大手SIerは生成AIの影響をどう考えてる?気になったので上場大手IT・システム開発会社21社の決算・IR資料から調べました

こんにちは。セルバの中山です。
生成AIがコードを書くようになって、真っ先に影響を受けると言われているのがSIer(システムインテグレーター。企業のシステムを受託で開発する会社)です。SIerの売上の多くは「エンジニアの人数×月数」で計算する人月ビジネスなので、AIで開発が速くなるほど、同じ仕事の請求額が減るという構造を持っています。
では、当のSIerはこの状況をどう見ているのでしょうか。自社の売上が減るリスクとして語っているのか、それとも別の稼ぎ方を見つけているのか。
この疑問に答えるため、上場しているSIer 21社の決算説明資料・中期経営計画・統合報告書などを読み、生成AIに関する記述を拾い出しました。今回は、10月下旬に発表が相次いだ第2四半期決算などを反映した2026年11月1日時点の最新版です。
結論を先に言うと、21社中8社が「人月ビジネスからの転換」を資料に明記し、さらに2社が「人月が減る」こと自体を認めています。そして前回の調査から半年ほどで、各社の話は「AIで開発を速くする」から「AIでどう値段をつけ、どう稼ぐか」へと一歩進みました。どう転換するかは、4つのタイプに分かれます。
タイプ1「稼ぎ方を変える」型:人月から価値・成果ベースへ(8社)
生成AIで開発が速くなると人月売上が減る、という問題に正面から答えているタイプです。「かかった工数」ではなく「生んだ価値」で課金する、という方向を投資家向けに宣言しています。この半年で、具体的な契約形態や価格の比率まで示す会社が出てきました。
富士通
「人員や工数ではなく提供する開発成果を価格の基準とするPod型(一定期間の開発生産量を保証)契約を採用」(IR Day 2026「テクノロジー・ドリブンビジネスと価値起点のプライシング」p.22、2026年9月)
21社の中で、最も具体的に値段のつけ方を変えようとしている会社です。IR Dayでは「多くのITサービスは開発費や工数を基準に価格を決定してきたが」と従来のやり方を振り返ったうえで、成果・価値に連動する「バリュープライシング」の比率を事業別に示しました。従来型SIで2030年30%→2035年40%、モダナイゼーションで50%→60%、Uvanceで70%→90%という目標です。
2025年度決算概要には「国内SE約3万人及び協力会社が、国内PJの7割で生成AIを利用」「付加価値ベースの価格戦略」とあります。10月29日の第2四半期決算では、AIエージェントによる工程内の自動化(Lv2)と、マルチAIエージェントによる複数工程の自動化(Lv3)を合わせたプロジェクトの割合を、今後「約2割から約4割に向上」させる方針を示し、質疑応答では「上期だけでも約 70 億円の生産性改善効果がこの AI ドリブンデリバリーによって創出されています。」と、AIの効果を金額で説明しています。業務特化型LLM「Takane」を持つ一方、IR Dayでは「Anthropic の Claude Fable 等を活用したソースコード変換」にも触れています。
出典:富士通 IR Day 2026 資料(2026年9月)、IR Day 2026 質疑応答、2025年度 決算概要(2026年4月)、2026年度第2四半期 決算概要(2026年10月)、第2四半期 質疑応答
野村総合研究所(NRI)
「SIerやSaaSベンダーの役割は、アウトソース(外部委託)からエージェント(自律的な実行主体)へ」(中期経営計画フォローアップ説明会資料「業界を取り巻く環境変化を踏まえた成長戦略」、2026年5月15日)
AI駆動開発の効果を、利益への寄与まで数字で示している会社です。AI駆動開発のモデルで「少なくとも150~200億円の利益創出」を見込み、中期経営計画では詳細設計から単体テストの工程で「生産性10~30倍のケースも」あったとしています。AI関連投資額は181億円、AI高度人材は1,147名から2028年度に3,000名へ増やす計画です。
10月29日の第2四半期決算では、AIツールの適用率について「28年度末と設定した100%適用は早期達成の見込」とし、「産業セグメントの大型提案の約半数はAI関連」と、提案の中身がAI中心に変わってきていることを示しました。2025年11月には、Amazon Bedrock向けのプログラムで「日本国内初のAnthropic認定リセラー」に選定されたと発表しています。
