電子処方箋とは? 仕組み・メリット・システム導入手順を徹底解説!

近年、医療現場のDX化が急速に進んでいます。
2021年のオンライン資格確認の運用開始をきっかけに、病院や薬局でのデジタル化が一気に広がりました。
このDX化の流れで登場したのが「電子処方箋」です。
処方箋を電子化することで、処方・調剤といった日々の業務を効率化できるほか、書類の保管や紛失リスクといった紙媒体特有の問題を解消することができます。
とはいえ、電子処方箋と聞くと「結局どんな仕組みなのか?」「何を準備すればいいのか?」といった疑問を抱く方も多いと思います。
本記事では、電子処方箋の仕組みや導入メリット、必要な設備、導入手順をわかりやすく整理して解説していきます。
そもそも電子処方箋って?

電子処方箋とは、患者さんに処方する薬の情報をクラウド上で記録・管理する仕組みのことです。
薬の情報は国と公的機関が運営する「電子処方箋管理サービス」を通じて管理・共有されるようになります。
電子処方箋を導入することで、日常業務の効率化、保管や紛失リスクの解消、病院・薬局間のスムーズな情報共有が可能になります。
また、患者さんの服薬履歴をリアルタイムで確認できるため、残薬や服薬状況の確認などにも役立ちます。
電子処方箋は2023年の1月から運用が始められており、国が進める「医療DX」の重要施策に位置付けられています。
| 比較項目 | 電子処方箋対応 | 電子処方箋未対応 |
|---|---|---|
| 発行・調剤できる処方箋 | 電子処方箋/紙処方箋 | 紙処方箋 |
| 確認できる薬剤情報 | 直近~過去5年分 | 約1ヶ月前~過去5年分 |
| 重複投薬・併用禁忌の確認 | (他の医療機関・薬局の薬剤情報が確認可能) | (自院・自局での薬剤情報のみ確認可能) |
| 薬局に提出するもの | マイナンバーカード/引換番号/紙処方箋 (併用可) | 紙処方箋 |
| 来局前調剤 | (引換番号を共有することで可能) | |
| 調剤登録業務効率化 |
電子処方箋の仕組み

電子処方箋では、患者さんの情報が電子処方箋管理サービスで保存されるようになります。
上の図は、厚生労働省が公表している電子処方箋の医療機関・薬局・患者間のやり取りの仕組みです。
ここでは、この図に沿って電子処方箋の仕組みをわかりやすく解説していきます。
電子処方箋は、患者本人の確認と同意から始まります。
医療機関の受付で、マイナンバーカードによる本人確認が行われ、診療情報・薬剤情報・特定健診等情報の提供についての同意が求められます。
この「同意」は、処方情報や薬剤情報を電子処方箋管理サービス上で取り扱うための条件となります。
そのため、同意が得られない場合は従来どおり紙の処方箋による運用になります。
医師は電子処方箋管理サービスを通じて以下の情報を確認することができます。
- 過去の薬剤情報
- 服用中の薬剤
これらを確認することで、重複投薬や併用禁忌を防ぐことができます。
患者は、登録された処方情報をマイナポータルやお薬手帳アプリで確認することができます。
紙の処方箋を持ち歩く必要が無くなり、後から処方内容を確認することができます。
薬局でも、本人確認と同意が必要になります。
- マイナンバーカード
- 引換番号
どちらかをもとに電子処方箋管理サービスから処方箋を取得します。
また、患者が引換番号と被保険者情報を事前に薬局に伝えておくことで、来局前に調剤を開始し、待ち時間に短縮につながる場合があります。
調剤結果は、電子処方箋管理サービスへ登録されることになります。
管理サービスへの登録が行われることで、医療機関、薬局、患者は処方・調剤状況を確認できるようになります。
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電子処方箋のメリット(医療機関・薬局・患者)

