PMOに向いている人とは?|採用・面接で見抜くための実践ガイド

PMO(プロジェクト・マネジメント・オフィス)は、近年ますますニーズが高まっている職種のひとつですが、必要とされる人物像は企業によって大きく異なり、書類や面接だけで適性を見極めるのが難しいポジションでもあります。
本記事では、110社以上の人材紹介会社を支援してきたセルバの目線で、人材派遣・紹介会社の担当者や採用担当者に向けて、「PMOに向いている人材の特徴」や「選考での見極めポイント」、「育成を見据えたポテンシャル採用の考え方」まで、現場で役立つ実践的な視点から解説していきます。採用力や提案力を高めるための参考として、ぜひご活用ください。
PMOに向いている人の特徴とは?


PMOは、プロジェクトの円滑な進行を裏から支える重要なポジションです。
しかし、専門性以上に「どんな人が向いているのか」が採用の成否を分ける職種でもあります。
ここでは、PMOに求められる具体的な役割や、実務において活躍できる人物像について、現場での実例も交えながら詳しく解説します。
PMOが活躍する業種・業界まとめ▼
分類カテゴリ | 業種の例 | 特徴・活躍シーン |
---|---|---|
IT・コンサル系 | ITベンダー コンサルティング会社 | SIer・複数プロジェクトの横断管理、WBSや進捗 ・課題管理のニーズが強い ・IT用語や開発工程への理解も必要 | ・PMOの主戦場とも言える領域
事業会社系(ユーザー企業側) | 金融 通信 流通 小売 医療など | 製造業・業務部門との調整や社内調整力が特に求められる ・「調整力×業務理解」が重要視される傾向 | ・自社内のDX推進、業務改革、新システム導入プロジェクトで活躍
公共・インフラ系 | 自治体 インフラ企業 | 官公庁・報告書作成・議事録・品質管理など、事務管理系の業務が多い ・「正確性・安定性・ルール準拠」が求められる | ・制度変更対応や大規模IT化のプロジェクトを支えるPMOが必要
業務内容と求められる役割
PMOは、複数のプロジェクトの全体を見ながら管理・支援し、進捗や品質を最適化していく役割を担います。
主な業務は、進捗管理、課題・リスクの把握と共有、関係者との調整、標準化されたドキュメントの整備、経営層へのレポート作成など多岐にわたります。
プロジェクトマネージャーの右腕として動くだけでなく、組織全体のプロジェクト運営を支える「縁の下の力持ち」とも言えます。
調整力や論理的思考力、事務処理能力など、地味ながらも高い汎用スキルが求められます。
なお、PMOは企業によって期待される役割が異なり、大きく以下の3タイプに分類されます。
- 戦略型PMO:経営層に近い立場で、プロジェクトポートフォリオ管理やKPI設計などを担う
- 支援型PMO:PMの補佐として進捗管理・課題整理・会議体運営などの実務を支援する
- 運用型PMO:各プロジェクトの運用ルールを定め、標準化や品質管理を推進する
人材会社がPMO人材を紹介する際は「どのタイプのPMOを求めているのか?」という前提理解が非常に重要です。
役割の期待値によって、求められる人物像や選考基準は大きく変わるため、しっかりと企業の意向とすり合わせするようにしましょう。
PMOに向いている人の特徴7選
PMOは、調整・進捗管理・文書作成など裏方的な業務を担う職種でありながら、プロジェクトの成否に大きく影響する存在です。
専門知識以上に、思考力や人間性、姿勢が問われるため、向き・不向きが分かれやすいです。
ここでは、実際の業務で重宝される「PMOに向いている人」の7つの特徴を、活用シーンの実例を交えながら紹介します。
先ほど提示した「戦略的PMO」、「支援型PMO」、「運用型PMO」に対してどの特徴が求められるかも明示していますので、参考にしてください。
各特徴の項目において、以下の基準で表記する。
◎:そのタイプのPMOで特に重要
〇:重要だが補完的でも対応可能
△:あれば尚可(タイプによっては不要)
①全体を俯瞰できる視野を持っている
PMOは個々のタスクに目を向けるだけでなく、複数のプロジェクトや関係者の動きを“俯瞰して把握”する必要があります。
たとえば、Aチームの作業がBチームの進捗に影響を及ぼすような場面で、全体スケジュールの遅延リスクを早期に察知して調整に入るのが、PMOの重要な役割です。
プロジェクト全体の構造、依存関係、優先順位などを整理しながら動ける人は、まさにPMOに向いているといえます。
②段取り力・計画力がある
