気になったので人材紹介会社23社のAIの取り組みをIR資料からまとめてみた

こんにちは、代表の中山です。
「AIで転職エージェントは要らなくなる」最近そんな話をよく聞くようになりました。
実際のところ、当事者である人材紹介会社自身はAIをどう見ているのでしょうか。
脅威と捉えて身構えているのか、チャンスと捉えて攻めているのか、それとも意外と何も語っていないのか。
気になったので、上場している人材関連23社の直近の決算説明資料(2026年公表の最新分)を読み比べてみました。
読んでみると、各社のスタンスの違いが想像以上にくっきり分かれていて面白かったので、まとめてみます。
会社への説明責任を負うIR資料は、プレスリリースよりも「本音の温度感」が出やすい場所でした。
※数値・引用は各社の決算説明資料や説明会書き起こしに基づきますが、あくまで僕個人の調査メモです。正確な情報は必ず原本をご確認ください。
AIに対するスタンスで4タイプに分かれる
今回取り上げる23社は、AIをどんなスタンスで扱うかで大きく4タイプに分かれます。
タイプA:AI事業変革型
AIを単なる業務効率化の手段ではなく、人材ビジネスそのものを変える技術として位置づけているタイプです。
マッチング、求人検索、求職者対応などにAIを深く組み込み、サービスの提供方法そのものを変えようとしています。
独自データや既存サービスとAIを組み合わせ、新たな競争力を作ろうとしている企業が中心です。
以下の企業が該当します。
- リクルート
- パーソル
- ディップ
- ビジョナル
- エン(旧エン・ジャパン)
- メドレー
- ポート
- ギークス
- オープンワーク
- MS-Japan
タイプB:AI成長加速型
既存の人材サービスを軸にしながら、AIを成長を加速させる武器として積極的に活用するタイプです。
マッチング精度の向上、スカウトや求人作成の効率化、ユーザー体験の改善などにAIを取り入れています。
事業構造を大きく変えるというより、AIによって既存サービスの競争力を一段高めようとする姿勢が特徴です。
以下の企業が該当します。
- ワンキャリア
- ウォンテッドリー
- アシロ
- ディスラプターズ
- アクシス
タイプC:AI活用・市場追い風型
AIを事業戦略の中心に置くというより、業務効率化のツールや市場環境の追い風として捉えているタイプです。
社内業務への生成AI活用や、AI・DX人材の採用需要増加などを成長機会として見ています。
AIへの対応は進めているものの、現時点では既存の事業モデルを大きく変えるほどの位置づけではありません。
以下の企業が該当します。
- クイック
- フォースタートアップス
- ギークリー
- ムービン
- 学情
- アトラエ
タイプD:AI非前面型
決算説明資料を見る限り、AIを経営戦略上の重要テーマとして前面には出していないタイプです。
AIについてほとんど触れていない企業もあれば、質疑応答などで限定的に言及する程度の企業もあります。
AI活用よりも、人による支援や顧客との関係性など、従来からの強みを重視している企業も見られます。
以下の企業が該当します。
- キャリアデザインセンター(質疑応答でのみ言及)
- スポーツフィールド(「アナログの深い関係性」を差別化要因として強調)
タイプA:AIで事業構造まで変える「AI事業変革型」
AIを単なる業務効率化の手段ではなく、人材ビジネスそのものを変える技術として位置づけている企業です。
求人検索やマッチング、求職者対応などにAIを深く組み込み、サービスの提供方法そのものを変えようとしています。
独自データとAIを組み合わせ、新たな競争優位を作ろうとしている企業が多いのも特徴です。
リクルートHD(6098)
〔2026年3月期通期(26/5)・27年3月期Q1(26/8)説明会資料〕
事業領域
Indeed・Glassdoorを中心としたグローバル求人プラットフォームに加え、国内の人材紹介、派遣などを幅広く展開しています。
AIへのスタンス
23社の中でも特にAIへの姿勢が強い企業です。出木場CEOは「昨年はAIで色々やっている話だったが、今回は実際に数字として実績が出ている」と説明。約680億ドルの採用オートメーション市場の取り込みを狙っています。
一方、「AIによって失業者が急増する」といった見方に対しては、Indeedが保有するデータをもとに明確に反論しています。
主な取り組み
AI機能を組み込んだ「Premium Sponsored Jobs」では、採用時間を50%短縮し、米国での求人単価を35%押し上げる効果が出ています。
