年末調整の電子化、システムはいらない?|必要な会社と不要な会社

義務化が進む年末調整のデジタル化。
しかし、「うちは小規模だからいらない」「導入が面倒だし、費用もかけたくない」と感じたことが一度はあるのではないでしょうか。
実際、年末調整に関する制度改正は多く、内容を追いかけるだけでも大変です。
しかし、2027年(令和9年)から年末調整電子化の義務化基準が変わることをご存じでしょうか。
これまで対象外だった中小企業でも、電子化対応が必要になるケースが増えています。
本記事では、年末調整電子化の基本から、新しい義務化基準、電子化が必要なケースと不要なケース、電子化の導入手順までわかりやすく解説していきます。
そもそも年末調整の電子化とは?何ができるの?

年末調整の電子化を理解する前に、「提出の電子化」と「社内手続きの電子化」の違いを把握しておく必要があります。
①役所への提出書類の電子化(法廷調書の提出)
年末調整で電子化が義務付けられているのは、税務署に提出する法定調書の提出手段についてです。
この法定調書とは、所得税法や相続税法などにより、提出が求められている資料のことで、2026年1月時点で計63種類存在します。
代表的なものには以下のものがあります。
- 給与所得の源泉徴収票
- 退職所得の源泉徴収票
- 報酬、料金、契約金及び賞金の支払調書
- 不動産の使用料の支払調書
- 不動産等の譲受けの対価の支払調書
- 不動産等の売買又は貸付けのあっせん手数料の支払調書 など
義務化の対象になる場合には、これらの資料をe-Tax又はCD・DVDなどの光ディスク等による提出が必要になります。
②社内手続きの電子化(ペーパーレス化)
年末調整電子化の義務で多くの方が誤解しやすいのが、社内手続きの電子化です。
こちらは、従業員が会社に提出する年末調整の申告書を、紙ではなくデジタル上で入力・提出する社内手続きの電子化です。
この社内手続きの電子化については義務化されていません。
しかし、法定調書の電子提出が必要な場合には、社内手続きを電子化しておくことで、提出用データの作成が容易になります。
紙で社内手続きを行う場合、紙の情報をデジタル上に後から手入力・転記する必要があり、法定調書の電子提出が必要な企業では、社内手続きもあわせて電子化した方が効率的です。
電子化の義務基準

2027年から、法定調書の電子提出に関する義務基準が変更されます。
これまで法定調書の提出枚数が「100枚以上」だった基準が、「30枚以上」へ引き下げられます。
この基準で注意したいのは「いつ提出するか」と「どの年を参照するか」です。
いつの年末調整から「30枚基準」が適応されるのか
2026年度分の年末調整は、2027年1月1日~1月31日の期間に提出します。
そのため、提出年が2027年になるため、2026年度分の年末調整から「30枚基準」が適応されるのです。
「2026年度分だから基準は100枚」という考えは誤りで、提出年が2027年であるため新基準が適応される点に注意が必要です。
義務を判断するために参照される年
電子化が義務になるかどうかは、「提出年の前々年」に提出した法定調書の枚数で判断されます。
たとえば、2027年に提出する年末調整(2026年度分)については、2025年に提出した法定調書(2024年度分の年末調整)の枚数が参照されます。
年末調整は、対象年と提出年がずれるため、確認する時期を間違えないよう注意が必要です。
法定調書って何?どれが30枚超えたらいけない?
法定調書とは、税務署に提出することを義務付けられている書類の総称で、全部で63種類あります。
法定調書の電子提出義務基準枚数は、合計枚数ではなく、種類ごとに判断されます。

この場合、合計50枚の提出ですが、どちらも30枚未満であるため、電子提出の義務はありません。

この場合、合計40枚の提出で、例①よりも全体の提出枚数は減っていますが、「給与所得の源泉徴収票」が30枚に達しているため、この書類の電子提出が必要になります。
一方で、「報酬、料金、契約金及び賞金の支払調書」は10枚であるため、こちらの書類に関しては電子提出の義務はありません。
このように、全体の提出枚数ではなく、種類ごとの提出枚数によってそれぞれの義務が判断されます。
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どの法定調書が増えやすい?