スケジュールを引く、タスクの進捗を管理する、関係者との調整を前倒しで進める、といった“段取り力”はPMO業務の要です。
たとえば、新しいプロジェクト開始時にWBS(作業分解構図)を作成し、各担当者への説明や期日の設定をスムーズに行うことで、PMの負担を大きく軽減することもできます。
見通しを立て、必要な準備を早めに整えられる人は、プロジェクト全体の円滑な運営に貢献できます。
③調整力・巻き込み力に長けている
PMOはプロジェクトの橋渡し役でもあり、開発、営業、インフラなど、異なる部門間で認識が食い違う場面に向き合っていく必要があります。
たとえば、仕様変更が起きた際に各部署へ影響範囲をヒアリングし、対応方針を整理して関係各所に合意を得る、ということが必要になってきます。
論理性だけでなく信頼関係や説明力も問われるので、関係者を巻き込みながらスムーズに物事を進められる人は、PMOとして重宝されます。
④事務処理・文書作成に強い
議事録や週次レポート、課題管理表など、PMOの業務には正確な事務作業がつきものです。
たとえば、会議中の発言を整理し、要点を押さえた議事録をスピーディに共有できるだけで、関係者の認識のズレを防げます。
プロジェクトの現状を的確に文書化し、必要な情報を漏れなく届ける力は信頼性にもつながるので、地道で細やかな作業が苦にならない人は、大きな戦力になります。
⑤「目立たない役回り」に価値を感じられる
PMOは成果を直接出す役割ではなく、プロジェクトを裏方から支える存在で、PMや実行部隊が注目される中、PMOの働きは目立たないことも多くあります。
たとえば、プロジェクトが円滑に進んでいる背景には、進捗の遅れを事前に拾い上げ、関係者へリマインドを行うPMOの努力があることも。
目立たないポジションでも、人を支えることにやりがいや達成感を感じられる人は、長く活躍できる素質があります。
⑥論理的に物事を整理できる
プロジェクト内で発生する課題や報告内容を、論理的に整理し伝える力はPMOに不可欠です。
たとえば、課題管理表を更新する際に「事象→原因→対応策→期限→責任者」と整理して記録すれば、関係者が迷うことなく次のアクションに進めます。
感覚で動くのではなく、情報を構造化し、誰が見ても理解しやすい形に変換できる人は、PMOとして高く評価されるでしょう。
⑦変化や混乱に対して冷静に対応できる
プロジェクトには予定外の出来事がつきものですが、仕様変更、人的トラブル、納期の変更などのイレギュラー対応が求められる場面で、冷静に状況を整理できる人はPMOに向いています。
たとえば、メンバーの急な離脱があった場合でも、影響範囲を素早く洗い出し、代替案を提示しながらPMや関係者に状況を共有するという安定感のある行動が、現場の信頼を集めます。
選考で見抜くポイントとは?


PMOは専門知識や経験だけでなく、思考のクセや行動特性が成果に直結する職種です。
そのため、書類や面接を通じて「PMOに向いている人物かどうか」を見極める視点が重要になります。
ここでは、職務経歴書で注目すべきポイントや面接での質問例、適性を判断するためのチェックリストなど、選考現場で役立つ具体的な観点を解説します。
【書類選考】職務経歴書で注目すべきPMO適性のヒント
PMOの採用においては、技術的なスキルよりも「どのように働いてきたか」や「どんな思考で物事に取り組んできたか」といった職務経歴書の記述内容に注目することが重要です。
たとえば「プロジェクトの進捗管理」「関係部署との調整」「ドキュメントの整備」などといったキーワードがある場合、PMO業務に近い経験をしている可能性があります。
また、成果の内容だけでなく、どのような役割で携わったのかが明確に書かれているかも重要です。
「PMの補佐としてWBSの作成を担当」「課題管理表をもとに進捗報告をまとめた」など、具体的な業務範囲や工夫したポイントが記されていると、再現性のある適性が見えてきます。
複数の関係者と連携しながら動いた経験があるかどうか、トラブルや変化にどう対応したか、といった“調整力”や“冷静さ”に関わる記述も見逃せません。
書類上でPMO適性を見極めるには、支援役としての実績と、それを裏付ける具体性があるかがカギとなります。
【面接】PMO適性を見極める質問例と回答の見方
PMOはスキルよりも人柄や思考特性が成果に直結するため、面接では過去の行動や物事の捉え方を掘り下げる質問が有効です。