出典:NRI 中期経営計画フォローアップ説明会資料(2026年5月)、中期経営計画(2026年4月)、2027年3月期第2四半期決算説明資料(2026年10月)、ニュースリリース(2025年11月)
TISI(旧TIS)
「2030年3月期までに開発生産性50%向上を目指し、AI駆動型開発プロセスの展開は計画どおり進捗。」(2026年3月期決算説明資料、2026年5月8日)
次期中期経営計画の重点として「AI駆動開発による収益の質的転換」を掲げ、実績として「外部設計~製造 47%Up」「製造~単体テスト 57%Up」を公表しています。顧客向けにはAI・データサイエンティストとコンサルタントで400名超の新ブランド「IntegriA」を立ち上げ、5年後に売上高100億円を目標にしています。Anthropicとリセラー契約を結び、AWSとも生成AIに関する戦略的協業契約を結んでいます。
9月の統合報告書2026では、社長が「従来型SIにとどまらない収益モデルを確立していく方針です。」と述べる一方、財務担当役員はAIの浸透度や効果を測るKPIなどの「定量的な情報発信が不足」していると自ら認めています。11月4日の第2四半期決算で、どこまで数字が出てくるかが注目点です。
出典:TISI 2026年3月期決算説明資料(2026年5月)、2027年3月期第1四半期決算説明資料(2026年7月)、統合報告書2026 トップメッセージ、財務担当役員メッセージ
BIPROGY
「AIによる自動化の進展を背景に、工数依存型(人月型)開発の在り方が変化」「顧客が求める価値の重心は、業界知見に基づく、業務・システム全体の設計とAIガバナンスの両立へシフト」(2026年3月期決算説明会資料 p.12、2026年4月30日)
「人月型」という語を決算資料に直接書いている会社です。2030年の目標として「開発生産性を2倍に向上」「システム開発・運用の工程すべてにAIを活用」「売上高1,000億円以上の新たなビジネス拡大」を掲げ、全社横断組織「AI CoE」を組成しました。8月の第1四半期決算では「AI関連大型案件の獲得もあり」と触れています。外部AIベンダー名の記載はありません。第2四半期決算は11月5日の予定です。
出典:BIPROGY 2026年3月期決算説明会資料(2026年4月)、2027年3月期第1四半期決算説明資料(2026年8月)
日鉄ソリューションズ(NSSOL)
「開発への生成AIの適用で効率化」「価値ベースの契約へ段階的に切替」(2025-2027 中期経営計画 p.21、2025年2月28日)
中期経営計画で、契約形態の切替えまで踏み込んでいる会社です。実績として、要件定義で36%、製造で45%の生産性向上事例、SI案件での「生成AI活用率50%超」、「月123,900時間の効率化」(社内実績)を開示しています。
この半年の大きな動きは、9月のAnthropicとの戦略的パートナーシップです。「日本国内におけるユーザー系システムインテグレーターとして初めて戦略的パートナーシップ契約を締結しました。」と発表し、グループ国内外1万1千人がAnthropicのAIを活用するとしています。大規模なコードを持つ基幹システムの刷新にClaude Codeを使い、親会社の日本製鉄で鍛えた技術を顧客に広げる方針です。
出典:NSSOL 2025-2027 中期経営計画(2025年2月)、2027年3月期第1四半期決算説明資料(2026年7月)、Anthropicとの戦略的パートナーシップ発表(2026年9月)
電通総研
「人月による課金モデルから、価値で対価を得るアセット・成果型SIへ移行していきます。」「遅くとも2030年までにAI駆動開発の適用率100%を目指します。」(統合レポート2026 p.22)
新製品の開発にAI駆動開発を100%適用し、「製品の導入期間半減」「生産性を倍増」を目標にしています(2025年12月期決算説明会資料)。ソフトウェア製品の売上を2030年に750億円とする計画で、納品後の伴走支援でストック型の収益に寄せる方針です。Microsoft Foundryを使ったAIエージェント構築支援や、OpenAIの「Apps in ChatGPT」への対応も発表しています。
10月には、電通グループ各社と共同で3,000人規模のFDE・FDM(顧客の現場で生成AIを使って事業変革を支援する人材)のスキル開発を始めると発表しました(Gemini Enterpriseを活用)。なお、同社は伊藤忠商事系の会社による株式の公開買付け(2026年11月2日〜12月2日)が予定されており、上場廃止となる見込みです。