法定調書の枚数が引き下げられたことにより、多くの企業で電子提出義務が発生しています。
ここでは、枚数が増えやすい代表的な法定調書と、どんな企業で数が増えやすいのかを分かりやすく解説します。
給与所得の源泉徴収票
源泉徴収票は、原則として全ての受給者ごとに1枚作成し、本人へ交付しますが、税務署に提出するのは一部の対象者分のみです。
以下が、主な税務署への提出対象になる受給者です。
- 年間給与等が150万円以上の役員
- 年間給与等が250万円以上の弁護士、司法書士、税理士等
- 上記2つ以外で年間給与等が500万円を超えるもの など
つまり、従業員が多くてもこれらの対象者が少なく、提出書類が29枚以下であれば、源泉徴収票についての電子提出義務は発生しません。
一方で、従業員数が少なくても、役員や年収500万円超の従業員が多く、提出書類が30枚以上であれば、税務署への電子提出の義務が発生します。
なお、税務署に提出しない年収500万円以下の従業員であっても、市区町村に提出する「給与支払報告書」が必要になるため、「500万円以下は提出しなくてもいい」というわけではありません。
報酬、料金、契約金及び賞金の支払調書
この支払調書をざっくり言うと 「個人への外注費」で発生しやすい法定調書です。
対象になりやすいのは、次のような個人事業主(フリーランス)への支払いです。
- ライター、デザイナー、カメラマン
- フリーランスエンジニア
- 顧問税理士、弁護士 など
この支払調書は、年間5万円以上という低い金額から提出対象になるため、少額の契約でも外注先が多い企業では枚数が増え、電子提出の義務が発生しやすくなります。
法人への外注費は、相手先が決算で精算するのが一般的で、源泉徴収が不要なケースが多いです。
ただし、内容によっては例外もあるため注意が必要です。
不動産の使用料等の支払調書
この支払調書は、個人に支払っている不動産費用で数が増えやすくなります。
- 個人大家、地主に支払っている家賃、地代、礼金等
- 返還されない敷金
- 法人への権利金、更新料 など
この支払調書は、不動産の使用料等を支払った場合に提出が必要となり、家賃だけでなく、更新料や礼金なども提出対象に含まれます。
一方、家賃滞納や修繕費などに充当される敷金については、返還されないことが確定した時点で、返還されない金額分の支払調書を作成します。
支払先が法人の場合は、権利金・礼金・更新料など「賃借料以外」が提出対象となります。
法人への賃借料(家賃)の支払いは原則として提出不要なため、法人に対して賃借料のみを支払っている場合は、支払調書の提出は不要です。
年末調整の電子化手順

電子化を検討する前に、まずは前年の年末調整の控えを確認し、法定調書の種類ごとの提出枚数を把握しましょう。
義務化の対象でなければ、紙での提出を続けても問題ありません。
一方で、対象になる場合や電子化を進めたい場合は、以下で紹介する方法で準備を進めるのがおすすめです。
e-Tax
e-Taxは、国税庁が運営する国税手続きのオンラインサービスです。
ブラウザ上で利用する「e-Taxソフト(WEB版)」と、ダウンロードして利用する「e-Taxソフト」があります。
法定調書の電子申告はいずれもパソコンからの利用が必要であり、スマホ・タブのレットから申告はできません。
e-Taxソフト(WEB版)
WEB版はブラウザで利用できるため、インストール不要で始めやすいのがメリットです。
しかし、WEB版で作成・提出できる法定調書には限りがあり、次の9種類のみです。
- 給与所得の源泉徴収票
- 退職所得の源泉徴収票・特別徴収票
- 報酬、料金、契約金及び賞金の支払調書
- 報酬、料金、契約金及び賞金の支払調書(社会保険診療報酬基金用)
- 不動産の使用料等の支払調書
- 不動産等の譲受けの対価の支払調書
- 不動産等の売買又は貸付けのあっせん手数料の支払調書
- 給与所得の源泉徴収票等の法定調書合計表
- 支払調書等合計表付表(e-Tax提出分)
法定調書は全部で63種類あるため、WEB版で提出できるものは一部に限られます。
しかし、年末調整でよく出る主要書類は含まれているため、電子化が必要な書類だけWEB版で対応する運用もおすすめです。
e-Taxソフト(ダウンロード版)
e-Taxソフトでは、パソコンにダウンロードする必要がありますが、すべての法定調書に対応しているため、本格的な運用を検討する企業や提出書類が多い企業におすすめです。
外部サービスの利用(年末調整ソフト)
e-Taxで法定調書を提出する場合、「マネーフォワード」「freee」「SmartHR」などの外部サービスを利用する方法もあります。
これらのサービスでは、e-Tax向けのデータや帳票の作成を支援し、製品によってはe-Taxを介さずサービス上から電子申告まで行えるものもあります。
外部サービスを利用することで、提出用データの収集・成形が容易になるため、電子申告を検討している企業では、一度確認しておきましょう。
光ディスク(CD・DVD)
光ディスク(CD・DVD)に法定調書のデータを記録し、税務署へ持参または郵送して提出する方法です。
非常に多くの調書を扱う企業では、e-Taxでの送信よりも光ディスク提出の方が運用しやすい場合もあるため、この方法を選ぶのも一つの選択肢です。
認定クラウドサービス
認定クラウドサービスは、国税庁が認定している民間サービスで、次の2サービスが提供されています。
- 株式会社野村総合研究所「e-私書箱法定調書提出クラウドサービス」
- 株式会社Workthy「法定調書クラウド」
認定クラウドは、法定調書データをクラウド上に記録し、税務署が閲覧できるようにアクセス権を付与して提出する方式です。
提出データや履歴を一元管理しやすく、標準化した運用が可能です。
件数が多い企業や拠点が多い企業では、法定調書提出にかかる工数を削減できる可能性があります。
まとめ
年末調整の電子化は国も推進しており、2026年度の年末調整(2027年提出分)から基準が厳格化され、多くの企業で年末調整の電子提出が求められます。
電子提出が必要かどうかは、法定調書の種類ごとの枚数で判断されます。
まずは、2024年度の年末調整(2025年提出分)の控えを確認し、種類ごとの提出枚数を把握しましょう。
義務化の対象でなければ、紙での提出を続けても問題ありません。
一方で、対象になりそうな場合や電子化を進めたい場合は、e-Taxや光ディスク、外部サービス、認定クラウドサービスの利用を検討しましょう。
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