このほかAI Sourcing、AI Screening、AI求人票生成などを展開。
「ボタン1回で仕事が決まる世界(Simplify Hiring)」を掲げ、2031年までに採用時間を半減させる目標を打ち出しています。
パーソルHD(2181)
〔FY2025通期(26/5)・FY2026 Q1(26/8)決算説明資料〕
事業領域
テンプスタッフなどの派遣事業に加え、「doda」「doda X」などの人材紹介・求人サービス、BPO、IT、APAC事業を展開しています。
AIへのスタンス
「AIは変化を成長につなげるチャンス」と明記し、FY2026を「AI・システム投資先行の1年」と位置づけています。
特徴的なのは、AI投資を抽象論で終わらせず、投資額と期待リターンまで数字で示していることです。
主な取り組み
3年間でAIに190億円を投資し、330〜430億円のリターンを見込んでいます。
さらに、AIが24時間365日マッチングを行い、平均24分で仕事を紹介するフランスのGojobを買収。国内の派遣事業でも実証実験を開始しています。
dodaではAIマッチングモデルを段階的に導入し、「支援人数」と「決定率」の両方を高める方針です。
ディップ(2379)
〔2026年2月期通期(26/4)・27年2月期Q1(26/7)決算説明資料〕
事業領域
「バイトル」「スポットバイトル」などの非正規雇用向け求人サービスに加え、看護・介護領域の人材紹介も展開しています。
AIへのスタンス
決算説明資料に「AI時代における中期成長戦略」という章を設けています。
冨田社長は、インターネットの普及を事業成長につなげてきたのと同じように、「AIの劇的な進化をビジネスチャンスに変える」と説明。
仕事探しを「検索するもの」から「AIと対話して探すもの」へ変えようとしています。
主な取り組み
対話型AI「dip AI AGENT」はユーザー約9.5万人まで拡大。今年度中の課金化を予定し、将来的には人材紹介に近い成果課金モデルへの展開も想定しています。
また、約2,300人の営業担当者が集める求人情報を、汎用AIにはない競争力の源泉と位置づけています。
社内業務でもAIを活用し、年間50万時間の業務効率化を目指しています。
ビジョナル(4194)
〔2026年7月期3Q決算説明資料・決算FAQ(26/6)〕
事業領域
ハイクラス向けダイレクトリクルーティング「ビズリーチ」と、HR SaaS「HRMOS」を展開しています。
AIへのスタンス
「AIが進化するほど、自社が保有するデータの価値が高まる」という考え方です。
汎用AIによって人材サービスが代替される可能性についてもFAQで正面から回答。
マッチングではデータが決定的に重要であり、日本では完全自動化よりも、AIと人間が役割分担するハイブリッド型が現実的としています。
主な取り組み
レジュメの自動作成、最短30秒でのAI求人作成、検索条件のAI提案などを実装しています。
生成AI関連特許についても55件を保有し、「生成AI特許登録数で日本1位」と資料内で説明しています。
さらに、AI活用を前提として組織や業務フロー自体を再設計する専任組織も設置しています。
エン(旧エン・ジャパン、4849)
〔2026年3月期通期(26/5)・27年3月期Q1(26/8)決算説明資料〕
事業領域
「エン転職」「ミドルの転職」「AMBI」などの求人サービスに加え、「エン エージェント」「en world」などの人材紹介を展開しています。
AIへのスタンス
構造改革後の再成長戦略として、「入社成功=ディープデータ×AI」を掲げています。
「AI×HR」を中長期の成長エンジンと位置づけ、2028年3月期までに競争優位を確立するという具体的な期限まで設定しています。
主な取り組み
グループ会社のエン PeopleXと連携し、「AI面接」「AI面談」「AIロープレ」などを展開しています。
また、リファレンスチェックサービス「back check」のデータとAI面接を組み合わせ、採用だけでなく「入社後に活躍出来るか」まで踏み込もうとしています。
Q1だけでも既存事業から300件を超える商談連携が発生しました。
メドレー(4480)
〔2026年12月期Q2決算説明資料(26/8/13)〕
事業領域
医療・介護・保育などの専門職向け求人サービス「ジョブメドレー」を展開。登録事業所は45.7万件で、約4割のシェアを持っています。
AIへのスタンス
医療AI市場が現在の24億円から10年後には約2.1兆円まで拡大するという独自試算を示しています。
AIを個別機能ではなく、FY2029売上1,000億円という中期目標を実現するための前提条件として位置づけています。