電子処方箋は、単に処方箋を電子化するのではなく、病院・薬局・患者の間で処方・調剤情報を共有しやすくする基盤です。
ここでは、電子処方箋を導入するメリットをそれぞれの視点から解説していきます。
医療機関のメリット(病院・診療所・歯科診療所 など)
処方業務・事務作業の効率化
電子処方箋を導入することで、紙の処方箋特有の課題が解消されます。
- 処方箋の印刷・保管が不要になる
- 記載漏れ・判読ミス・紛失リスクの解消
処方箋が電子化されることで、紙運用に伴う負担やトラブルを減らすことができます。
薬剤情報の確認と共有
電子処方箋の普及が進むことで、医療機関と薬局の間で情報共有がしやすくなります。
過去・現在の処方状況と調剤状況を参照することで、薬剤情報を効率的に確認することができます。
これにより、重複投薬や併用禁忌の防止、診療時間の短縮につながります。
薬局のメリット
調剤業務の効率化
電子処方箋を導入することで、処方箋の転記や入力作業の負担軽減が期待できます。
また、紙の処方箋や調剤済み処方箋の保管も不要になるため、保管スペースの削減や業務効率化につながります。
薬剤情報の確認と共有
電子処方箋管理サービスを通じてリアルタイムで処方・調剤状況を確認することができます。
これにより、他の医療機関や薬局で処方された薬剤情報を容易に確認できるようになり、重複投薬や併用禁忌を防ぐことができます。
患者さんのメリット
紙の処方箋を持ち歩く必要がなくなる
電子処方箋では、処方情報が電子的に記録されるため、紙の処方箋を持ち歩く必要がなくなります。
そのため、処方箋を忘れてしまったり、紛失して再発行が必要になるなど、紙特有のトラブルを避けることができます。
処方内容を後から確認できる
電子処方箋では、「いつ・どの医療機関で・どの薬が処方されたか」をいつでも確認することができます。
普段とは異なる医療機関を受診した場合でも、処方・調剤情報を確認しながら説明できるため、薬剤情報を的確に伝えることができます。
電子処方箋システムの導入手順

ここまで、電子処方箋の仕組みやメリットをご紹介してきました。
しかし、「導入するには何から始めればよいのか」と感じる方も多いのではないでしょうか。
ここでは、電子処方箋の導入手順をステップごとに分かりやすく解説していきます。
まずはシステム開発業者に連絡し、電子処方箋システムに関する見積もりを依頼します。
あわせて、電子署名に必要となるHPKIカードの発行申請を行いましょう。
HPKIカードの発行には1~3か月程度かかるので、早めの申請を心がけましょう。
なお、HPKIカードが届く前でも、電子処方箋システムの導入を進めることができるため、発行前からシステム事業者と運用開始時期や進め方を調整しておくことが重要です。
HPKIカードとは?
医療・福祉分野の国家資格や管理者資格を電子的に証明するための電子証明書(ICカード)です。
電子処方箋では、処方や調剤などの法的行為を行う際に、医師・歯科医師・薬剤師の資格を電子的に証明する「電子署名」にHPKIカードが必要になります。
システム事業者から提供された電子処方箋対応システムを導入し、運用に向けた準備を進めます。
運用開始日を決定したら、ポータルサイトで運用開始日の登録を行います。
また、運用にあたっては、以下の点に注意して準備を進める必要があります。
- パソコンの設定および動作確認
- 業務フローの変更
- 運用マニュアルの作成
- 操作説明資料の作成
電子処方箋の導入には、補助金制度を活用することができます。
補助金の期限が見直され、現在では2026年9月まで延長されています。
補助金の申請は、システム事業者への支払いが完了した後に行います。
申請にあたっては、システム事業者から領収書および領収書内訳書を受領し、ポータルサイトから申請手続きを行います。
補助金を活用することで、電子処方箋導入の負担を大きく軽減できるため、活用を検討しましょう。
まとめ
電子処方箋は、処方・調剤情報を電子的に管理・共有する仕組みです。
導入することで、医療機関や薬局での業務効率化に加え、重複投薬や併用禁忌の確認を行いやすくなります。
導入にあたっては、一定の準備や費用が必要となりますが、補助金制度の活用やシステム事業者との連携により、無理のない形で導入を進めることが可能です。
今回ご紹介した内容が、皆様のWeb活用や発信のヒントになれば嬉しいです。
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