アパホテルのインバウンド対応とは?多言語化・ホテルDXの取り組みを解説

訪日外国人旅行者の増加を受け、ホテルや観光施設では「どう集客するか」だけでなく、増えた利用者を限られた人員でどのように受け入れるかが重要なテーマになっています。
日本政府観光局(JNTO)によると、2025年の訪日外客数は4,268万人を超え、過去最多となりました。
2026年7月には約344万人となり、7月として過去最高を記録しています。
利用者が増えれば、予約、チェックイン、館内案内、問い合わせ、チェックアウトなど、ホテルのあらゆる業務の負担も大きくなります。そこで参考になるのが、全国でホテルを展開するアパホテルの取り組みです。
アパホテルでは、多言語での情報提供だけでなく、アプリ、自動チェックイン機、デジタルサイネージなどを組み合わせ、利用者自身が迷わず手続きを進められる環境づくりを進めています。
この記事では、ホテル・観光施設などの事業者やWeb・システム担当者に向けて、アパホテルのインバウンド対応を「ホテルDX」の視点から分析します。

インバウンド対応が「接客」だけでは難しくなっている

多言語対応だけでは限界がある
インバウンド対応というと、英語や中国語を話せるスタッフの配置、多言語メニューの用意などをイメージするかもしれません。もちろん、それらも重要です。
しかし、利用者数が増え続ける中で、すべてをスタッフによる接客で解決しようとすると現場の負担が大きくなります。
国の方針も「省人化・IT活用」へ
観光庁も、宿泊業について人手不足への対応を課題として挙げ、自動チェックイン機やAIコンシェルジュなどを活用した省人化事例を紹介しています。
さらに、宿泊業におけるIT活用によって、生産性向上や経営高度化を進める方針を示しています。
これからのインバウンド対応の考え方
これからのインバウンド対応では、「外国語を話せるスタッフを増やす」だけではなく、「スタッフに聞かなくても利用できる仕組みをつくる」という発想が重要になります。
アパホテルの取り組みも、この考え方で見ると理解しやすくなります。
多言語表示とピクトグラムで「直感的に理解できる」環境

近年開業したアパホテルでは、日本語・英語・繁体字・簡体字・韓国語の5言語に対応した「アパデジタルインフォメーション(ADI)」が導入されています。
ADIでは、客室のテレビ画面から館内案内や大浴場の混雑状況など、宿泊中に必要な情報を確認できます。日本語に不慣れな外国人宿泊者でも、自分が理解しやすい言語で情報を確認できる仕組みです。
館内の案内には、ISO規格やJIS規格に準拠したものに加え、アパホテルが独自に開発したピクトグラムも使われています。
文字だけで説明するのではなく、設備や場所をイラストで示すことで、案内表示を見たときに何を意味しているのか判断できるようにしています。
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アプリとセルフチェックインによる業務効率化

トリプルワンシステムの概要
アパホテルのDXで特徴的なのが「トリプルワンシステム」です。
トリプルワンシステムは、
- ワンステップ予約(アプリ予約)
- 1秒チェックイン
- 1秒チェックアウト
によって、予約からチェックアウトまでの手続きを簡略化する仕組みです。
ホテルでは、宿泊者が到着する時間帯が重なるとフロントが混雑します。特に外国人旅行者の場合は、宿泊者情報の確認や案内などに時間がかかることもあります。
アパホテルでは、アプリやセルフチェックイン機などを活用し、宿泊者自身で手続きを進められる仕組みを整えています。
省人化と多言語対応の同時実現
セルフチェックインのメリットは、単に手続き時間を短縮できることだけではありません。
従来のフロントでは、スタッフが宿泊者情報を確認し、館内の説明などを行うため、外国人宿泊者には言語に合わせた対応が必要になります。
セルフチェックイン機を利用すれば、画面に表示された案内に沿って宿泊者自身が手続きを進められます。
スタッフとの会話に頼る場面が減るため、言語の違いによる双方の負担も軽減できます。
また、チェックイン業務をすべてスタッフが担当する必要がなくなれば、混雑時にフロントへ配置する人員の負担も抑えられます。
利用者に応じた情報表示の最適化
近年のアパホテルでは、チェックイン機でパスポートを読み取った際、表示言語を切り替える機能も導入されています。
一般的な多言語対応では、利用者自身が言語切り替えボタンを探し、自分の言語を選択する必要があります。
パスポートの情報をもとに表示言語を切り替えられれば、利用者が操作方法を理解する前に、自分に合った言語で案内を確認できます。
こうした考え方は、ホテルのチェックイン機だけでなくWebサイトにも応用できます。
例えば、ユーザーが必要とする情報を分かりやすい場所に配置する、入力内容に応じて次に必要な項目だけを表示するといった設計によって、利用者自身が迷わず操作できる画面を作れます。
館内情報のデジタル化による問い合わせ削減
ホテルでは、
- 朝食時間
- 大浴場の場所
- チェックアウト時間
など、宿泊者から同じ内容の問い合わせを繰り返し受けます。
一件ずつの対応時間は短くても、宿泊者数が多くなればフロントスタッフの負担は大きくなります。
外国人宿泊者の場合は、言語の違いによって説明に時間がかかることも考えられます。
例えば、朝食会場や館内設備について知りたいときに、毎回フロントへ電話したり直接質問したりする必要がなく、客室などから必要な情報を確認できます。
利用者にとっては必要な情報を自分のタイミングで調べられ、スタッフにとっては繰り返し発生する定型的な問い合わせを減らせます。
アパホテルの事例から分かるインバウンドDXの本質