出典:電通総研 統合レポート2026、2025年12月期決算説明会資料(2026年2月)、ニュースリリース(2026年10月)、公開買付けに関するお知らせ
コムチュア
「成長ドライバーは「人数×稼働率」から「AI活用×伴走力」へ」(中期経営計画 2027年3月期〜2029年3月期、2026年8月14日)
8月の中期経営計画で、従来の「SES型(工数提供型のエンジニアリングサービス)・受託開発型」から、顧客の現場に入るFDEモデルへの転換を掲げました。数値目標は社員一人当たり売上総利益額の伸び率「+6.6% / 年」で、生産性の%目標はありません。10月1日付で「AI CoC」を新設し、その下に「AIインタラクティブテクノロジー本部」を置きました。
第1四半期の決算説明資料では「AIの市場浸透は当初想定を上回るスピードで進行。足元の業績確保より、近い将来の競争力確保に向けた投資を選択」と、目先の利益よりAIへの投資を優先すると明言しました。9月にはDataiku Japanと組み、FDEによる伴走型支援で協業すると発表しています。
出典:コムチュア 中期経営計画(2026年8月)、2027年3月期第1四半期決算説明資料(2026年8月)、組織変更のお知らせ(2026年9月)、Dataiku Japanとのパートナー契約(2026年9月)
SHIFT
「AI売上割合は28.4%と前四半期対比+10.3ptと大幅増加」(2026年8月期 第4四半期・通期決算説明資料 p.2、2026年10月15日)
「人月」時代→With AI時代→Native AI時代という段階を自ら定義し、AI売上を売上総利益率(With AIは35%以上など)で線引きして開示している会社です。10月の通期決算では「AI売上が本格的に立ち上がった」とし、第4四半期のAI売上の割合は28.4%に達しました。AI売上の売上総利益率は、通期でWith AIが42.3%、Native AIが54.7%です。
社内では「バックオフィスのAI化が進み、-113人の業務効率化を完遂」と、人員の効率化も数字で示しています。2027年8月期の予算では売上に占めるAI比率をさらに高める計画で、今後の稼ぎ方として「AI駆動開発」「AI BPaaS」「AIモダナイゼーション」に加え「プロジェクト成果報酬」を並べています。
出典:SHIFT 2026年8月期 第4四半期・通期決算説明資料(2026年10月)、第3四半期決算説明資料(2026年7月)
タイプ2「作り方を変える」型:開発工程への生成AI適用と生産性目標(5社)
収益モデルの話よりも、「開発をどう速くするか」に資料の重心があるタイプです。具体的な生産性の数字や、エンジニアへのAIツールの展開規模を前面に出しています。人月が減ることを認めたうえで、空いた力を新しい案件や上流工程に向けるという説明が多く見られます。
日立製作所
「ミッションクリティカルなシステムインテグレーションの全工程でAIを全面適用する基盤『Agentic AI Integration Platform』を9月より大規模PJへ順次適用」「2027年度に全工程で生産性30%向上をめざす」(2027年3月期第1四半期連結決算の概要 p.10、2026年7月29日)
「設計からテスト工程で約200倍の生産性実証」という大きな数字(特定の工程・条件での測定値)と、質疑応答での「2025年度末時点で約10%の生産性向上を実現」という現実的な実績の両方を示しています。6月のInvestor Dayでは、顧客の現場に入る「FDE Team」を国内5,000人規模にすることをめざし、AI関連売上の年平均成長率20〜25%(2025〜2027年度)という目標も示しました。10月28日の第2四半期決算では「AI活用による生産性向上などにより増益」としています。
出典:日立 2027年3月期第1四半期連結決算の概要(2026年7月)、第1四半期 質疑応答、Investor Day 2026 デジタルシステム&サービス(2026年6月)、第2四半期連結決算の概要(2026年10月)
NEC
「ClaudeをNECグループ3万人へ展開」「国内企業最大規模となるAIネイティブエンジニア体制を構築」(2026年度第1四半期決算概要、2026年7月29日)
2026年4月に「日本企業初のAnthropic社のグローバルパートナー」となり、「開発における内部設計からテスト工程を中心にAIエージェントを活用」とプレスリリースで述べています。10月28日の第2四半期決算では、Claudeの社内利用が「社内利用開始から4か月で1.5万人に拡大」したと報告しました。
