方がないと思います。ただ、いざ地元に戻りたいと思った時に、「働くところがない」というイメージを持たれてしまっている。実は地元には、大きな会社ではないけれど魅力的な会社がいっぱいあると思っています。
高校生に伝えるのではもう遅いので、小学生や中学生に、別に就職してほしいということではなく、「地元にもこんな面白い会社があったよ」と頭の片隅に置いておいてもらいたいんです。進学した後に、「子どもの頃に本当に面白い体験をしたな」と思い出してもらえるような体験を、たくさんさせてあげたいと思っています。当社では職場体験も受け入れていて、イベントなどで自分で作ったものを持って帰ってもらえると嬉しいですね。金属で作った将棋の駒なんかもあるのですが、これは遊びで作ったもので、小さくて並べるのが大変なんですよ。
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あなたのキャリアについて、インタビューさせていただけませんか?
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