主な取り組み
人材領域では、面接の自動文字起こしや履歴書のデータ化などを行う生成AI搭載の「ジョブメドレーATS」を2026年4月にリリースしました。
医療領域では「MEDLEY AI CLOUD」を展開。カルテ入力時間を90分から20分へ短縮するなど、AI機能そのものを従量課金で提供し始めています。
ポート(7047)
〔2026年3月期通期(26/5)・27年3月期Q1(26/8)決算説明資料〕
事業領域
「キャリアパーク」などの新卒向け人材紹介を中心に、エネルギー領域の成約支援事業も展開しています。
AIへのスタンス
今回調べた23社の中でも、AIに対する危機感を最も強く表に出している企業の一つです。
決算資料には「AI戦略:AI代替性への基本認識と対応方針」という専用セクションを設け、「一切の楽観視を排し、ビジネスモデルの抜本的改革が必要」と明記しています。
一方で、AIを脅威として見るだけではなく、AI駆動型経営への転換そのものを新たな成長エンジンにしようとしています。
主な取り組み
キャリアアドバイザー業務では「完全AI駆動型オペレーション」を志向し、音声AIだけで完結する24時間営業のテスト運用も始めています。
社内では独自AI基盤「ENGINE」を使い、契約書チェック、議事録作成、仕訳検証などを効率化しています。
さらに、AIに代替されにくい友人紹介や学校経由などのリアルチャネル比率を40%まで引き上げる方針も掲げています。
AI活用と「AIに代替されにくい領域」の強化を同時に進めている点が特徴です。
ギークス(7060)
〔2026年3月期通期決算説明資料(26/5)ほか〕
事業領域
ITフリーランス向けエージェント「geechs job」を展開しています。
AIへのスタンス
生成AIによって単純なコーディング業務の需要が減る可能性を認めた上で、PM・PMO・AI駆動開発など、より上流の領域へシフトしています。
企業としても存在意義を「日本をDX・AXでアップデートする会社」と再定義。AXは「AI Transformation」を意味します。
主な取り組み
統合型AIエージェント「GEECHS AI」のベータ版を開発し、マッチングやレジュメ作成、企業への提案などを自動化しています。
社内ではAI活用度を人事評価に組み込み、フリーランスに対してもAX人材へのリスキリングを支援しています。
オープンワーク(5139)
〔2026年12月期Q2決算説明資料(26/8/10)〕
事業領域
社員クチコミサイト「OpenWork」を基盤にしたダイレクトリクルーティングを展開。2026年4月にはBNGパートナーズを買収し、人材紹介にも進出しています。
AIへのスタンス
大澤社長は「AIはオープンワークにとって非常に追い風」と説明しています。
特徴的なのが、社員クチコミという独自データそのものをAI時代の競争力と捉えていることです。
データはペイウォールで保護されており、自社だけがAIで解析出来ることを強みとしています。
主な取り組み
チャット型AI求人検索、スカウト文面作成AI、機械学習による求人ランキングなどを展開しています。
2030年計画でも「マッチングAI開発」を柱の一つに設定しています。
M&Aについても、AI開発力やデータ資産を強化出来る案件を重視し、最大100億円規模の投資を想定しています。
MS-Japan(6539)
〔2026年3月期通期(26/5)・27年3月期Q1(26/8)決算説明資料〕
事業領域
経理、法務、弁護士、会計士など、管理部門・士業に特化した人材紹介を展開しています。
AIへのスタンス
事業モデルを「人材×メディア×AIの統合モデル」と定義しています。
30年間蓄積してきたマッチングデータを学習させたAIモジュールを競争力の核とする一方、AIによる業務自動化でジュニア層の求人が減っているというマイナス面についても開示しています。
主な取り組み
コンサルタントが行う人材の検索やスクリーニングを半自動化するCopilot型AIマッチングモジュールを2025年12月末から試験運用しています。
生成AI検索からの流入を意識したGEO対策にも取り組み、登録者獲得コストの削減を進めています。
タイプB:AIで既存事業を伸ばす「AI成長加速型」
人材サービスの基本的な形は維持しながら、AIを成長スピードを高める武器として積極的に使っている企業です。
マッチング精度の向上、求職者体験の改善、業務効率化などにAIを組み込み、既存サービスの競争力を一段引き上げようとしています。
ワンキャリア(4377)
〔2026年12月期Q2決算説明資料(26/8/13)〕