自社開発の生成AI「cotomi」を持ちながら、IR Dayでは「提供するサービスへの活用はマルチモデル戦略です。」と説明し、第2四半期には複数のAIを使い分ける「cotomi Gateway」の提供予定も示しています。第1四半期の資料では「AX人材の育成加速」も掲げています。一方、生産性の%目標やAI売上の金額は決算資料にありません。
出典:NEC 2026年度第1四半期決算概要(2026年7月)、第2四半期決算概要(2026年10月)、プレスリリース(2026年4月)、IR Day 2026 ITサービス 質疑応答(2026年6月)
クレスコ
「開発の工数ベースだけで言うと、人月はマイナスになる場合はもちろんございます」「少し長く 6 カ月かかっていたものが 4 カ月で終わって、残り 2 カ月は新たなことをやっていく」(2026年3月期決算説明 要旨 p.26・27、2026年5月)
人月が減ることを、決算説明会で最も率直に認めている会社です。生成AIを使ったマイグレーションで「生産性が 50%向上」、社内の生成AIの利用率は(開発以外も含めて)「80%を超える」としています。8月の第1四半期決算説明会では、AI駆動開発を全社で標準化したことや、AWS経由でのAnthropicのリセラー契約も説明しました。
同じ説明会では「生成 AI を活用して下流工程はかなり自動化することができてきております」「上流工程の人員がどんどん増えてきている状況です」と、下流の自動化で生まれた人員を上流に移している様子を説明しました。AIが生成したコードを検証するサービス「Trust Code Hub」は、第1四半期の売上はまだ1億円に満たないものの「引き合いが非常に多い」としています。
出典:クレスコ 2026年3月期決算説明 要旨(2026年5月)、2027年3月期第1四半期決算説明会 要旨・質疑応答(2026年8月)
TDCソフト
「総工数:100人月(10人×10カ月)」→「総工数:70人月(10人×7カ月)」「創出余力」「30人月」(2027年3月期 第1四半期決算補足資料 p.15、2026年8月5日)
人月が3割減る例を図で示し、「創出したリソースで「案件回転率の向上」と「高付加価値領域への人材シフト」を図る」としています。「AIをリスクではなく成長機会と捉え」と明記し、開発プロセスを段階的に「AI-Native開発モデルによるプロセス」へ進める計画です。顧客向けにはローカルLLM基盤「Nenoa」を提供し、全社売上の2%を人材投資に充て、FDE人材の育成も進めます。10月には、AI活用の全体設計図と90日のアクションプランづくりを支援する「AI-Native変革デザイン支援サービス」を始めました。
出典:TDCソフト 2027年3月期第1四半期決算補足資料(2026年8月)、ニュースリリース(2026年10月)
都築電気(タイプ4から移動)
「当社はAIエージェントとの協働により、1案件当たりの必要工数や要員を抑制し、生産性とプロジェクト回転率を高めます。」(TSUZUKI REPORT 2026 p.25、2026年10月)
前回は「方針段階」に分類していましたが、10月の統合報告書で1案件あたりの工数や要員を減らす方針をはっきり書いたため、タイプ2に移しました。エンジニアの役割を「実装を担う演奏者から、AIと人を統合し価値を設計する“指揮者”へと進化させます。」とし、「AIによる自動化が進展し、単純な開発・構築の価値は相対的に低下」とも認めています。
5月の中期経営計画では「AIの普及により、ソフトウェア開発の生産性が飛躍的に向上」「内製化の進展など、SI領域の競争環境は変化」と、顧客の内製化も競争環境の変化として明記しています。数値目標は「プロジェクト回転率+20%」で、人材・AIへの成長投資は70億円規模です。日本IBMとAIパートナーシップを結び、10月には全従業員に「生成AIパスポート」の取得を奨励するAI基本方針も定めました。
出典:都築電気 TSUZUKI REPORT 2026(2026年10月)、中期経営計画「Trust & Challenge 2029」(2026年5月)、AI基本方針の策定(2026年10月)
タイプ3「AIを売る」型:顧客向けのAI商材・導入支援が中心(7社)
AIを、自社の開発プロセスを変えるものというより、顧客に導入する商材として扱っているタイプです。パッケージ販売やクラウド基盤構築を主事業とする会社や、自社製品を持つ会社に多く、人月モデルの転換を語る必要がもともと小さい会社です。
