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「ロボットでできることはロボットに。人は、人の感性が生かされる仕事に」——そう語るのは、ビルメンテナンスを中核事業とする株式会社エムエムインターナショナル(MMI)の代表取締役社長・橋本修一さんです。マルハングループの一員として約1000事業所の清掃・設備管理を担う同社は、自社で開発に関わった小型業務用清掃ロボットの展開や、ホテル客室清掃事業など、受け身になりがちなビルメン業界で、次々と新たな挑戦を続けています。「清掃3.0」という独自のコンセプトや、AIを使いこなす現場の力、そして「7つの習慣」をもとにした人づくりについて伺いました。
橋本 修一さん
株式会社エムエムインターナショナル 代表取締役社長。1996年に株式会社マルハンへ入社し、パチンコホールの現場スタッフからキャリアをスタートし、店長、エリア長、営業部長を歴任。2011年にエムエムインターナショナルへ着任し、ホテル客室清掃事業やロボティクス事業など、数々の新規事業を立ち上げてきた。
株式会社エムエムインターナショナルは、1996年に株式会社マルハンの100%出資会社として設立された、東京・神田に本社を置く企業です。ビルメンテナンスを中核事業に、清掃ロボットを活用したロボティクス事業、ホテル客室清掃事業、不動産管理事業を展開。人とロボットが協働する「清掃3.0」というコンセプトを掲げ、ビルメン業界の新しいあり方を発信しています。
株式会社エムエムインターナショナル 会社概要
設立:1996年9月
代表者:代表取締役社長 橋本 修一
本社:東京都千代田区神田錦町1-21-1 ヒューリック神田橋ビル7F
公式サイト:https://mmin-net.co.jp/
ーまず、御社の事業について教えてください。
橋本:弊社は、ビルメンテナンスを中核事業として展開している企業です。約1000の事業所から委託を受け、清掃や設備の補修・管理などを担っています。
また、2013年から2014年頃、東京オリンピックの招致が決まり、インバウンド需要が見込まれたことから、ビルメンテナンスに近い領域としてホテルの客室清掃事業を立ち上げました。現在は約20件のホテルから受託しており、お客様から非常に良い評価をいただきながら、シェアを伸ばしています。さらに、弊社は宅地建物取引業者でもあり、物件を所有しながら管理する不動産管理事業も展開しています。
株式会社エムエムインターナショナルの主な事業領域
ビルメンテナンス事業
(約1000事業所の清掃、設備の保守・管理を担う中核事業)
ロボティクス事業
(メーカーと共同開発した業務用小型清掃ロボットの販売・導入支援)
ホテル客室清掃事業
(約20件のホテルから客室清掃を受託)
不動産管理事業
(宅地建物取引業者として、物件の所有・管理を行う)

ー設立から30年。どのような変遷をたどってきたのでしょうか。
橋本:かつて渋谷に、そのデザインが評価され日本経済新聞の賞もいただいた「マルハンパチンコタワー渋谷」という店舗がありました。
パチンコ店では、玉と交換するための景品を用意する必要があります。家電やお菓子、卵などさまざまな品目がありますが、当時、パチンコ業界のあり方を変えたいと考えていたマルハンにとって、そのコンセプト店舗が渋谷店でした。従来の卸から仕入れる景品は魅力に乏しかったため、魅力ある景品をバイヤー的に用意する会社として立ち上がったのが、エムエムインターナショナルでした。
その後、パチンコ店を取り巻くさまざまな事業として、広告まわりのハウスエージェンシー的な役割や、現在のビルメンテナンスにつながる管理の役割など、事業が1つずつ増えていきました。ただ、景品と広告はマルハンの営業戦略に密接に関わるため本体に戻すことになり、ビルメンテナンスと不動産管理が残った、という経緯です。
当時の弊社は、実際に作業を行う会社との間に入って管理をするポジションでした。そこから、「自分たちで付加価値をつくっていかなければいけない」と考え、自社で清掃現場を直営するプロジェクトが始まりました。清掃のノウハウはそれまで持っていませんでしたが、マルハングループらしい清掃のあり方や管理の手法を、自分たちで少しずつ積み重ねてきました。
ーロボティクス事業について教えてください。
橋本:近年は人手不足が深刻で、特に清掃スタッフはなかなか集まりにくいという事情があります。そこで、清掃スタッフの代わりとなる清掃ロボットを長年研究してきました。日本で初めての業務用清掃ロボットとして、ソフトバンクロボティクスさんが8年ほど前にリリースしたロボットも積極的に活用してきました。
ただ、使い勝手の面では課題もありました。そこで、ユーザー目線、つまりマーケットインの視点で、もっと良い業務用清掃ロボットがないかと探す中で、中国のメーカーさんとの取引が始まりました。そのメーカーさんと共同で小型業務用清掃ロボット「JINNY(ジニー)20」を開発し、約2年前から販売しています。現在、国内での累計導入台数は約2,500台に達しており、※「業務用小型清掃ロボット 日本国内2025年度新規導入台数No.1」を獲得しました。
※調査概要
2026 年 8 月期_業務用小型清掃ロボットにおける市場調査
調査機関:日本マーケティングリサーチ機構