事業領域
新卒向け求人メディア「ONE CAREER」を中心に、中途採用、高校生採用にも領域を広げています。
AIへのスタンス
AIを「中長期の成長と競争優位の源泉」と位置づけ、プロダクトと社内業務の両方で活用を進めています。
AIによって採用人数が大幅に減るという見方については極端な事例と整理し、宮下社長は「むしろAIはチャンス」と説明しています。
主な取り組み
エントリーシートを生成する「ESの達人」、AI面接練習サービス「就トレ」、就活特化型の「ワンキャリアAI」などを展開しています。
「就トレ」は累計10万回以上利用されています。
また、AIガバナンス委員会の設置予定や、利用するLLMとしてClaude、Geminiの名前まで開示しています。
ウォンテッドリー(3991)
〔2026年8月期Q3決算説明資料(26/7)〕
事業領域
企業のビジョンやカルチャーへの共感を軸に採用を行うビジネスSNS「Wantedly」を運営しています。
AIへのスタンス
減収局面にある中でも、「自社DB×生成AIによる新しいプロダクト価値の創出」を成長戦略の柱に据えています。
守りのコスト削減というよりは、AIによって新しいユーザー体験を作ろうとする攻めの姿勢が目立ちます。
主な取り組み
採用担当者が候補者を探す「ソーシングAIエージェント」を2025年10月にリリース。
求職者がAIと対話しながら求人を探せる「キャリアAIエージェント」を2026年前半に提供しています。
アシロ(7378)
〔2026年10月期2Q決算説明資料(26/6)〕
事業領域
リーガルメディア「ベンナビ」が主力で、HR領域では弁護士、士業、法務人材などの紹介を展開しています。
AIへのスタンス
「AIをデータ基盤として活用し、全事業を連動させることで高成長を目指す」という方針です。
自社SaaSについて「AIによる代替が困難なリーガルSaaS」と表現しており、AI活用だけでなくAI時代の防御力も意識しています。
主な取り組み
中小企業向けのAIリーガルテック「LegalBase」を2026年2月に開始し、イオン保険サービスやGMOなどとの提携を通じて拡販しています。
一方、人材紹介事業そのものについては具体的なAI施策の開示はまだ限定的です。
ディスラプターズ(6538・旧キャリアインデックス)
〔2026年3月期通期決算説明資料(26/5)〕
事業領域
求人一括検索、人材紹介に加え、SaaSを中心としたDX事業を展開しています。
AIへのスタンス
AIをチャンスだけでなく、既存事業の前提を変える脅威としても捉えている珍しい企業です。
ホワイトカラー求人はAIの影響を受けやすいと分析し、需要拡大が見込まれるエッセンシャルワーカー領域へ事業をシフトしています。
DX事業についても「AI進化により従来型SaaSの競争環境が厳しくなる」と説明しています。
主な取り組み
自社でAIプロダクトを大量に投入するというよりも、AIの影響を受けにくいエッセンシャルワーカー領域への進出や、SaaSから課題解決型ソリューションへの転換を進めています。
アクシスコンサルティング(9344)
〔2026年6月期3Q決算説明資料(26/5)+26/8/13リリース〕
事業領域
コンサルタントに特化したハイエンド人材紹介と、フリーコンサルタントのスキルシェア事業を展開しています。
AIへのスタンス
決算資料では、AI・DX人材需要を「全社の成長を牽引するドライバー」と位置づけています。
また、「AIはすべてのビジネスパーソンの基礎能力になる」という認識を示しています。
主な取り組み
2026年8月には「全社AI変革プロジェクト」を始動しました。
約200人の全社員を対象にAI研修を行うほか、AIエージェント開発コンテストを実施。AI活用状況を人事評価にも反映する方針です。
タイプC:AIを効率化や需要増に生かす「AI活用・市場追い風型」
AIを経営戦略の中心に据えるというより、既存業務を効率化するツール、あるいは人材需要を拡大させる追い風として捉えている企業です。
AI活用は進めているものの、現時点では事業モデルそのものを大きく変えるほどの位置づけではありません。
クイック(4318)
〔2026年3月期通期(26/5)・27年3月期Q1(26/7)決算説明資料〕
事業領域
建設、IT、製造、医療、保育などの専門職に特化した人材紹介・派遣に加え、「日本の人事部」を運営しています。
AIへのスタンス
「人材業界においてAIはチャンスであり、AIによる代替リスクは限定的」と説明しています。
専門職の転職では、今後も人間のプロが間に入る価値が残るという考え方です。