大塚商会
【AI受注金額】35.0億、【AI受注件数シェア】39.3%(※利用部門におけるシェア)(2026年12月期 第3四半期決算概要 p.18、2026年10月30日)
AIを「営業活動の支援」と「顧客への販売商材」の両面で使い、AIが関わった受注の金額と件数シェアを四半期ごとに開示しています。第3四半期は、AIを使った受注の件数シェアが(利用部門で)39.3%と、資料の言葉で「4割に迫る利用率」になりました(集計の条件は市場の状況に応じて見直すとしています)。第2四半期の資料では「人員計画は生産性向上に留意しながら微増」とし、2026年3月には「たよれーる ビジネスAIエージェント」の提供を始めています。自社の開発プロセスへの生成AI適用に関する記述はありません。
出典:大塚商会 2026年12月期第3四半期決算概要(2026年10月)、第2四半期決算概要(2026年8月)、統合報告書2026
日本ビジネスシステムズ(JBS)
「当社はマルチAIモデルを扱えるパートナーとして成長する必要があると判断しました。全社員がマルチAIモデルを駆使してお客さまに使い方をご指導できる、すなわちAIのインストラクターになるつもり」(2026年9月期第2四半期決算説明会での牧田社長の発言、ログミーFinance掲載の書き起こし(会社提供)、2026年5月)
MicrosoftのCopilot導入支援を中核にしてきた会社ですが、GoogleのGeminiやAnthropicのClaudeの台頭を受けて「マルチAIモデル」に転換すると説明しています。8月の第3四半期決算短信では、「大手PCメーカーの製品に当社オリジナルのAI学習コンテンツを標準搭載」したことや、AI時代のセキュリティ支援の強化を挙げています。通期決算は11月に発表される予定です。
出典:JBS 2026年9月期第2四半期決算説明会 書き起こし(ログミーFinance)、2026年9月期第3四半期決算短信(2026年8月)
シーイーシー(CEC)
「企業のIT投資の優先順位がAI活用へ大きくシフト」「既存システムの維持・保守からAIによるビジネス変革へと予算配分が移行」「AIとの競合ではなく、AIとの共存へ」(2026年1月期決算説明会補足資料 p.2、2026年3月)
顧客のIT予算が保守からAIへ移る、という外部環境の変化を資料の冒頭で説明している会社です。9月の第2四半期決算説明会補足資料では「人とAIが共存・協働する組織の実現」をAI戦略に掲げ、「AI駆動開発の標準化・人材育成を推進し品質を担保できる」「AI駆動モダナイゼーションサービスを開発中」と、AI駆動開発を顧客向けサービスとして整える動きも出てきました。AIエージェント構築の支援や、製造業向けの「フィジカルAI実証ラボ」の開設も打ち出しています。
出典:CEC 2026年1月期決算説明会補足資料(2026年3月)、2027年1月期第2四半期決算説明会補足資料(2026年9月)
SRAホールディングス
「急速に進展するAIに、『オープンソース』や『現場での知見』といった『SRAらしさ』を掛け合わせることで、お客さまにとって真の付加価値を提供していく」(2026年3月期決算および2027年3月期計画 決算説明会資料 p.27、2026年5月)
大手金融機関の開発工程で、Claude系のツールに加え、QwenやMistralなどのオープンソースモデルを活用し、プログラムをマージするときのレビューにもAIを使っています。2025年度にはIBMのAIエージェント事業とAI駆動開発事業(watsonx Orchestrate、IBM Bob)も始めました。オープンソースモデルの活用を差別化の軸にしている点が他社と違います。生産性や売上の数値目標はありません。
出典:SRAホールディングス 決算説明会資料(2026年5月)
オービック
「自社構築のプライベートGPU基盤とオープンウェイトモデルにより」「高セキュリティかつ低コストな全社AI活用を実現」(2027年3月期 第2四半期決算説明会資料 p.14、2026年10月28日)