たとえば「進捗が遅れているチームにどう対応したか」「複数部署の意見が対立したとき、どうまとめたか」など、状況と対応を具体的に聞くことで、調整力や冷静さ、論理的思考力を見極められます。
逆に言えば、人柄や行動を掘り下げることが苦手で、数字でわかりやすく示せる実績や経歴がないと判断できない面接官だと、PMO適性を見極めることは難しいです。面接官の方も適性が問われます。
回答を見る際は、「感情ではなく事実をもとに動けているか」「相手の立場を理解した行動ができているか」に注目しましょう。
また「自分は裏方で支えることが好き」という価値観が垣間見える回答があると、PMO適性が高いと判断できます。
「地味な業務でも継続できるか」や「一貫性のある行動ができているか」などもポイントです。
PMOの仕事は短期的な成果が見えにくいため、自己主張よりも粘り強さや誠実さを大切にする人が向いています。
PMO人材はどこにいる?転職市場の最新動向と募集時の注意点
PMOの需要は、DX推進やプロジェクトの複雑化・多様化に伴って、近年非常に高まっています。
特にIT人材の不足が深刻な中、高度なマネジメント能力を備えたPMOは企業にとって希少価値の高い人材となっており、売り手市場であると言えます。
正社員の求人では、年収はおおむね560万円〜900万円程度がボリュームゾーンで、フリーランスでは平均1,000万円超というケースもあります。
特に大規模プロジェクトやコンサルティング案件に強いPMOは市場価値が高く、戦略的に採用されやすいです。
募集時の注意点としては、以下の3つが挙げられます。
- 求める経験の明確化:SE経験、業界(金融・医療・ERPなど)、コンサル経験など、どのバックグラウンドを重視するかを職務記述書で明示すること
- 期待役割の具体化:企業によりPMOに対して期待される役割が異なるため、業務範囲を明示すれば応募者とのミスマッチを防げる
- 給与基準の提示:年収幅が広いため、待遇レンジを明らかにすることで実務経験や市場ニーズに即した応募を促せる
人材会社としては、自社の登録者や案件にPMO志望者が増えてきているなら、こうした傾向を踏まえた採用支援コンテンツを打ち出すことで、企業への提案価値を高められます。
PMO適性チェックリスト(面接・書類選考用)
PMOと一口に言っても、企業が求める役割は「戦略型」「支援型」「運用型」で大きく異なります。
ここでは、タイプ別に注目すべきPMO適性を整理したチェックリストをご紹介します。
書類選考や面接時の評価軸として活用するほか、企業とのすり合わせや逆提案の材料としても有効ですので、ぜひご活用ください。
各チェック項目において、以下の基準で表記する。
◎:そのタイプのPMOで特に重要
〇:重要だが補完的でも対応可能
△:あれば尚可(タイプによっては不要)
チェック項目 | 戦略型 | 支援型 | 運用型 | 見るべきポイント | |
---|---|---|---|---|---|
1 | プロジェクト全体を俯瞰した経験があるか | ◎ | 〇 | 〇 | 複数部署・工程を意識した動きができるか |
2 | スケジュールやWBSの作成経験があるか | 〇 | ◎ | ◎ | 工程設計や納期意識、段取りの正確さ |
3 | 関係者との調整・合意形成を担った経験があるか | ◎ | ◎ | 〇 | 意見の対立をどう捌いたか、交渉経験 |
4 | 文書作成や会議運営などの実務に強みがあるか | △ | ◎ | ◎ | 議事録、レポート、会議体の運営実績など |
5 | サポート役として裏方に徹した経験があるか | △ | ◎ | ◎ | 他者貢献を評価されるタイプかどうか |
6 | 想定外の事態に冷静に対処した経験があるか | 〇 | ◎ | ◎ | トラブル時の判断力、報連相の速さ |
7 | 論理的に物事を整理し、説明できるか | ◎ | 〇 | 〇 | 思考の構造化、図解・要約スキル |
8 | 数値や事実ベースで行動・報告しているか | ◎ | 〇 | 〇 | 感覚よりデータを重視するタイプか |
9 | 並行案件の優先順位付け・管理経験があるか | 〇 | ◎ | ◎ | タスク管理能力、複数案件対応力 |
10 | 改善提案や業務の効率化に関与した経験があるか | ◎ | 〇 | ◎ | 現場課題の抽出と再設計に関心があるか |
PMOを社内で育てるという考え方


PMO人材は転職市場でも希少性が高く、即戦力の確保が難しいケースも増えています。
こうした中で注目されているのが「ポテンシャルを見極め、社内で育てる」というアプローチです。