主な取り組み
「AI面接」などの新しい商材の受注が増えています。
中期3カ年で予定する97億円の投資にもAI・システム関連投資を含めていますが、独自AIプロダクトなどの具体的な開示はまだ限定的です。
フォースタートアップス(7089)
〔2027年3月期Q1決算説明資料(26/8)〕
事業領域
スタートアップ企業に特化し、CxOやハイクラス人材を中心とした人材紹介を展開しています。
AIへのスタンス
AI関連人材の紹介単価上昇が業績の追い風になっています。
一方、志水CEOは「AI時代でも経営や人生の意思決定におけるラストワンマイルは人の力」と説明。AI需要は取り込むものの、人間による支援価値も残るという立場です。
主な取り組み
AI関連人材の需要を積極的に取り込みながら、社内でもAIを使ってマッチング効率を高めています。
ただし、現時点では独自AIプロダクトなどの具体的な開示はありません。
ギークリー(505A)
〔2026年5月期通期決算説明(26/7)〕
事業領域
IT、Web、ゲーム業界に特化した完全成果報酬型の人材紹介会社です。
AIへのスタンス
AIによってIT人材需要が減るというよりも、AIを使いこなせる高スキル人材の価値が高まると見ています。
社長も「AIはむしろ売上アップのきっかけ」と説明しており、ハイレイヤー人材紹介を拡大する追い風として捉えています。
主な取り組み
基幹システム「OLG」と過去のマッチングデータをAIモデルと組み合わせています。
一方、決算説明資料での具体的なAI施策の開示はまだ限定的です。
ムービン(421A)
〔2026年12月期Q1決算説明資料(26/5)〕
事業領域
コンサルティング業界に特化したハイエンド人材紹介を展開しています。
AIへのスタンス
「AIコンサル需要の急拡大」を明確な業績の追い風として位置づけています。
AIによる仕事の代替よりも、日本では人口減少による人材不足の方が大きな構造要因になるという考え方です。
主な取り組み
生成AIを活用することで、新人アドバイザーでもベテランに近いサービスを提供出来る体制づくりを進めています。
その結果、登録者の応募率が18%改善したとしています。
学情(2301)
〔2026年10月期中間決算説明資料(26/6)〕
事業領域
「Re就活」「Re就活エージェント」「就職博」など、20代や第二新卒向けの採用サービスを展開しています。
AIへのスタンス
決算説明資料ではAIへの言及は少なく、全社的なAI戦略というよりも、個別サービスを強化するための機能の一つという位置づけです。
主な取り組み
「Re就活30」「Re就活テック」に搭載したAIヘッドハンティング機能が、高年収帯のマッチングで成果を上げています。
関連する売上は前年同期比54.8%増となっています。
アトラエ(6194)
〔2026年9月期3Q決算短信・業績予想修正(26/7〜8)〕
事業領域
IT・Web人材向け求人メディア「Green」と、組織改善SaaS「Wevox」を展開しています。
AIへのスタンス
AIによるIT人材需要の拡大を追い風と捉えながら、社内でも生成AIを活用して生産性向上を進めています。
ただし、決算資料でAIを大きな経営テーマとして打ち出しているわけではありません。
主な取り組み
Greenでは、生成AIによる求人のレコメンド理由生成やプロフィール自動作成などを提供しています。
現時点では、AIによる事業モデル変革というより既存サービスの機能強化が中心です。
タイプD:AIを経営戦略の前面に出さない「AI非前面型」
決算説明資料を見る限り、AIを重要な経営テーマとして大きく打ち出していない企業です。
AI活用をしていないとは限りません。実際には社内でAI活用を進めている企業もあります。
ただし、少なくとも投資家向けの説明では別の強みを前面に出しています。
キャリアデザインセンター(2410)
〔2026年9月期2Q・3Q決算説明会資料+質疑応答(26/4・26/7)〕
事業領域
「type」「女の転職type」「type転職エージェント」を展開し、ITエンジニアや女性の転職支援を得意としています。
AIへのスタンス
決算説明資料本体ではAIについてほとんど触れていませんが、2Qの質疑応答では「AI推進の専門部署を昨年立ち上げた」と説明。
採用計画もAI活用を前提に見直しており、AIによるマッチング精度向上を重要な成長ドライバーとしています。
主な取り組み
AIへの取り組み自体が弱いというより、IRではAI戦略を前面に出していない企業と見る方が自然です。
スポーツフィールド(7080)