自社開発・直接販売のERP「OBIC7」を主事業とする同社は、もともと人月ビジネスではないため、転換の話は出てきません。その代わり、10月の第2四半期決算で、自社のGPU基盤で公開されているAIモデル(オープンウェイトモデル)を動かし、利用が増えても従量制のトークンコストがかからないようにするという独自の方針を示しました。「プロンプト指示によるコード自動生成と」「SEによるレビュー・品質精査体制の確立」も掲げ、「『AI駆動開発』の実現を視野に入れた取り組みを推進」としています。4月の決算説明会資料では「AI技術の台頭は脅威ではなく、さらなる成長のチャンス」と述べ、2025年4月には「AI研究開発推進部」を新設しました。
出典:オービック 2027年3月期第2四半期決算説明会資料(2026年10月)、2026年3月期決算説明会資料(2026年4月)、統合報告書2026
DTS(タイプ2から移動)
「2030年度におけるAIおよび生成AI関連の売上高100億円を目指します。」「2025年9月、生成AI技術の実用化を推進するため、OpenAI Japan合同会社と連携を開始しました。」(2026年3月期決算短信 p.3、2026年5月1日)
生成AI専任の「GenAIビジネス推進室」を置き、AI・生成AI関連の売上目標を金額で示している会社です。9月にはdotDataと組み、製造業向けの品質要因分析サービスを始めました。今回の調査では、開発工程での生産性の数値を一次資料で確認できなかったため、顧客向けのAIビジネスを前面に出す会社としてタイプ3に移しました。第2四半期決算はまだ発表されていません(11月1日時点)。
出典:DTS 2026年3月期決算短信(2026年5月)、プレスリリース(2026年9月)
アイネス(タイプ4から移動)
「2026年7月より生成AIを組み込んだ『AI相談 TazuNavi』の提供を開始」(2027年3月期 第2四半期決算短信 p.2、2026年10月30日)
自治体向けシステムを主力とする同社は、前回は「方針段階」でしたが、自治体向けの具体的なAI商材を出してきたためタイプ3に移しました。10月には、自治体向けの「WebRings」に生成AIエージェントを統合し、2027年4月から販売すると発表しています。福祉分野ではAIが一次審査を行い、最終判断は職員が行う設計です。社内では「生成AIを活用した開発プロセスの高度化」を進めるとしていますが、数値はまだありません。
出典:アイネス 2027年3月期第2四半期決算短信(2026年10月)、プレスリリース(2026年10月)、2026年3月期決算短信(2026年5月)
タイプ4「方針段階」型:生成AI活用の方針はあるが、数値や具体策はこれから(1社)
生成AIを使う方針は資料にあるものの、生産性の数字や具体的な施策はまだ少ないタイプです。取り組みがないという意味ではなく、投資家向けに開示する段階に至っていない、ということです。前回は3社でしたが、都築電気とアイネスが具体策を出したため、1社になりました。
システナ
「生成AI等を活用した高度な開発案件や、高単価なDX支援領域へのリソースシフト」「AI駆動開発による生産性向上にも着手し、来期に向けた技術競争力の強化を推進。」(2026年3月期決算説明資料 p.13、2026年5月21日)
5月時点では「着手」でしたが、10月29日の第2四半期決算短信では「開発プロセスにおけるAI駆動開発の蓄積に伴う生産性向上を推進いたしました。」と表現が一歩進みました。「AI導入基盤やAI PCの本格展開までを一気通貫で提供する高付加価値なSIビジネスへの構造転換」も掲げています。一方、生産性や売上の数値目標、外部パートナー名の記載はまだありません。
出典:システナ 2026年3月期決算説明資料(2026年5月)、2027年3月期第2四半期決算短信(2026年10月)
調べて分かったこと
「AIでSI需要が減る」とは誰も書かないが、「人月が減る」ことは半数が認めている
タイプ1の8社が人月・工数モデルからの転換を明記し、クレスコは「人月はマイナスになる場合はもちろんございます」、TDCソフトは100人月→70人月の例を図で示しています。都築電気も「1案件当たりの必要工数や要員を抑制」と書きました。ただし、どの会社も「減った分を新しい案件・上流工程に向ける」という説明で、売上減を見込んだ計画を出している会社はありません。
半年で「作り方」の話から「値段のつけ方」の話へ
この半年でいちばん変わったのは、価格や契約の話が具体的になったことです。富士通は「人員や工数ではなく提供する開発成果を価格の基準とするPod型」契約を採用し、事業別のバリュープライシング比率を示しました。SHIFTは今後の稼ぎ方に「プロジェクト成果報酬」を並べています。一方でTISIのCFOは、AIの効果を示す「定量的な情報発信が不足」していると認めており、各社とも投資家にAIの効果をどう数字で示すかを模索している段階です。