ここでは、未経験人材の見極めポイントと実践的な育成方法について、具体的な観点から解説します。
中長期でプロジェクト体制を強化したい企業にとって、有効なヒントとなるはずです。
ポテンシャル採用で注目すべき要素
PMO人材の確保が難しい中で注目されているのが、「未経験者・微経験者をポテンシャル採用し、社内で育成すること」です。
即戦力に限らず、将来的にPMOとして活躍できる素質を持つ人材を見極め、計画的に育てていくことが、組織全体のプロジェクト力を底上げする有効な手段となります。
ポテンシャル採用で注目すべき要素は、まず「整理整頓力」や「構造的思考」があるかどうか。
過去の業務において、複雑な情報をまとめたり、資料をわかりやすく整えたりした経験があれば、PMOの基礎的な素質が備わっている可能性があります。
また、「他者をサポートする姿勢」や「責任感の強さ」も見逃せません。
チームの中で自然と調整役を担っていたり、誰かの仕事が円滑に進むように先回りして行動していた経験があれば、PMOとしての適性が高いと考えられます。
現時点でPMOの経験がなくても、こうした素養を持つ人材に対しては、早期にOJTやロールモデルとなる先輩の配置を行うことで、戦力化を図ることが可能です。
社内教育のポイント5選
①「役割の意義」と目的を明確に伝える
PMOは裏方の役割が多いため、業務の全体像や意義が見えづらく、モチベーションが下がりがちです。
育成の第一歩は、「PMOの仕事がプロジェクト成功にどう貢献しているか」を本人にしっかり伝えること。
たとえば「会議体の設計が意思決定のスピードを高めている」「進捗報告が経営判断を支えている」など、具体例を交えて説明しましょう。
自分の仕事が、誰かの意思決定や行動を支えているという実感を持たせることが、成長の加速につながります。
②ドキュメント管理・進捗管理の“型”を教える
PMOに求められるドキュメント作成力は、センスではなく“型”で鍛えることができます。
WBS、議事録、課題管理表などのフォーマットとその使い方を丁寧に教え、優れた過去資料を見本として提示しましょう。
また、チェックポイント(抜け漏れのない構成や見やすいレイアウトなど)を明示することで、自走できる判断基準が身につきます。
「なぜこの情報が必要か?」という背景を説明することで、理解と応用力を同時に育てられます。
③ロールプレイ形式で“調整業務”を体感させる
調整業務は座学では身につきにくいため、実践的なロールプレイが効果的です。
たとえば、架空の案件を題材に「営業・開発・経営層の三者が意見対立している」という状況を設定し、調整役としての立ち回りを経験させましょう。
重要なのは、ただ“中立に立つ”のではなく、「誰の何を解決するか」を言語化する思考訓練をさせること。
経験が浅くても、こうしたシミュレーションを通じて交渉力や俯瞰力を育むことができます。
④PMやリーダーとペアを組ませて実務で学ばせる
実務に勝る教育はありません。PMやリーダーの近くに配置し、実際の会議同席や議事録作成、WBS作成補助などから段階的に任せていくのが理想です。
ポイントは、その仕事の目的を常に共有すること。
「なぜこの順番で動くのか」、「誰のための資料なのか」などをその都度伝えることで、単なる作業ではなく“考える業務”に変わります。現場の温度感やタイミング感覚も、肌で学ばせる意識が重要です。
⑤定期的なフィードバックと内省の時間を設ける
PMO業務は成果が見えづらいため、成長実感を持たせる工夫が必要です。
週次や月次で「どんな動きが役立ったか」「どこに改善余地があったか」を一緒に振り返る時間をつくりましょう。
本人の“気づき”を引き出す問いかけが内省の質を高めます。
例えば「今回はこの方法が上手くいったね。ではこの方法の中で、相手にとって特に印象的だった場面はどこだったと思う?」といったように「行動に対する評価+次の一手の提案」という形でフィードバックしてみましょう。
小さな成功体験を積み重ねることが、PMOとしての成長を支えます。
まとめ
ここまで、PMOに向いている人の特徴や書類・面接での判断ポイント、社内育成の考え方まで実践的に解説しました。
人材会社として企業にPMO人材を提案する際は、適性のある候補者を見抜く視点を持つことで、マッチングの精度が大きく向上していきますので、ぜひ繰り返し見て参考にしてください。
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