問い合わせを減らす設計思考
外国人利用者が増えた場合、「外国語に対応できるスタッフを増やす」「問い合わせが来たら翻訳ツールを使う」といった方法が一般的ですが、問い合わせ件数そのものが増えれば、それだけスタッフの対応時間も増えてしまいます。
そこで考えたいのが、問い合わせを受けてから対応するだけではなく、利用者が自分で必要な情報を確認できる環境を作ることです。
「朝食は何時までなのか」「大浴場はどこにあるのか」といった定型的な質問であれば、スタッフが毎回答えなくても、必要な情報が分かりやすく表示されていれば解決できます。
問い合わせ対応を効率化するだけでなく、そもそも問い合わせをしなくても済む状態を作ることも、業務効率化につながります。
多言語化は「翻訳」ではなく「情報設計」
Webサイトや館内案内を外国人向けにする場合、日本語の文章をそのまま外国語へ翻訳するだけでは、使いやすいとは限りません。
文章量が多ければ目的の情報を探すのに時間がかかり、スマートフォンの小さな画面ではさらに読みにくくなります。
そのため、
- 必要な情報にすぐ到達できるか
- スマートフォンでも読みやすいか
- 写真やピクトグラムだけでも内容を把握できるか
- 操作方法が言語に依存しすぎていないか
といった点まで考える必要があります。
例えば、「大浴場」という文字を複数の言語で並べるだけでなく、ピクトグラムを併用すれば、文章をすべて読まなくても何の設備なのか判断しやすいです。
アパホテルが多くの宿泊者に選ばれている理由

顧客体験は一連の流れでつながっている
ホテルを利用するまでには、
という一連の流れがあります。
例えば、検索からWebサイトへアクセスして希望するホテルを見つけられても、予約画面が分かりにくければ途中で離脱する可能性があります。
逆に、Web上では簡単に予約できても、ホテル到着後のチェックインに時間がかかったり、館内設備の使い方が分からなかったりすれば、宿泊時の満足度は下がります。
アパホテルでは、Webやアプリからの予約、セルフチェックイン、客室での情報提供、チェックアウトまで、それぞれの場面でデジタル技術を活用しています。
Webと現場の連携不足が生む課題
インバウンド対応では、Webサイトだけを多言語化しても十分とはいえません。
例えば、Webサイトでは外国語で予約できても、ホテルに到着した後の案内が日本語だけであれば、チェックインや館内利用で困りますし、ホテル内の設備や案内が充実していても、予約サイトの操作方法が分かりにくければそもそも予約までたどり着けません。
これはホテルに限った話ではありません。
店舗や観光施設などでも、Webで調べるところから予約、来店、サービス利用までの流れを確認すると、利用者がどこで迷っているのか、どこでスタッフへの問い合わせが発生しているのかを見つけやすくなります。
まとめ
- アパホテルは、アプリやセルフチェックイン、多言語表示、ピクトグラムを組み合わせて、宿泊者の利便性と業務効率化を両立しています。
- インバウンド対応では、単なる翻訳ではなく、利用者が迷わず必要な情報へたどり着ける情報設計が欠かせません。
- Webサイト、予約、チェックイン、館内案内までを一連の顧客体験として設計することで、問い合わせ削減や利用満足度の向上につながります。
インバウンド対応を進める際は、外国語対応だけを増やすのではなく、利用者がどこで迷い、どこでスタッフ対応が発生しているのかを整理したうえで、Webと現場を含めて改善していく必要があります。
今回ご紹介した内容が、皆様のWeb活用や発信のヒントになれば嬉しいです。
他にもWeb開発や集客に関する記事を多数掲載していますので、ぜひご覧ください。
