DXはなぜ失敗するのか?|失敗事例から学ぶ成功の秘訣

DX(デジタルトランスフォーメーション)はデジタル技術を活用し、ビジネスモデルを変革させることで、競争力を維持・向上させる取り組みです。
近年よく耳にする言葉ですが、実際にDXを進めても、思うような成果が出なかったり、途中で頓挫してしまう企業も少なくありません。
本記事では、DXが失敗する主な原因や対策、実際の失敗事例についてわかりやすく解説します。
DXとは?そもそも何のこと?
DX(デジタルトランスフォーメーション)とは、デジタル技術を活用して、業務やサービス、ビジネスの仕組みそのものを変革し、競争力の維持・向上を目指す取り組みです。
似た言葉に「デジタル化」がありますが、これは従来の業務を電子化し、効率化することを指します。
例えばスーパーで、手書きの在庫表をシステムで管理し、業務の効率化を図ることはデジタル化です。
一方で、在庫データや売上情報を活用して仕入れ計画を最適化したり、商品をオンラインストアでも販売するなど、業務や販売の仕組みそのものをデジタル技術で変えることはDXにあたります。
まとめると、
「これまでの業務を電子化して効率化すること」=「デジタル化」
「デジタルを活用してビジネスの仕組みそのものを変えること」=「DX」
ただし、この2つに明確な区別はなく、デジタル化はDXの一部であり、DXはデジタル化の先にある大きな変革の概念として捉えるとわかりやすいでしょう。
DXは失敗する?どれくらいの割合?

上の図は、経済産業省のIT政策実施機関である独立行政法人情報処理推進機構(IPA)が行った、DXの成果に関する調査結果です。
2024年の日本では、「成果が出ていない」と回答した企業が16.0%、「わからない」と回答した企業が26.2%にのぼり、DXによる成果を実感できていない企業や、そもそも把握できていない企業が少なくないことがわかります。
また、IPAは同調査において、従業員数別のDX成果についても分析しています。
従業員数1,000人以上の企業では「成果が出ている」と回答した割合が比較的高い一方、従業員数1000人以下の企業では「成果が出ていない」または「わからない」と回答した割合が多くなっています。
DXを進める企業、特に中小企業においては、成果を適切に把握し、改善につなげていく視点が重要です。
DXは何故失敗する?|原因4選

目的を見失う
DXを推進するうえで陥りがちな失敗のひとつが、目的を見失ってしまうことです。
本来、DXはデジタル技術を活用して業務やビジネスの仕組みを変革し、企業の競争力向上につなげるための取り組みです。
しかし、デジタル技術を導入すること自体が目的になってしまったり、社外へのアピールや社内向けのパフォーマンスとしてDXを進めてしまったりすると、大きな失敗を招くおそれがあります。
経営層の理解不足と共有不足
DXは、デジタル技術を活用してビジネスを変革するため、経営層が「何のためにDXを行うのか」「なぜ自社にDXが必要なのか」を正しく理解していなければ、十分な成果を得ることはできません。
ビジネスの変革には全社的な取り組みが不可欠であり、社員や協力会社に目的や方針をしっかり共有することが重要です。
周知が不十分だったり、協力が得られない場合には、取り組みに時間がかかるだけでなく、成果につながらない形だけのDXに終わってしまうおそれがあります。
現場社員への聞き取り不足
DXを進めるうえでは経営層の理解が欠かせませんが、経営判断だけで一方的に進めるDXには注意が必要です。
DXは現場の業務に大きな影響を与えるため、実際にシステムを利用する現場社員の声を十分に聞くことが最も重要です。
現場特有の課題を把握しないまま導入を進めると、本当に必要な機能が不足したり、逆に現場で求められていない仕組みにコストをかけてしまうおそれがあります。
その結果が、業務がかえって非効率になったり、導入したシステムが十分に活用されない事例です。
IT人材不足と安易な企業選定
DXを推進するには、デジタル技術を理解した人材が必要になります。
しかし、ITの知識を持つ人材が社内に十分いるとは限らず、外部のIT企業と連携しながら進めるケースが少なくありません。
ただし、IT企業はITの専門家ではあっても、自社の業務内容や経営課題を深く理解しているとは限りません。
そのため、DXを依頼する企業を安易に選んでしまうと、自社に合わないシステムや施策が導入され、成果につながらないおそれがあります。
また、慢性的なIT人材不足はコスト増加の原因にもなります。
社内に人材がいないからといって、開発・改修・運用のすべてを外部に任せてしまうと、高額なコンサルティング費用や運用費が発生し、DXによって得られる利益を打ち消してしまうこともあります。
※ このブログは創業22年のWeb企業「セルバ」が運営しています。
興味があれば[会社紹介はこちら]もご覧ください。
DXを成功させるためには|対策4選