〔2026年12月期Q2決算説明資料(26/8)〕
事業領域
体育会学生やアスリートに特化した人材紹介、就職イベント「スポナビ」などを展開しています。
AIへのスタンス
今回確認した決算説明資料53ページには、「AI」という言葉が一度も登場しませんでしたが、「アナログの深い関係性」「1on1の濃い面談」といった人間同士の接点を差別化要因として強調しています。
23社の中でも、AIではなく人による関係構築を最も前面に出している企業と言えそうです。
23社を比べて見えてきた3つの共通点
23社の資料を読み比べると、会社ごとの温度差はかなりありましたが、業界全体に共通する動きも見えてきます。
AI時代ほど「独自データ」が重要になっている
AIに積極的な企業の多くが強調していたのが、「自社だけが持っているデータ」です。
ビズリーチであれば長年蓄積してきた採用・転職データ、オープンワークであれば社員クチコミ、ディップであれば約2,300人の営業担当者が集める求人情報があります。
各社の考え方はかなり共通していて、「汎用AIそのものは誰でも使える。だからこそ、『自社にしかないデータをAIに学習・分析させること』が競争優位になる」という考え方です。
逆に考えると、独自データをほとんど持っていない人材会社にとっては、AI時代の差別化が難しくなる可能性があるということです。
求人検索は「検索する」から「AIに相談する」へ変わり始めている
もう一つ目立ったのが、対話型AIエージェントの増加です。
ディップ、ウォンテッドリー、オープンワーク、ワンキャリアなどでは、求職者が条件を入力して求人一覧から探すだけではなく、AIと会話しながら仕事を探せるサービスが登場しています。
従来は、
「条件を入力する」→「求人一覧を見る」→「自分で比較する」
という流れでした。
これからは、
「こんな仕事がしたい」→「AIに相談する」→「AIが候補を提案する」
という形が増えていくかもしれません。
求人サービスのUIそのものが「検索型」から「対話型」へ変わり始めているのは、人材業界にとってかなり大きな変化だと感じました。
AIへの危機感は、扱う人材によってかなり違う
今回特に興味深かったのが、会社が扱っている人材の領域によってAIへのスタンスが違うことです。
大量の求職者と求人をマッチングする企業や、ホワイトカラー領域を扱う企業ほど、AIによる事業構造の変化を強く意識しています。
ポートが「一切の楽観視を排し」とまで書いているのは、その象徴でしょう。
一方、CxOやコンサルタントなどのハイエンド人材、専門職、体育会学生などを扱う企業では、「最後の意思決定は人」「深い面談や関係構築に価値がある」という説明が多く見られました。
つまり、AIの影響は人材業界全体に同じ強さで来ているわけではありません。
どの人材を扱い、どの部分に人が介在して価値を出しているのかによって、AIの脅威度も活用方法もかなり変わっています。
まとめ:人材業界のAI戦略には想像以上の温度差があった
決算説明資料は、上場企業が投資家に対して「これから自社をどう成長させるのか」を説明する場所です。
そこでAIをどれだけ大きく扱っているかを見ると、各社の考え方にはかなり差がありました。
AIによって人材ビジネスそのものを作り変えようとする企業もあれば、既存事業を伸ばすために活用する企業もあります。
AI人材需要の増加を追い風としている企業もあれば、決算資料ではほとんどAIに触れず、人による支援を強みとしている企業もありました。
おそらくまた1年後に同じ23社を調べれば、この分類はかなり変わっていると思います。そのときにまた比較してみたいと思います!
人材会社のAI活用を支援しています
最後に少しだけ宣伝です。
今回23社の決算資料を読んで感じたのは、AIマッチング、対話型AIエージェント、業務効率化などが、もはや一部の大手企業だけの取り組みではなくなっていることです。
その一方で、
「AIを導入したいが、何から始めればいいか分からない」
「自社が持っている求人・求職者データをどうAIに生かせばいいのか分からない」
という人材会社も多いのではないでしょうか。
私たちセルバは、20年以上前から人材業界向けのシステム開発を手がけています。
求人サイトやマッチングシステムの構築に加え、AIマッチング、AIエージェント、社内業務のAI効率化など、人材会社向けのAIシステム開発にも対応しています。
この記事を読んで「自社の場合はどこからAI活用を始めるべきだろう」と思われた方は、お気軽にご相談ください。
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