生産性の数字は「工程別に見る」と実態が分かる
全工程では約10〜30%(日立の実績「約10%」と目標「30%」)、製造・テスト工程に限ると45〜57%(NSSOLの「製造45%」の事例、TISI「製造~単体テスト57%Up」)、特定の条件では10〜30倍(NRI)や約200倍(日立)という構造です。「◯倍」という数字は、工程や条件を見てから受け取る必要があります。
AIの効果を「金額」で語る会社が増えてきた
AI関連の売上・受注を金額や比率で示しているのは、SHIFT(AI売上割合28.4%)、大塚商会(AI受注金額)、DTS(2030年度に100億円)、TISI(IntegriA 5年後に100億円)、日立(AI関連売上の年平均成長率20〜25%)です。また、富士通(上期で約70億円の生産性改善効果)やNRI(少なくとも150~200億円の利益創出)のように、コスト削減や利益への効果を金額で示す会社も出てきました。
自社LLMを持つのは一部で、多くは外部のAIを組み合わせる
富士通(Takane)やNEC(cotomi)は自社のAIを持っていますが、NECでさえ「マルチモデル戦略」をとり、複数のAIを使い分ける「cotomi Gateway」を出します。JBSは「マルチAIモデル」への転換を宣言し、オービックは自社のGPU基盤で公開されているAIモデルを動かす道を選びました。特定のAIに依存しないことが、各社に共通する考え方になっています。
Anthropicとの提携がさらに広がった
2026年に入ってNEC(4月、グローバルパートナー)、TISI(4月、リセラー契約)、クレスコ(リセラー契約)に続き、9月にはNSSOLが「ユーザー系システムインテグレーターとして初めて」の戦略的パートナーシップを結びました。NRIは2025年11月に「日本国内初のAnthropic認定リセラー」に選ばれ、富士通もソースコード変換にClaudeを使っています。開発工程ではClaude Code、顧客向けではAWS経由のClaude提供という組み合わせが複数社で見られます。
「顧客の現場に入るエンジニア(FDE)」の規模が大きくなった
日立・富士通・NRI・コムチュア・TDCソフト・電通総研がFDEという言葉を使い、仕様を受け取って作る受託型から、顧客の業務に入ってAIを実装する型への移行を掲げています。日立は「FDE Team」を国内5,000人規模にすることをめざし、電通総研は電通グループで3,000人規模の育成を始めました。発注する側から見ると、「要件を渡して待つ」より「一緒に作る」形の提案が増えることを意味します。
まとめ:発注する側は何が変わるのか
SIerは生成AIを、自社の売上を減らす脅威としてではなく、人月ビジネスから抜け出すきっかけとして語っていました。そしてこの半年で、話は「開発を速くする」から「成果でどう値段をつけるか」へと進んでいます。
発注する側から見ると、この変化は2つの形で現れます。1つは、同じシステムを作るのに必要な期間と人数が確実に減っていること。もう1つは、大手SIerが「価値ベース」「成果型」へ移るにつれて、小さな案件や細かい業務の作り込みを引き受ける先が変わっていく可能性があることです。
「自社でも生成AIを使ったシステムを入れたいが、大手に頼むほどの規模ではない」「既製のAIツールでは自社の業務フローに合わない」という企業は、今回調べた各社が向かっている「価値ベース」の領域から、ちょうど外れる位置にいます。
セルバは、2005年にWebシステムの受託開発を始めてから20年以上、企業ごとのシステムを個別に開発してきた会社です。現在は生成AIを使った業務システムの開発にも取り組み、社内文書を検索して回答する仕組み(RAG)、既存の基幹システムとつなぐAIエージェント、帳票や報告書の自動作成など、パッケージ製品では合わない部分を小さく作って試すところから伴走します。大手SIerの動きを見て「自社の規模ではどこから始めるべきか」を整理したい方は、まずは無料相談からお気軽にお問い合わせください。
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今回の調査で見えてきたように、AI時代のエンジニアに求められるのは、仕様どおりに作ることだけではなく、お客さまの業務に入り込み、AIを使って価値を形にすることです。
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