具体的なDX戦略の策定
IT機器やシステムの導入をいきなり始めるのではなく、まずは具体的なDX戦略を策定しましょう。
はじめに、現状の課題を洗い出すため、現場社員への聞き取りや業務フローの整理を行い、ボトルネック(非効率なプロセス)を特定しましょう。
あわせて、社員や協力会社に対してDXの目的や方針を共有し、協力を得られる体制を整えることも大切です。
特定したボトルネックに対して、どのようなシステムや施策が適しているのかを検討し、実施時期、予算計画、担当者の役割まで具体的に落とし込んでいきます。
経営層、現場、各部署のあいだで円滑なコミュニケーションを図りながらDX戦略を明確にすることが、成功への近道です。
長期的な改善(PDCAサイクル)
DXは必ず成功するものではなく、進める過程でさまざまな課題が生じることもあり、開発が予定どおりに進まなかったり、システムが現場に浸透しないケースも少なくありません。
そのため、DXでは機械やシステムを導入することをゴールにするのではなく、業務改善や利益創出を目標として、中長期的に取り組むことが重要です。
導入後も、課題を具体的に洗い出し、必要に応じてシステム改修や運用の見直しを行い、改善を積み重ねていくことが求められます。
PDCAサイクルを回しながら地道に改善を続けることで、DXの効果を着実に高めていくことができるでしょう。
PDCAサイクルとは?
Plan(計画)Do(実行)Check(評価)Action(改善)を繰り返し行い、プロジェクトや業務を継続的に改善する手法のこと
適切な企業選定と人材育成
社内にIT人材が不足している場合、外部企業に依頼することになりますが、その依頼先を慎重に選定することが重要です。
大手企業は信頼性が高い一方、費用が高額になりやすいため、中小企業やベンチャー企業も含めて幅広く比較検討しましょう。
企業を選ぶ際には、RFI(情報提供依頼書)を活用するのも有効です。
RFIとは、IT企業に対して技術力や提供可能な製品・サービス、支援体制などに関する情報提供を依頼する文書のことで、依頼先の情報を集めることで、自社に合った企業を見極めやすくなります。
また、DXにかかる費用は導入時の開発費だけでなく、導入後の保守運用費や改修費なども発生するため、長期的な視点でコストを見積もることが大切です。
外部の力を活用しながら自社に知見を蓄積していくことで、継続的な改善や内製化によるコスト低下にもつながります。
DXに最適な企業選定を代行するサービスを行っています。詳しくはこちら▼

補助金の活用
DXは、企業の生産性や競争力の向上につながる一方、導入や運用には多くの費用がかかります。
そこで活用したいのが、種補助金制度です。
DXに関する補助金はいくつかあり、機械購入費やシステム構築費、専門家への依頼費用、外注費など、様々な関連費用に充てることができます。
代表的な補助金
・デジタル化・AI導入補助金(旧:IT導入補助金)
・新事業進出補助金、ものづくり補助金
・小規模事業者持続化補助金
・中小企業省力化投資補助金 など
ただし、こうした補助金は申請すれば必ず受け取れるものではなく、申請内容が審査され、採択されてはじめて受給できます。
申請にあたっては、自社に合った補助金の選定をはじめ、事業計画書の作成や必要書類の提出などを行う必要があり、採択後も事業の実施状況や経過について報告を求められます。
補助金を活用してDXを進める際は、制度の内容をよく確認し、計画的に準備を進めることが重要です。
DX・システム開発に使える補助金申請サポートを行っています。詳しくはこちら▼

DX失敗事例|原因と対策

某食品メーカーの基幹システム刷新
このプロジェクトは、これまで生産・営業・会計など、部門ごとに分かれていた旧システムを、ERP(統合型業務システム)へ移行する大規模な取り組みでした。
しかし、システム移行の際に障害が発生し、一部の商品が半年にわたって出荷停止となる事態に至りました。
原因と対策
システム障害そのものを完全に防ぐことできません。
重要なのは、障害が発生した場合に備えたリスク対策を十分に講じることで、このプロジェクトではその点が不十分だった可能性があります。
また、大規模プロジェクトでは、影響範囲を抑えるために段階的な導入が一般的です。
もともと一年以上プロジェクトが延期していたこともあり、こうした措置がなされず長期的なシステム障害につながったと言われています。
DXを進めるには、適切なスケジュール管理や導入後の運用体制の整備、障害対応体制の構築も重要です。
レンタカー企業とコンサルティング会社のトラブル
レンタカー事業を営むある企業は、ウェブサイトやモバイルアプリの開発、子会社への展開、レスポンシブ対応(複数デバイスへの対応)を含むプロジェクトを、とあるコンサルティング会社に依頼しました。
しかし、完成したシステムは期待していた水準に達しておらず、契約内容に違反しているとして、レンタカー会社はコンサルティング会社を提訴する事態となりました。
原因と対策
このトラブルが訴訟に発展した背景には、契約段階でのコミュニケーション不足があったと考えられます。
両者のあいだで認識のずれが生じており、導入するシステムや作業範囲が明確化されないままプロジェクトが進んだことが、問題を大きくした要因のひとつです。
DXは、進行中にさまざまなトラブルや想定外の事態が発生することも少なくありません。
その際、契約時点で要件や作業範囲、責任の所在が曖昧なままだと 深刻なトラブルにつながるおそれがあります。
外部委託でDXを進める場合は、現状分析や導入システムの検討だけでなく、契約内容まで丁寧に詰めておくことが重要です。
システム開発に関する訴訟については、以下の記事で詳しく解説しています。
DXやデジタル化を検討している方にとって参考になる内容ですので、ぜひあわせてご覧ください。

まとめ
DXは、デジタル技術を活用して業務やビジネスの仕組みを変革し、企業の競争力を高める取り組みです。
ただし、DXは必ず成功するものではありません。
デジタル技術の導入そのものが目的になって本来の目的を見失ってしまったり、経営層の理解不足や現場社員への聞き取り不足によって、意味のないシステム導入に終わってしまうこともあります。
DXを成功させるには、具体的なDX戦略を策定し、長期的な視点で改善を続けていくことが重要です。
また、外部企業を活用するだけでなく、社内でDXを支えられるIT人材を育成していくことも欠かせません。
補助金は上手に活用すれば、事業の成長スピードを大きく高めることができます。
今回の記事が制度理解の一助となれば幸いです。
ほかにも関連するテーマの記事を公開していますので、ぜひご覧ください。