調査期間:2026 年 7 月 17 日~2026 年 8 月 11 日
調査概要:主要 6 社を対象
調査手法:公開情報および関係者へのヒアリング等を基に、累計データを比較・検証したものです。 実際の数値とは異なる場合がございます。

ーほかの清掃ロボットとは、どのような点が違うのでしょうか。
橋本:世の中でリリースされている業務用清掃ロボットの多くは、中規模から大規模の商業施設向けの中型・大型のものです。しかも、清掃できるのはロボットが物理的に入れる範囲だけになります。
例えばパチンコ店には通路があり、お客様が遊技する台の前には椅子があります。ところが、その椅子の足元には、中型や大型のロボットは物理的に入れません。パチンコ店の場合、そうした場所が床面積の約30%を占めています。ここを清掃できなければ、結局は人の代わりにはなり得ないのです。
そこで、細かい場所でも使える業務用清掃ロボットがあれば、床面の100%をロボットで清掃できる可能性があると考えました。本来はメーカーや代理店に任せる領域かもしれません。でも、どうしても自分たちで作りたかった。メーカーさんに出資をしながら、自分たちの現場で開発とフィードバックを重ね、約1年かけて完成させました。
橋本:清掃は未だに「3K」のイメージが強く残っている業種だと思います。私自身も良く現場を手伝っていましたが、バキュームがけや拭き掃除をしていると、腰が痛くて3Kの「きつい」を身に染みて味わいました。
そのときに強く感じたのが、「ロボットでできることは、すべてロボットでやりたい」ということでした。人がやるべきなのは、最終的な美観の保持や担保など、人間の感性が生かされるところです。この世界観を「清掃3.0」というコンセプトとして外部にも打ち出しており、その実現に向けてロボティクス事業を展開しています。ロボティクス事業は立ち上げてまだ3年ほどですが、既に多くの現場でスタッフの「きつい」を肩代わりしてくれています。

ーほかにも、他社との違いやアピールポイントがあれば教えてください。
橋本:ビルメンテナンスの事業部では、「ホワイトカラーのできるブルーカラー」を目指そうというスローガンを掲げています。その実践として、メンバーのほとんどがAIを活用しています。お客様を訪問する前や訪問中にAIで資料を作成し、その場でご提案するといったことを、タイムリーに展開できる。これは、ほかのビルメン会社にはなかなかない点だと思います。
まずは、オープンに使えるAIでお客様に関する情報を整理しながら、自分たちで得た一次情報も掛け合わせる。そうしてお客様のニーズを的確につかみ、即座に提案するという機動力が、非常に高く評価されています。最近はお取引も増えてきており、ナショナルチェーンを展開する企業とのお取引も始まっています。
ビルメン業界は、仕事の依頼があってから始まる、受け身になりがちな業界です。その中で、他社とは違う風土で事業を展開できていることが、弊社のアピールポイントだと感じています。
ー社員の方々が安心して働けるよう、会社として取り組んでいることはありますか。
橋本:入社直後のタイミングで、必ず「7つの習慣」の研修を受けていただいています。この研修は、アメリカのさまざまな成功者の要因を経済学や心理学の観点から分析し、7つの原則として体系化した世界的なベストセラーがベースになっています。親会社のマルハンでも、人材育成のコアとして広く取り入れられている信頼性の高いプログラムです。
自分の幸せの方向性と、会社が発展する方向性をうまく結びつけることが研修の目的です。価値観は人それぞれですが、チームとして、会社として大事にしていく価値基準は、普遍的なところを掘り下げていくと、大体みんな共通しているんです。そこを学んでいただいたうえで、自分自身のミッションステートメントを立ててもらいます。限られた人生の中で、エムエムインターナショナルで何を実現していくのかを考える機会です。
その中で、まず目指すのは「自立した個人」です。人はどうしても環境に影響されてしまう部分がありますが、自分が立てた誓いに対して強くなるために何が必要かを、7つの習慣を通じて学んでいただきます。自立した個人が集まると、非常に強い集団になります。お互いに切磋琢磨し、協力し合いながら、会社として発展していける。だからこそ、人材・組織戦略上、非常に必要なものとして取り入れています。
橋本:自立した個人として働くことで、自分に自信を持てるようになっていくと思います。最初は自信がない方も、日々積み重ねながら自信をつけてくれて、良い形でコミュニケーションが取れていると感じます。ですから、隷属的な働き方はありませんし、言われたことだけをやるという雰囲気にはなりにくいと思っています。
自分がやりたいと思ったことは、基本的に制限しません。また、ミスは成長するための糧として必要なものだと捉えています。そうした考えのもとで、どんどんチャレンジをしてもらっています。
私が2011年に着任してから約15年、さまざまな事業を立ち上げてきましたが、最初はたいていうまくいきません。3年ほど赤字が続いたこともあります。ホテル事業も最初の3年ほどは苦労しましたが、今は非常に高い利益率で推移しています。ロボティクス事業も当初は難しい面がありましたが、昨年一定の結果を残し、今もそれを継続してくれています。チャレンジすることが未来を切り開く。だからこそ、そこを大事にしていきたいと考えています。
ーどのような方と一緒に働きたいですか。
橋本:自分自身で何かを成し遂げてみたいというビジョンを持っている方です。そのうえで、エムエムインターナショナルで何かを学んでみたい、経験してみたい、チャレンジしてみたいという方は、ぜひお迎えしたいと思っています。
実際に、弊社を「卒業」した後に起業して独立したり、他社で経験を積んでから独立したりしたメンバーと、今も一緒に仕事をしています。弊社には、7つの習慣をもとにした「MMIイズム」というクレドがあり、それに共感してくれたメンバーとは価値基準が同じだと考えています。だからこそ、お客様と自分たちの幸せのために一緒に頑張っていけるし、質の高い仕事をしてくれる、信頼できる。辞めたらそれっきりになりがちですが、弊社はそうではなく、事業の進展を助けてもらっている部分もあるんです。
こうした輪を、これからも広げていきたいと思っています。ですから、アントレプレナー志向の方でも構いません。一緒に同じ釜の飯を食い、会社が大切にしていることを共有できる方であれば、ぜひお迎えしたいと思っています。
ー逆に、合わないと感じるのはどのような方でしょうか。
橋本:誰しもそうだと思いますが、他責思考の方ですね。うまくいかないことを環境のせいにしてしまう。弊社のクレドにも「依存でなく自立」という項目があります。事業は一概に答えがあるものではなく、成功の糸口を探していくには自立した姿勢が必要です。他責思考では、道は絶対に開けていかないと思います。

ー今後のビジョンについて教えてください。
橋本:人とロボットが協働し、社会の発展に貢献できる「清掃3.0」の世界観を実現していきたいと考えています。人とロボットは性質が違いますが、だからこそ協働することに意味があります。
その中で、メーカーとユーザーの間に立つ役割を、自分たちでつくっていきたいと思っています。メーカーはどうしても売ることが目的になる部分があり、使う側の目線を反映するのは難しい面がありました。そこをつなぎ、コミュニケーションの翻訳をしながら、より良いものを世の中にリリースしていただく。そして、その使い勝手を自分たちが実践しながら紹介し、世の中に普及させていく。それが、今の大きなビジョンです。
ー橋本さんご自身が、考え方が変わるきっかけになった出来事はありますか。
橋本:経営者になりたいと思ったのは、27〜28年ほど前のことです。当時、私はマルハンで北海道に赴任しており、北海道の約半分、約14店舗を統括するエリア長を務めていました。
各地の風景を見ていく中で、経済はだんだん衰退していくものなんだと感じたんです。そこに足りないものは何だろうと自分に問いかけたとき、その事業をやり続けたいという「情熱」がなければ成り立たないと気づきました。そして、自分が情熱を持ってやり続けることは、世の中にとっても重要なのではないかと感じ始めたのが出発点です。
エリア長は大きな役割でしたが、損益計算書の一部、つまり利益をつくるための仕事であって、価値をつくっていくこととはまた違うと思いました。それならば、経営という役割を担うことが重要なのではないかと。そこから経営に関する勉強を始め、毎日日経新聞を読むなど、行動が大きく変わりました。その風景を見たことで、自分の中でスイッチが入ったのだと思います。多くの方からさまざまな言葉をいただいてきましたが、すべてに意味があると思っていて、それを少しずつ消化しながら今に至っています。
株式会社エムエムインターナショナルが大切にしている3つのこと
① 人とロボットが協働する「清掃3.0」
ロボットにできることはロボットに任せ、人は感性が生かされる仕事に集中する
② 受け身にならない「ホワイトカラーのできるブルーカラー」
AIと一次情報を掛け合わせ、お客様のニーズに即座に応える機動力
③ 「依存でなく自立」
7つの習慣とMMIイズムを軸に、自立した個人が切磋琢磨する組織をつくる
ー最後に、AI時代に大切なことについて、読者へのメッセージをお願いします。
橋本:これからは、「問いを立てる力」が非常に重要になると思います。社内でも常に問いかけていることですが、どうすれば今の局面を打開できるのか。選択肢はAIが示してくれますが、問いの立て方によって、まったく違う答えが出てきます。だからこそ、たくさん行動し、いろいろなことを体験していくことが重要で、そこから得られる問いの力が問われるのだと思います。
AIだけに頼っていくと、だんだん汎用化して、みんな同じところに集まってしまう。それでは付加価値は生みにくいと思います。いろいろなことを体験し、そこから問いを立て、AIの力も使いながらやりたいことを実現し、課題を解決していく。そしてまた経験を積み重ねていく。この好循環のサイクルが、これからは求められるのではないでしょうか。
日本人には失敗したくないという心理が強い方が多いと思います。そうすると、問いを立てることもなくAIに聞いて、示された選択肢をそのまま実行してしまう。でも、本来の答えや付加価値を生むものは、そこではない部分にあるはずです。躊躇せずにいろいろな経験をたくさんして、問いを立てていく。一人一人がそうした力をつけていくことが、世代を超えて伝わるエネルギーとなり、世の中をもっと良くしていくことに繋がると思っています。
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